36 / 50
第36話 ローザのスパルタ教育
しおりを挟む
俺――グランとゼオンが洞窟で火蜥蜴と対峙していた頃、屋敷に残ったセシリアは聖女であるローザから聖属性魔法の講習を受けていた。
「――グラン様から大まかな内容は承っていますが、念のためセシリアさんの口から現状を聞いておきたいのですが宜しいでしょうか?」
聖女ローザは私――セシリアに優しい笑みを浮かべながら問いかける。憧れの人を前に私は緊張を隠せずにしどろもどろになりながら聖女ローザからの質問に答えていく。
「は、はい。聖属性魔法に関してはグラン先生から治癒回復魔法を植物に付与して練習する方法を教えていただきました。その後はローザ様にご教授いただくようにと言われています」
「なるほど、良くわかりました。グラン様はセシリアさんに聖属性魔法の基礎を教えてくださったのですね」
目の錯覚だろうか、私の答えに優しく微笑んでいた聖女ローザの表情が一瞬だけ冷たい氷の表情となったように見えた。
「ロ、ローザ様? 私、なにか気に障る言動でもしてしまいましたでしょうか?」
「いえいえ、そんな事はありませんよ。では、早速グラン様が教えたという治癒回復魔法を見せて頂きましょうか」
「は、はい。わかりました」
一瞬だけ見せたあの冷たい表情の意味を考える間もなく声をかけられた私は準備をしてあった萎んだ切り花に魔法を付与した。グランに叩き込まれた魔法、何度も繰り返し練習した魔法なので私は一度の試行で見事に成功させる。それを聖女ローザは真剣な目でじっと見つめながら思考を巡らせているようだった。
「セシリアさんの実力は把握出来ましたので、ここからは私のやり方で教えたいと思います」
聖女ローザはそう告げると小型の生き物が入れられている箱型の檻を持ってきた。
「この生き物は『闇鼠』という小型の魔獣です。特徴としては強い光に弱く、このように光源魔法程度を近づけるだけでごりごりと生命力を奪っていきます」
聖女ローザが光源魔法を発動させて箱檻に近づけると中にいた闇鼠はジジッと悲鳴声を上げて光から逃げようと檻の中で暴れる。しかし、それも十秒ほどで動きが止まり三十秒もすると殆ど動けなくなってしまったのだ。
「このくらいでいいかしらね。あまり弱らせて死んでしまっては元も子もないですからね」
聖女ローザはそう呟くと、今度は闇鼠に治癒回復魔法をかけた。
「治癒回復」
聖女ローザが魔法を発動させるとぐったりしていた闇鼠の身体が緑の光に包まれてやがて光が消えた。次の瞬間、ぐったりしていた闇鼠は起き上がってフンフンと周りの様子を窺うような仕草を見せたのだった。
「今のローテーションは見ましたね? 全てをやるのは大変でしょうから光源魔法は私が担当しますのでセシリアさんは治癒回復魔法を担当してくださいね。ああ、今回は植物と違って失敗したら闇鼠は死んでしまいますから慎重にお願いします。では、始めますね」
聖女ローザは微笑みを見せながらエグイことをさらりと言う。とても救国の聖女が言って良い言葉ではない気もするが、そんなことを指摘する余裕は今の私にはあるはずもない。
「――光源。はい、お願いします」
心の準備も出来ていない私の目の前で聖女ローザは闇鼠の檻に光源魔法を放り込む。当然ながら中の闇鼠はダメージを受けてその場に倒れ込むのが見える。
「ヒ、ヒール」
私は迷っている余裕もなく慌てて闇鼠に治癒回復魔法をかけてやる。私の手が緑に光を帯びてやがてその光は闇鼠を包み込みやがて消えた。その直後、闇鼠は何事もなかったようにムクリと起き上がったのだった。
「よ、良かった。成功したみたいです」
「お見事です。さすが、グラン先生がその才能を見て弟子にされただけありますね。じゃあ、もう一度いきましょうか」
魔法が成功した安心感で大きく息を吐いた私を見て聖女ローザは私を褒め称えながらも再び光源魔法を使用する。
「え、ちょっと待ってくださ……い」
「ほらほら、早くしないと闇鼠が死んでしまうわよ」
「ひ、ひ、ひ、ひーる」
私を急かす聖女ローザに慌てながらも必死に魔法を発動させる。まだ、魔力の総量が多くないので連続発動はかなりの負担がかかるので正直きつい。
「まだまだ。治癒回復魔法はパーティーの生命線なんですから二、三回程度で音を上げていたら駄目ですよ」
聖女ローザの講習と呼ばれる地獄の特訓はその後も私の魔力が底を突いてその場に崩れ落ちるまで繰り返させられた。
「も、もう無理です。魔力がカラカラです」
机にぐったりと突っ伏す形でギブアップ宣言をする私を見て聖女ローザも一息つくように紅茶を口にしていた。
「今日はこのくらいで良いでしょう。明日は今日の二倍を予定していますのでしっかりと回復してきてくださいね」
優雅に紅茶を飲む彼女の声を聞きながら私はある思いが頭を駆け巡っていた。
(――この人。教え方が誰かにそっくりな気がする。魔力が枯渇するまでスパルタで試行回数を限界まで増やすやり方……。これはグラン先生のやり方だ。そういえば彼女は聖女の立場なのにグラン先生のことを『様』呼びしていた。彼女も間違いなくグラン先生に師事していたに違いない)
「これは本気で死ぬかもしれない……」
放心状態で涙する私だったが、これも領地の為だと死ぬ気で熟睡するのだった。
「――グラン様から大まかな内容は承っていますが、念のためセシリアさんの口から現状を聞いておきたいのですが宜しいでしょうか?」
聖女ローザは私――セシリアに優しい笑みを浮かべながら問いかける。憧れの人を前に私は緊張を隠せずにしどろもどろになりながら聖女ローザからの質問に答えていく。
「は、はい。聖属性魔法に関してはグラン先生から治癒回復魔法を植物に付与して練習する方法を教えていただきました。その後はローザ様にご教授いただくようにと言われています」
「なるほど、良くわかりました。グラン様はセシリアさんに聖属性魔法の基礎を教えてくださったのですね」
目の錯覚だろうか、私の答えに優しく微笑んでいた聖女ローザの表情が一瞬だけ冷たい氷の表情となったように見えた。
「ロ、ローザ様? 私、なにか気に障る言動でもしてしまいましたでしょうか?」
「いえいえ、そんな事はありませんよ。では、早速グラン様が教えたという治癒回復魔法を見せて頂きましょうか」
「は、はい。わかりました」
一瞬だけ見せたあの冷たい表情の意味を考える間もなく声をかけられた私は準備をしてあった萎んだ切り花に魔法を付与した。グランに叩き込まれた魔法、何度も繰り返し練習した魔法なので私は一度の試行で見事に成功させる。それを聖女ローザは真剣な目でじっと見つめながら思考を巡らせているようだった。
「セシリアさんの実力は把握出来ましたので、ここからは私のやり方で教えたいと思います」
聖女ローザはそう告げると小型の生き物が入れられている箱型の檻を持ってきた。
「この生き物は『闇鼠』という小型の魔獣です。特徴としては強い光に弱く、このように光源魔法程度を近づけるだけでごりごりと生命力を奪っていきます」
聖女ローザが光源魔法を発動させて箱檻に近づけると中にいた闇鼠はジジッと悲鳴声を上げて光から逃げようと檻の中で暴れる。しかし、それも十秒ほどで動きが止まり三十秒もすると殆ど動けなくなってしまったのだ。
「このくらいでいいかしらね。あまり弱らせて死んでしまっては元も子もないですからね」
聖女ローザはそう呟くと、今度は闇鼠に治癒回復魔法をかけた。
「治癒回復」
聖女ローザが魔法を発動させるとぐったりしていた闇鼠の身体が緑の光に包まれてやがて光が消えた。次の瞬間、ぐったりしていた闇鼠は起き上がってフンフンと周りの様子を窺うような仕草を見せたのだった。
「今のローテーションは見ましたね? 全てをやるのは大変でしょうから光源魔法は私が担当しますのでセシリアさんは治癒回復魔法を担当してくださいね。ああ、今回は植物と違って失敗したら闇鼠は死んでしまいますから慎重にお願いします。では、始めますね」
聖女ローザは微笑みを見せながらエグイことをさらりと言う。とても救国の聖女が言って良い言葉ではない気もするが、そんなことを指摘する余裕は今の私にはあるはずもない。
「――光源。はい、お願いします」
心の準備も出来ていない私の目の前で聖女ローザは闇鼠の檻に光源魔法を放り込む。当然ながら中の闇鼠はダメージを受けてその場に倒れ込むのが見える。
「ヒ、ヒール」
私は迷っている余裕もなく慌てて闇鼠に治癒回復魔法をかけてやる。私の手が緑に光を帯びてやがてその光は闇鼠を包み込みやがて消えた。その直後、闇鼠は何事もなかったようにムクリと起き上がったのだった。
「よ、良かった。成功したみたいです」
「お見事です。さすが、グラン先生がその才能を見て弟子にされただけありますね。じゃあ、もう一度いきましょうか」
魔法が成功した安心感で大きく息を吐いた私を見て聖女ローザは私を褒め称えながらも再び光源魔法を使用する。
「え、ちょっと待ってくださ……い」
「ほらほら、早くしないと闇鼠が死んでしまうわよ」
「ひ、ひ、ひ、ひーる」
私を急かす聖女ローザに慌てながらも必死に魔法を発動させる。まだ、魔力の総量が多くないので連続発動はかなりの負担がかかるので正直きつい。
「まだまだ。治癒回復魔法はパーティーの生命線なんですから二、三回程度で音を上げていたら駄目ですよ」
聖女ローザの講習と呼ばれる地獄の特訓はその後も私の魔力が底を突いてその場に崩れ落ちるまで繰り返させられた。
「も、もう無理です。魔力がカラカラです」
机にぐったりと突っ伏す形でギブアップ宣言をする私を見て聖女ローザも一息つくように紅茶を口にしていた。
「今日はこのくらいで良いでしょう。明日は今日の二倍を予定していますのでしっかりと回復してきてくださいね」
優雅に紅茶を飲む彼女の声を聞きながら私はある思いが頭を駆け巡っていた。
(――この人。教え方が誰かにそっくりな気がする。魔力が枯渇するまでスパルタで試行回数を限界まで増やすやり方……。これはグラン先生のやり方だ。そういえば彼女は聖女の立場なのにグラン先生のことを『様』呼びしていた。彼女も間違いなくグラン先生に師事していたに違いない)
「これは本気で死ぬかもしれない……」
放心状態で涙する私だったが、これも領地の為だと死ぬ気で熟睡するのだった。
31
あなたにおすすめの小説
異世界カードSHOP『リアのカード工房』本日開店です 〜女神に貰ったカード化スキルは皆を笑顔にさせるギフトでした〜
夢幻の翼
ファンタジー
自分のお店を経営したい!
そんな夢を持つアラサー女子・理愛(リア)はアルバイト中に気を失う。次に気がつけばそこでは平謝りする女神の姿。
死亡理由が故意か過失か分からないままに肉体が無い事を理由に異世界転生を薦められたリアは仕方なしに転生を選択する。
だが、その世界では悪事を働かなければ自由に暮らして良い世界。女神に貰ったスキルを駆使して生前の夢だった店舗経営に乗り出したリア。
少々チートなスキルだけれど皆を笑顔にさせる使い方でたちまち町の人気店に。
商業ギルドのマスターに気に入られていろんな依頼も引き受けながら今日も元気にお店を開く。
異世界カードSHOP『リアのカード工房』本日も開店しています。
【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。
どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!
スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!
天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。
平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。
どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる