1 / 6
1
しおりを挟む
綺麗に整備された庭園にポツンとあるベンチ。そこには天使もかくやと言わんばかりの美しい少年が眠っていた。ただ、見た目は中性的で、少年と分かったのは身にまとう衣が純白の男性用の制服だったからであるーー
ふぁぁと大きなあくびをしたジュディスは、寝ているベンチから転げ落ちるようにして起き上がった。そろそろ授業が終わる時間帯だからだ。
(さて、お昼お昼)
真っ白な制服であったであろうに、先程転げ落ちたせいで少しばかり汚れている。ジュディスはそんなことも気にせず、ほっそりとした長いバランスの良い足を動かして、スタスタと食堂へ向かった。
「ジュディス! お前、またサボったな!?」
ドスっと背中に衝撃が走り、ジュディスの眉が不機嫌そうに歪む。
「またお前か。邪魔しないでくれる?」
さて、ジュディスを小突いたのは同じ騎士科のランスだ。ジュディスに事あるごとに構ってくるせいで、ジュディスは彼のことが心底苦手だった。
ジュディスはのんびりゆったりマイペースに日々を過ごしたいのだ。ところがコイツときたら、ジュディスを見かけるごとに肘鉄を喰らわせ肘置きのようにジュディスの肩に腕を回す。そして挙げ句の果てには授業に出ろと説教をしだすのだ。
「おいおい、お前俺と話すのマジ塩対応だよな? 俺は心配して言ってやってるんだぜ? 感謝こそすれど、冷たく当たる必要はないじゃねぇの?」
「はっ」
恩着せがましいランスをジュディスは鼻で笑って無視した。
(そんなことよりもだ。お昼が短くなる)
ジュディスの脳内は9割がご飯で占められていて、残りの1割がその他ーーという構造になっているのだ。今は、他のことに時間を割いている暇はない。
「急がないと」
「うぉ!?」
ジュディスはのしかかるランスを払い除け、さっさと食堂の列へと並んだ。
「おーおー、ランス。また振られたなぁ」
興味など1ミリも湧かないと言わんばかりに、清々しいほど無視して去っていくジュディス。その後ろ姿を眺めていたランスの横から騎士科の男子生徒が話しかけてきた。
「はぁ、あいつは本当に座学だけ成績がいいからな。実践やらなくても進学はできるぞ? ランスはなんでそんなにジュディスに拘るんだ?」
「んー、なんとなくだな!」
パッと笑みを浮かべて答えるランスを男子生徒が不思議そうに覗き込む。
「まぁ、ジュディスは美人さんだもんな。お前、そっち系なの?」
「いや? 俺、ノーマル」
不思議そうに自信よく言い切ったランスに、男子生徒は呆れたように呟いた。
「そうかよ、お前の態度はどう見てもアピールするやつだぞ」
キョトリとランスが男子生徒を見る。
「⁇ なんか言ったか?」
「いや? それよりも、俺たちも昼飯食おうぜ」
「あぁ」
無自覚かぁ、男子生徒はそう呟いてあちゃーと額に手を当てた。今もランスはジュディスを目線で追っているからだ。さっきの言葉もほとほと空返事ばかりである。
「ジュディス! もしよかったら俺たちと食べないか?」
そして気づけば、ジュディスへと話しかけに行っているという、救いようもない。
「いや、いい」
「そうか。なぁいつもどこで食べてるんだ?」
「お前には関係ない」
そして、ジュディスには嫌そうに見られながら断られるという。それでもランスは気づかないようだ。
(まるで猫にちょっかいかける犬のようだ)
無理矢理行けばジュディスに逃げられると分かっているのか、ある程度断られたところでランスは潔く勧誘を諦めて帰ってきていた。
「お前、嫌われてるぞ」
「ん? ジュディスはみんなにそんな感じだろ? 俺が嫌われてるわけじゃない」
(いや、嫌われてるな)
あくまで否定する脳筋に、男子生徒は哀れな視線を向けたのだった。
ふぁぁと大きなあくびをしたジュディスは、寝ているベンチから転げ落ちるようにして起き上がった。そろそろ授業が終わる時間帯だからだ。
(さて、お昼お昼)
真っ白な制服であったであろうに、先程転げ落ちたせいで少しばかり汚れている。ジュディスはそんなことも気にせず、ほっそりとした長いバランスの良い足を動かして、スタスタと食堂へ向かった。
「ジュディス! お前、またサボったな!?」
ドスっと背中に衝撃が走り、ジュディスの眉が不機嫌そうに歪む。
「またお前か。邪魔しないでくれる?」
さて、ジュディスを小突いたのは同じ騎士科のランスだ。ジュディスに事あるごとに構ってくるせいで、ジュディスは彼のことが心底苦手だった。
ジュディスはのんびりゆったりマイペースに日々を過ごしたいのだ。ところがコイツときたら、ジュディスを見かけるごとに肘鉄を喰らわせ肘置きのようにジュディスの肩に腕を回す。そして挙げ句の果てには授業に出ろと説教をしだすのだ。
「おいおい、お前俺と話すのマジ塩対応だよな? 俺は心配して言ってやってるんだぜ? 感謝こそすれど、冷たく当たる必要はないじゃねぇの?」
「はっ」
恩着せがましいランスをジュディスは鼻で笑って無視した。
(そんなことよりもだ。お昼が短くなる)
ジュディスの脳内は9割がご飯で占められていて、残りの1割がその他ーーという構造になっているのだ。今は、他のことに時間を割いている暇はない。
「急がないと」
「うぉ!?」
ジュディスはのしかかるランスを払い除け、さっさと食堂の列へと並んだ。
「おーおー、ランス。また振られたなぁ」
興味など1ミリも湧かないと言わんばかりに、清々しいほど無視して去っていくジュディス。その後ろ姿を眺めていたランスの横から騎士科の男子生徒が話しかけてきた。
「はぁ、あいつは本当に座学だけ成績がいいからな。実践やらなくても進学はできるぞ? ランスはなんでそんなにジュディスに拘るんだ?」
「んー、なんとなくだな!」
パッと笑みを浮かべて答えるランスを男子生徒が不思議そうに覗き込む。
「まぁ、ジュディスは美人さんだもんな。お前、そっち系なの?」
「いや? 俺、ノーマル」
不思議そうに自信よく言い切ったランスに、男子生徒は呆れたように呟いた。
「そうかよ、お前の態度はどう見てもアピールするやつだぞ」
キョトリとランスが男子生徒を見る。
「⁇ なんか言ったか?」
「いや? それよりも、俺たちも昼飯食おうぜ」
「あぁ」
無自覚かぁ、男子生徒はそう呟いてあちゃーと額に手を当てた。今もランスはジュディスを目線で追っているからだ。さっきの言葉もほとほと空返事ばかりである。
「ジュディス! もしよかったら俺たちと食べないか?」
そして気づけば、ジュディスへと話しかけに行っているという、救いようもない。
「いや、いい」
「そうか。なぁいつもどこで食べてるんだ?」
「お前には関係ない」
そして、ジュディスには嫌そうに見られながら断られるという。それでもランスは気づかないようだ。
(まるで猫にちょっかいかける犬のようだ)
無理矢理行けばジュディスに逃げられると分かっているのか、ある程度断られたところでランスは潔く勧誘を諦めて帰ってきていた。
「お前、嫌われてるぞ」
「ん? ジュディスはみんなにそんな感じだろ? 俺が嫌われてるわけじゃない」
(いや、嫌われてるな)
あくまで否定する脳筋に、男子生徒は哀れな視線を向けたのだった。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
40
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる