くろいゆきの割とどーでもいいエッセイ

黒幸

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60 かなりのあらすじ詐欺だけど、悪くない!オムニバス形式のSF映画『アポカリプス 宇宙終焉』

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 今回、御紹介するのはSF映画『アポカリプス 宇宙終焉』です。
 邦題に”宇宙終焉”と紛らわしいことを書いていますが、派手さはあまりないオムニバスドラマ。
 原題は『Episodes from Apocalypse/Tales from Apocalypse』なので終末の物語や黙示録の物語といったところなのに”宇宙終焉”と人目を引くようなパワーワードを付けてしまったようです。

 サブタイトルにある内容とやや異なるあらすじがこちら。
 『最新のAI開発者、スティーヴィン博士はソニアという少女型のAIを創造し、ソニアに四次元で未来を見てくるよう任務を与えた。四次元に送り込まれたソニアは、想像を絶するある事実を知ってしまう。地球は終末を迎え、生き残るために日々戦う孤独な女性。火星への植民地化が進むも、外は危険な環境のため地下で自由なき生活を送る若者。更に、宇宙船では命を救う医療処理のシステム障害が起こるなど宇宙のあらゆる場所で終焉と闘う人々の未来が待っていたのだった。四次元から戻ったソニアが終焉の未来を阻止するために決断したこととは…©2022 Hewes Pictures』
 このあらすじだと少女型アンドロイド・ソニアの物語が主軸にあり、オムニバスがそれにまつわる感じで綴られていくように思うことでしょう。
 全く、違います。
 ソニアのエピソードは最終話なのでそれぞれが独立した話のようにしか見えません。

 とはいえ、本作はいわゆるB級映画でありながら、VFXを始めにセットや小道具に至るまでお金がかかっていると感じられる高いクオリティを誇っています。
 作り込みは丁寧でしっかりと作られている気はします。
 テーマはバラバラで統一性はありませんが(´・ω・`)
 それぞれが独立したエピソードであり、星新一の『ショートショート』や『世にも奇妙な物語』を思わせると考えたら、ありなのもしれません。

 エピソード1は『孤独』。
 ブラックホール接近で全滅した宇宙船から、救命艇で脱出したカヤ・トーレスという女性エンジニアが主人公です。
 本エピソードの特徴はずばり、一人芝居です。
 画面に映るのはカヤと救命艇の船内だけ。
 シンプルイズベスト(´・ω・`)
 彼女が交信する相手・ハンマーとのお喋りが本エピソードのメインコンテンツと言っても過言ではありません。
 ハンマーはどこかの惑星に漂着した遭難者で青年~壮年といった感じの男性です。
 彼との交信以外、カヤはコミュニケーションをとる相手がいないのでどうにか、孤独という敵に負けることなく、生きることに望みを繋げるといったところ。
 二人の会話は微妙に嚙み合っていません。
 それもそのはず、二人がいる宇宙は別次元の宇宙だから!
 ところがある日のこと、そのハンマーに不測の事態が発生します。
 もはや心の友であるハンマーの危機にカヤは己の身の危険も顧みず、救命艇でブラックホールを通り抜け、『ハンマー』がいる惑星へ向かいます。
 それがどんな結果を辿るのか。
 実にSF映画らしいオチが待ち受けていました。
 以前、紹介した『シークレット・レベル』でも出てきた相対性理論です。
 惑星に居て動かないハンマーと宇宙空間を星間飛行しているカヤでは時の流れが違いました。
 カヤがどうにか惑星に辿り着き、ハンマーが待っているだろう場所へ向かうと……。
 そこには人影一つもありません。
 代わりにビデオメッセージが残っていて、「君がこのビデオを見ているということは君は成功したんだ。おめでとう」と語る老人の姿が……。
 老人は年老いたハンマーであり、彼は既に孤独との戦いに疲れ果て、亡くなっていたのです。
 手遅れだったことを悲しみながらもカヤはハンマーと同じように孤独と戦う人の支えになりたいと考え、ハンマーと同じ行動を取るのでした。
 短いですが中々、いいオムニバスドラマだったと思います。

 エピソード2は『ゆりかご』。
 エピソード1とは全く、関係ないお話が始まります。
 重傷を負い、治療中のおっちゃんとその娘らしき少女イードが警告音の鳴り響く、宇宙船内が描かれます。
 一人芝居にちょっとだけ、毛が生えた程度の二人芝居とも言えないドラマです。
 少しだけ、過去の映像で父親が重傷を負ったシーンが映し出され、イードは船内の機器を使い、何とか父親を助けようと動くのですがIDで管理されており、お手上げ状態。
 そんな中、失踪した母親の写真を発見したイードは写真と共に母親のIDを見つけ、父親の治療を開始することができました。
 それと同時に真実を知りました。
 自分達がいるのは宇宙船ではなく、いずれ来る星間飛行の時代に備え、建設された海中の実験施設であることに。
 イードの父親と母親はそこで自給自足生活が送れるかどうかの実験を行っていたのですが……。
 母親は失踪したのではなく、実験を取りやめ、施設から出ようとしていただけという事実に気付き、父親に真実を明かしてくれるように頼むイード。
 しかし、施設はもはや持たない状態に陥っており、「逃げなさい」と脱出を促す父親。
 イードは後ろ髪を引かれつつ、施設を脱出するのでした、という何か、もやっとする終わり方です。
 こういうシチュエーションだと視聴者に誤認させるような演出といい、これまた良きオムニバスドラマでした。

 エピソード3は『狂気』。
 ところ変わって、核の冬でも訪れたのか、不愉快な物質が舞い落ちる地上が舞台です。
 主人公は一人の女性。
 文明社会は崩壊しており、生活環境も破壊されていると思われます。
 何だか、『フォールアウト』に似た世界観らしく、ごつい毒ガスマスクに体を守るパワードスーツに準じるがちがちのアーマーを着込み、町へと繰り出す女性。
 生きていく為に仕方なく、街中を探索する女性ですが常に何かに怯えたような態度を取っています。
 理由は明らかでした。
 彼女を狙う不穏な影がいたのです。
 正体は放射能でまともな生物が生き残れない地上で平然と行動する奇怪で不気味なクリーチャーでした。
 主人公はこんなのでよく今まで生き残れてきたと思える酷い戦いぶりを見せ、何とも呆気なく、やられてしまいます。
 バッドエンドです(´・ω・`)
 正直、本作のオムニバスで一番、良く分からない話だったと思います。
 他のエピソードのように隠されたテーマのようなものも感じられず、戸惑う内容でした。

 エピソード4は『火星の新世界』。
 ここは火星。
 火星では完全に管理された隔絶社会で名前ではなく、管理記号のようなナンバリングされた味気ない名が全ての人間に付けられています。
 主人公の女性もそんな一人。
 生殖活動も上層部によって、完全に管理されており、徹底した社会性が尊ばれ、本能や感情はもっての外とされています。
 しかし、主人公は一人の男性と惹かれ合い……。
 想い人が別の女性とつがわされることで初めて、心が揺らいだ主人公は想い人の男性も同じ思いを抱いていたことを知り、二人でいられるのなら、死をも厭わないと……。
 決して、出てはならない危険な地上へと出ることを決めました。
 テラフォーミングはまだ完了しておらず、人類が地上に出てもすぐに死んでしまう。
 それでも構わない。
 あなたがいるからと二人は意を決して、地上に出るのですが……。
 そこは普通に呼吸もできるし、死ぬこともない地球でした。
 火星ではなかったのです。
 二人が暮らしていたのは地下に作られた施設で地上への出口は単なる一軒家に過ぎません。
 エピソード2と同じく、視聴者に誤認させる手法を使っており、オチまで引っ張るのは見事!
 途中、上官の気になる台詞があり、二人が自主的に取った自由を目指す行動も実は何かの実験の一環だったのではないかと考えたり🤔

 エピソード5は『AI的終末』。
 あらすじに書かれていたアンドロイド少女のソニアが出てくる話です。
 終わりの見えない世界戦争が行われている中、AIの権威であるスティーブン博士がインタビューを受けています。
 人間とAIの違いは何かと問われた博士が答えようとするところでシーンは切り替わります。
 博士の答えはオチに置かれているのである意味、巧みな演出です。
 スティーブン博士はソニアの生みの親であり、死んだ娘(養女にしていたアジア系の少女)が成長した姿に似せてソニアを製作しました。
 博士は娘の生まれ変わりとしてソニアを見ており、単なる機械だとは思っていない様子です。
 しかし、出資している軍部の将軍は博士を急かします。
 ソニアを四次元に送り、我が軍に勝利をもたらせと……。
 その為にソニアは製作されたのですが、前述したように娘と同一視している博士は踏ん切りを付けられません。
 そして、博士は殺されてしまいます。
 将軍は博士の遺志を継ぎ、四次元に向かえば、博士を復活させられるとソニアを騙し、彼女を送り出すのですが……。
 将軍はソニアが無事に戻らなくてもメモリーが手に入れば、いいのだ! がはははは! と悪役ムーブです。
 そうです。
 博士を殺したのは将軍その人!
 一方、四次元に向かったソニアは全てを知ってしまいました。
 おのれ、将軍! 許さん! と怒りに燃えるソニアの前に死んだはずの博士が現れ、「この世は道(たお)」「終わりは始まりである」と急に東洋的哲学を語り出します(´・ω・`)
 博士の話を聞き、復讐ではなく、未来を選んだソニアが取った手段は自らの手を汚すことなく、ざまぁだったような気がしますが。
 ちなみにオチで明かされる人間とAIの違いに対する博士の答えは「人間性」でした。
 ソニアの感情の揺れ幅がもはや人間と同じか、それ以上。
 人間性を失った人間である将軍より、人間性を得たAIのソニアの方が滅びるべき運命にある人類の未来を委ねるに足るということだったのかもしれません。
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