くろいゆきの割とどーでもいいエッセイ

黒幸

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59 ムロツヨシ劇場が堪能できる時代劇『身代わり忠臣蔵』

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 今回、御紹介するのは前回に引き続き、またも時代劇の映画『身代わり忠臣蔵』です。
 タイトルからも分かるように冬になると恒例で放送されていた時代劇『忠臣蔵』がモチーフになっています。
 しかし、主人公は討ち入りする側の赤穂の人間ではなく、討ち入りされる側の吉良上野介です。
 それも吉良上野介本人ではなく、タイトル通り、影武者として吉良上野介を演じる男・考証(読みはたかあき。驚くべきことに実在の人物で吉良上野介の末弟で吉良上野介の父・義冬の六何で出家し、僧籍に入った人物。ただ、実在する考証は山城=京都の寺に弟子入りしているので影武者のくだりはフィクション)!
 そんな考証を演じるのはムロツヨシさん。
 安心安定の演技力でコミカルからシリアスまで何でもこなす!
 ただし、ややキャラが濃い人物を演じることが多く、脇役なのに主役を食うくらい目立つこと多いですよね。

 プロローグでは考証が乞食同然どころか、ほぼ乞食として、ようやく命を繋ぐシーンが描かれています。
 劇中では吉良上野介が会話の中でさらっと流していますが、寺に出されたのにろくすっぽ修行もしないで出奔し、働きもせず乞食になったらしい……という設定です。
 確かに西欧の貴族と同じく、嫡男以外はスペアなので他家へ養子に出されたり、僧籍に入るのが当時、多かったようです。
 吉良上野介も兄弟が多く、弟は別の家を立て血を繋いでいますし、六男の考証も僧籍に入ってました。
 武家から僧籍に入り、名僧として名を残す人物もいます。
 このプロローグで重要なのは事故で川に飛び込む振りをしていたら、本当に落ちてしまった考証が一人の侍に命を助けられたことです。
 助けた侍を演じるのは永山瑛太さん。
 只者であるはずがない。
 考証に与えたのが塩飴(赤穂は塩で有名!)なのが大きな伏線となっており、この縁が物語を大きく動かすことになります。

 ただ、ムロツヨシさんだけに! なのか、だから! なのか。
 やや飛ばしすぎている感じでおふざけのコミカルが過ぎる感じがします。
 え? 監督さんは『新解釈・三国志』の福田監督かな?
 確認したら、全然違う方でした(´・ω・`)
 ギャグのノリが福田監督のお好きな演出に似ているだけのようです。

 日々の暮らしに困った考証は最後のつてとして、吉良家を継いだ長兄を訪ね、物語が動き始めます。
 ここからは『忠臣蔵』に割と忠実な流れです。
 吉良上野介はお金に汚く、冷徹で意地悪な性格の人物で『忠臣蔵』の悪役にふさわしいキャラ付けがされています。
 ムロツヨシさんが一人二役で演じているのでコミカルでふざけた言動が多いものの心根が優しい考証とは対照的です。
 転がり込んできた考証に優しく接する女神のような女性がヒロインの桔梗で、演じているのは川口春奈さん。
 女性キャラが他にいないので圧倒的なヒロイン力ですが、考証に好意的ではあっても恋愛感情はないという微妙な立ち位置です。

 吉良上野介が意地悪をして、止められていた浅野内匠頭がやはり堪えられずにプッツンして、松の廊下で切りかかってしまい、浅野家が改易されるのも『忠臣蔵』と同じ。
 もっともこの話、浅野内匠頭が吉良上野介に教えてもらえずという話も実は、内匠頭はお役目が二度目だから、知らないはずはないので意地悪で教えてもらえない云々はおかしいところもあるようです。
 斬りかかった際に「この前の遺恨」と内匠頭が言った遺恨が何なのかも大いなる歴史の謎だとか。

 ともあれ、『忠臣蔵』通りに話が進むのですが、ここからが『身代わり忠臣蔵』の本領発揮。
 何と吉良上野介は松の廊下で負った傷が原因で死んでしまいます。
 重傷だった上野介の身代わりとなって、幕府でにらみを利かせる側用人・柳沢吉保の目をごまかし、吉良家を存続させるのが考証の役目だったのに上野介が死んだことで、考証は予定よりも長く、影武者を務めなければならない羽目に陥りました。
 最初は千両という高額報酬に釣られ、影武者を演じていた考証ですが、生来の優しさもあってか、以前よりも親しみやすく、誰よりも慕われる殿様へと変わっていきます。
 この辺りのコミカルとシリアスの同居する難しい演技もムロツヨシさんは絶妙!

 そんな中、吉原へと遊びに繰り出した考証はそこで偶然知り合った侍が、かつて命を助けてくれた男であり、吉良上野介=自分の首を狙う赤穂浪士をまとめる大石内蔵助だったことを知り……。
 ここから、幕府の思惑といいますか、柳沢吉保の企む陰謀が絡み、赤穂浪士の危機に考証が一世一代の演技を決める討ち入りが決行されるのです。
 柳沢吉保演じる柄本明さんの不気味な底知れなさもあって、『忠臣蔵』とはまた違うリアリティな権謀術数もまた、本作の見どころの一つだと思います。
 また、ノブレスオブリュージュにも似た理想論や吉良家や赤穂浪士を政争の道具としてしか見てない幕閣の動きなど、表向きのコミカルな演出に隠れた影の要素が意外と凝っています。

 ただ、難点があるとすれば、コミカルな演出をしなくてはならないと強いられているのかと疑うほど、妙な場面で入れてくることでしょうか。
 一番、意味が分からなかったのは討ち入り後、吉良上野介の首を掲げ、泉岳寺へと急ぐ途中、吉良家家臣の追撃を受けるのですが……。
 上野介の首をボールのように扱い、突如としてラグビーが始まってしまいます。
 ラグビーぽい所作ではなく、どこからどう見ても完全にラグビーです。
 これはさすがに笑えません(´・ω・`)
 首ですし、いくら悪役とはいえ、扱いが酷すぎます。
 しんみりとした諸行無常を感じさせるオチが良かっただけに残念な点でした。

 考証=吉良上野介を演じたムロツヨシさん、板挟みの辛い状況で立派に浪士をまとめ上げた大石内蔵助を演じる永山瑛太さんの演技が抜群に良かったです。
 それほど尺がなくとも真の悪役振りを見せつけた柳沢吉保役の柄本明さんもさすがの一言。
 その他、脇役でも演技力が光った方々ばかりです。
 赤穂浪士側は残念ながら、目立った人がそれほどいなかったように感じます。
 強いて言うのなら、原惣右衛門役の星田英利さんと堀部安兵衛役の森崎ウィンくらいでしょうか。
 もっとも堀部安兵衛は討ち入りで浪士中、屈指の剣客として、吉良家随一の剣客・清水一学と派手な殺陣を演じ、目立つのですが討ち入り後の追撃ラグビーもどきで追ってきた清水一学に「この死にぞこないが!」と悪役みたいな台詞を吐き、何かコレジャナイ感(´・ω・`)
 本作はどちらかと言えば、吉良家にフューチャーされているからか、吉良家側の人物は目立ってました。
 家老の斎藤宮内を演じた林遣都さんのコミカルとシリアスの入り混じった演技が素晴らしく、光っていました。
 しかし、本作で一番、カッコよく感じたのは清水一学を演じた寛一郎さんです。
 吉良家側で勇戦の末、死亡した者がそれほどいなかったのは有名で赤穂浪士が上手に立ち回ったお陰だと言われています。
 そんな中、二刀流の使い手で華々しく討ち死にし、名前が強そうだからということで『忠臣蔵』で大きく取り上げられ、討ち入りシーンで目立つキャラになったのが清水一学という人物です。
 勘一郎さん演じる清水一学はこれまで以上に目立つ設定がされていて、ニヒルな二枚目でしかも腕の立つ剣客とカッコいい! しかありません。
 討ち入りで堀部安兵衛との死闘の末、腹部を刀で突かれ、死亡した……と思わせて、「あぁ、死んじゃった。いいキャラだったのに」と残念がっていたら、実は生きていました🌿
 清水一学が生存ルートは珍しいパターンではないかと思われます。
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