エスとオー

ケイ・ナック

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陰と陽

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オレは江洲田の家でコーヒーを飲みながら、音楽を聞いていた。
江洲田は無類むるいの洋楽好きで、特に70年代から80年代の洋楽にくわしかった。

「最近はどんな曲を聴いてるんや?」と、ぬるいインスタントコーヒーをすすりながら、江洲田に聞いてみた。
「今は、KISSやな」と言って、『Unmasked アンマスクド』というアルバムを見せてくれた。

「このアルバムは、昔からのファンにはあまり評判が良くないんやけど、オレは大好きなんや。全曲、最高やで!」と、いつになくテンションの上がった話し方をした。

オレは過激なジャケットを見て、
「ヘビメタは良く分からんわ」と言った。

すると、さらにテンションの上がった声で、
「KISS は、さほどヘビィやないで!」と言い、
「このアルバムは、ポップス好きにも受けると思う。 カセットにダビングしたやつがあるけど、持っていくか?」と言った。

その時、隣の部屋から江洲田の母親の声がした。
「ミノル、御飯やで」

「ああ、分かった」

江州田のテンションが一気に下がったので、オレは家に帰ることにした。


オレはキャンプに行った時のお土産みやげ、イルカのキーホルダーを置いていき、ダビングしたカセットを持ち帰った。

結局、その夏はずっと、そのカセットテープを聴いていた。




数日後、オレは王崎のBMW320に乗っていた。

軽快に運転する王崎を横目で見、自分もこんな車を持ちたいと思った。

こんな車に乗っていたら、もしかしたら、女性に奥手なオレだって、すぐに彼女ができるかもしれない。

やはり、男は格好いい車に乗らなければ、彼女なんかできないんや。
そう、オレは思った。

妬んだ気持ちをさとられずに、
「どうや?この車の調子は」と軽く聞いてみた。

「あぁ、まあまあやな。国産にはないがっちり感があるわ。でももうちょっとトルクが欲しいな。スタイルは申し分ないんやけどな」と王崎は答えた。

「もう、これで彼女とドライブしたんか?」

「うん、まあな。でもアイツは車には無頓着むとんちゃくやからな」

「そっか」

オレは窓を少しだけ下げて、夜風を顔に当てた。

生ぬるい風だけど、真夏とは少し違う風だった。

そろそろ夏は終わりなのかな、とオレは思った。

カーステレオに、江洲田からもらったKISS のカセットテープを入れると、「TOMORROW トゥモロー」が流れてきた。

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