先生!処女(おとめ)かどうか診てください!

ひとまる

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3.約束ですよ?

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抱きしめながら頭の上から降ってくるリカルド先生の優しい声が、いつもとは違って少し緊張していて、それに胸がきゅんと音を立てる。

「医者を諦めようと思っていた時に、小さな体で一生懸命病気と闘っているアーシャと出会って、僕は貴女を守りたいと、そう思いました。」

初めて会った時はまだ医者見習いだったリカルド先生は、そんなふうに思っていてくれたのだと、嬉しい思いが込み上げる。


「どんどん成長していくアーシャを、兄のような気持ちで見守っていたのですが…、大人の女性になっていく貴方にいつしか惹かれて、傍で守りたいだなんて、医者としてあるまじき想いを持ってしまいました。この想いをどうにか封印しようとしていたのですが…」


抱きしめられていた身体が離れ、真っ直ぐな瞳で見つめられる。


「アーシャが僕を好いていてくれるのなら、どうか僕と結婚してくれませんか?」


!!!
あまりの衝撃に意識が飛びそうになってしまった。
え…私、リカルド先生に…求婚されてるの…?


「貴方が誰かに抱かれたり、誰かのものになるなんて…耐え切れないと思いました。どうか一生、傍でアーシャを守らせてください」

「は…はい。よろしくお願いします」

どうにか絞り出せた言葉に、リカルド先生は嬉しそうに微笑んだ。
リカルド先生の顔が近づき、唇が重なった。

まさか…幼い頃から思い続けてきたリカルド先生と、こんなに近い距離になれるなんて…

嬉しくて涙が零れ落ちた。


「好きです。リカルド先生…」

「ああ、本当、夢じゃないよね?」


二人で目を合わせ、ふっと笑ってしまった。
どうやら私達は両想いで、これから…夫婦になるみたいです。


口付けよりも先に…一番大事なところを見られてしまったけれど。
そう思い至ると、顔から火が出そうなくらい恥ずかしかった。


「アーシャに診察を依頼されたときは、本当心臓が止まるかと思いました。」

「!!」


「もう、僕以外にアーシャの身体を見せないようにしてくださいね。約束ですよ?」

「はっ!はい!!」


いつもの穏やかな微笑みが少し怖く思えたのは気のせいだろうか…

もう一度ちゅっと口付けをされ、抱きしめられた。
この温かい胸で抱きしめて貰えるのが私で、本当に良かったと、心から幸せを噛みしめるのだった。



◆◆◆



「あら、アーシャ、この前は大丈夫だった?随分酔いつぶれたみたいだったけど」


お針子仕事に行くと、同僚のサリーが心配そうに聞いてくる。

「どうもこうも、朝方気が付いたら知らない宿で、吃驚したのよ」

「あんた凄い酔いつぶれてたから、心配して皆で宿に運んであげたのよ。感謝しなさいよ」

そうだったのか…
家まで帰れそうもない私を同僚みんなで介抱してくれていたらしい。

「吐くし、暴れるしで大変だったのよ。服も洗濯してあげたんだから、本当感謝しなさいよ」

「げ、そこまで…!本当感謝の気持ちしかないわ!」

だから全裸だったのね。
全ての謎が解けて、ほっと一息つくのであった。

それに…このことが無ければ、リカルド先生とはきっと医者と患者のままだったろうから…感謝してもしきれない。

「そうだ、サリー、私結婚することになったから」

そう照れながら言った私にサリーの吃驚した声が響き渡り、その日は1日中リカルド先生とのことを追及されるはめになったのでした。




「それは大変でしたね」

「そうなんですよ。サリーったらしつこくて。根掘り葉掘り聞こうとするものだから…」

「ふふ、僕も根掘り葉掘り聞きたいな。貴方が僕を好きな理由とか、どこを好いていてくれてるのかとか」

「も!もう。わかりました。一からお話してあげます」


リカルド先生から後ろから抱きしめられて誰も居ない診療所の応接室のソファに座っている。
耳元で話されるとくすぐったくて身をよじってしまう。


「僕も沢山話してあげるね。アーシャの好きな所とか、可愛いところとか」


ひとつひとつ、お互いを知っていければいいなと思う。
これから先、ずっと一緒に過ごすのだから──




後日…私はリカルド先生に溺愛され、リカルド先生の重すぎる愛を知るのだけれども

それはまた、別のお話──…




END



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