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第89話【思わぬ事態】
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「これは……初めてみるものね」
カード化を解いたコインを手にマリアーナがそうつぶやく。
「サブギルドマスターのマリアーナさんが知らないってことはニセモノなんじゃないですか?
まさかミナトさん、騙され……」
横でみていたミーナが突然そんなことを言いだす。
「いや、それはないと思うよ。
僕だって一応そのあたりは気になるからコインを鑑定させてもらったからね。
このコインは間違いなく借金の手形がわりをしているのは間違いないんだ。
まあ、その金額まではわからなかったけどね」
僕はミーナの言葉を否定しながらも小金貨5枚という高さには自信がなかった。
「まあ、この村特有の証文みたいなものなのでしょうから私が知らなくても別段おかしなことではないのかもしれませんね。
まあ、サンザンに行けばわかるでしょうからそれよりも明日からの予定を共有しておきましょう」
マリアーナは冷静に話をおさめて明日からの旅について予定を説明していった。
「――では、その予定で行きますので遅れないようにお願いしますね」
マリアーナのその言葉で解散となり僕たちはそれぞれのテントでゆっくりと休んだ。
* * *
「では出発します。
見張りは交代でお願いしますね。
この先からは道幅も一段と狭くなり視界も悪くなりますのでどこから獣がでてくるかわかりませんのでいつでも対処できるように準備をしておいてください」
次の日の朝、朝食をすませた僕たちにマリアーナがそう指示を出してから御者台に乗り門兵にお礼を言って馬車を村から出発させた。
「サンザンまではだいたい2日ほどかかるけれど最近は盗賊がでたとの話も聞かないし比較的スムーズに進むと思うわ。
それにもともとこんなところには盗賊も拠点をかまえたりしないからそれほど警戒は必要ないわ」
「そうなんですか?」
僕の問にサーラが意見を述べる。
「まあ、そうでしょうね。
確かに人通りが少ないから襲うところを目撃される心配は少ないけれど、そもそも通る人や馬車がほとんどいないから盗賊たちも自分たちの食いぶちを確保できないでしょうしね」
サーラもマリアーナの言葉に同意してうなずきながらも周りの警戒は怠る様子はなかった。
――ガタン。
急に馬車が大きく揺れて僕は思わずバランスを崩した。
「まったく……。
たった今しがた大丈夫だと言ったばかりだというのになんてタイミングの悪い……」
サーラがため息をついて向かい側に座るダランに目配せをしてマリアーナに馬車を止めるように声をかける。
「となりの国から流れてきたやつらかしらね。
この国の盗賊ならば相当に頭が悪いとしか言いようかないわね」
サーラの声にこちらもため息をついて馬車を止めたマリアーナが呆れた表情でそう話す。
「それで、どのくらいだ?」
馬車から武器を取り出しながらダランがサーラに聞くと彼女は「……6人ってところね」と答える。
「6人か……。
相手の力量がわからないから油断は出来ないがおとなしく負けてやるわけにはいかないぜ」
基本的にはこちらの戦闘護衛はダランとサーラの2人だがいざとなれば僕が対応する必要があるかもしれないのでダランにつられて僕も馬車から立ち上がろうとしたがそれはサーラに止められた。
「降りるのは相手の状態を確認してからにしてください。
確かに人数的には不利ですけどはじめから全員姿を見せるより油断させてから一網打尽にしたほうが早いですからね」
少し前まで駆け出しの称号を呼ばれていたとは思えない冷静さでサーラはダランと共に馬車から降りて辺りを警戒する。
「ほう。姿を見せる前に気がつくとはそれなりの護衛がついてるようだ。
だが、たった2人では足りなかったようだな」
のそりと大柄な男がふたりの前にあらわれその脇を固めるようにもう2人、そして反対側から3人の男たちが剣を抜き身のまま姿をみせた。
「無駄な抵抗は諦めて積んでいる荷物を全て置いていけ。
今ならそれで命は見逃してやる。
ただし、抵抗するならば皆殺しも持さないぜ」
おそらく盗賊たちのリーダーと思われる大柄の男が口をひらくとそう警告をする。
「そんなこと言ってないでさっさと皆殺しすれば簡単じゃねぇですかい?」
仲間のひとりが考えもなしにニヤニヤしながらそう言って剣で空をなぎる。
「いい考えじゃないですかい?
この規模の商人馬車ならば御者に護衛2人は普通ですし、下手に生きて帰せば面倒なことになりかねないですぜ?」
側にいた他の男もそれに同意してリーダーの判断を待つ。
「話は決まったか?
なら、始めようか!」
その時、ダランが盗賊たちにそう叫びながらリーダーの男に突進をしながら斬りつける。
「ちっ!
やる気マンマンかよ、めんどくせぇ!」
男はそう叫びながら手に持った武器でダランの剣を受けとめる。
「もらったぁ!」
側にいた別の男がそう叫びながらダランの腹に向けて剣をふり抜こうとした瞬間、後方から詠唱が響く。
「アイスニードル!」
「ぐわっ!?」
ダランに向けられた剣を吹き飛ばすかのように剣と体を氷の矢が男にぶち当たる。
氷の矢は男の体に突き刺さることは無かったがそのはずみで数メートルほど飛ばされ「ぐへっ!」とうめき声をあげながら気絶をした。
「ちっ!魔法スキル持ちがいやがるのか。
しかたねぇ、おまえら足を止めろ!」
リーダーの男が指示をとばすと馬車の反対側に陣取っていた男たちが「おう!」と叫んで一斉に斬り込んできた。
「馬車と御者を狙うかよ!
さすが盗賊は容赦ないな!」
受け止められた剣をひいて少し距離をとったダランがそう叫ぶ。
「ふん。お前たちが素直に降伏しないからこうなるのだ!
恨むならば自らの判断を恨め!」
盗賊のリーダーはそう叫ぶとダランを反対側へと向かわせないような動きをみせながら時間を稼ぐ。
「おらっ! 死ねや!」
後方の盗賊たちが殺気を振りまきながら馬と御者へと向かうがマリアーナは御者台から立ち上がりもせずにぼそりとスキルを発動させた。
「――火壁」
「うわっ!? があっ!!」
「アチィ!? ぐわっ!!」
「な、なんだ!?」
突如として目の前にあらわれた火壁にふたりは飛び込み遅れていたひとりはなんとか寸前で止まることができて服に火がついて地面を転げ回る仲間を呆然とみていた。
カード化を解いたコインを手にマリアーナがそうつぶやく。
「サブギルドマスターのマリアーナさんが知らないってことはニセモノなんじゃないですか?
まさかミナトさん、騙され……」
横でみていたミーナが突然そんなことを言いだす。
「いや、それはないと思うよ。
僕だって一応そのあたりは気になるからコインを鑑定させてもらったからね。
このコインは間違いなく借金の手形がわりをしているのは間違いないんだ。
まあ、その金額まではわからなかったけどね」
僕はミーナの言葉を否定しながらも小金貨5枚という高さには自信がなかった。
「まあ、この村特有の証文みたいなものなのでしょうから私が知らなくても別段おかしなことではないのかもしれませんね。
まあ、サンザンに行けばわかるでしょうからそれよりも明日からの予定を共有しておきましょう」
マリアーナは冷静に話をおさめて明日からの旅について予定を説明していった。
「――では、その予定で行きますので遅れないようにお願いしますね」
マリアーナのその言葉で解散となり僕たちはそれぞれのテントでゆっくりと休んだ。
* * *
「では出発します。
見張りは交代でお願いしますね。
この先からは道幅も一段と狭くなり視界も悪くなりますのでどこから獣がでてくるかわかりませんのでいつでも対処できるように準備をしておいてください」
次の日の朝、朝食をすませた僕たちにマリアーナがそう指示を出してから御者台に乗り門兵にお礼を言って馬車を村から出発させた。
「サンザンまではだいたい2日ほどかかるけれど最近は盗賊がでたとの話も聞かないし比較的スムーズに進むと思うわ。
それにもともとこんなところには盗賊も拠点をかまえたりしないからそれほど警戒は必要ないわ」
「そうなんですか?」
僕の問にサーラが意見を述べる。
「まあ、そうでしょうね。
確かに人通りが少ないから襲うところを目撃される心配は少ないけれど、そもそも通る人や馬車がほとんどいないから盗賊たちも自分たちの食いぶちを確保できないでしょうしね」
サーラもマリアーナの言葉に同意してうなずきながらも周りの警戒は怠る様子はなかった。
――ガタン。
急に馬車が大きく揺れて僕は思わずバランスを崩した。
「まったく……。
たった今しがた大丈夫だと言ったばかりだというのになんてタイミングの悪い……」
サーラがため息をついて向かい側に座るダランに目配せをしてマリアーナに馬車を止めるように声をかける。
「となりの国から流れてきたやつらかしらね。
この国の盗賊ならば相当に頭が悪いとしか言いようかないわね」
サーラの声にこちらもため息をついて馬車を止めたマリアーナが呆れた表情でそう話す。
「それで、どのくらいだ?」
馬車から武器を取り出しながらダランがサーラに聞くと彼女は「……6人ってところね」と答える。
「6人か……。
相手の力量がわからないから油断は出来ないがおとなしく負けてやるわけにはいかないぜ」
基本的にはこちらの戦闘護衛はダランとサーラの2人だがいざとなれば僕が対応する必要があるかもしれないのでダランにつられて僕も馬車から立ち上がろうとしたがそれはサーラに止められた。
「降りるのは相手の状態を確認してからにしてください。
確かに人数的には不利ですけどはじめから全員姿を見せるより油断させてから一網打尽にしたほうが早いですからね」
少し前まで駆け出しの称号を呼ばれていたとは思えない冷静さでサーラはダランと共に馬車から降りて辺りを警戒する。
「ほう。姿を見せる前に気がつくとはそれなりの護衛がついてるようだ。
だが、たった2人では足りなかったようだな」
のそりと大柄な男がふたりの前にあらわれその脇を固めるようにもう2人、そして反対側から3人の男たちが剣を抜き身のまま姿をみせた。
「無駄な抵抗は諦めて積んでいる荷物を全て置いていけ。
今ならそれで命は見逃してやる。
ただし、抵抗するならば皆殺しも持さないぜ」
おそらく盗賊たちのリーダーと思われる大柄の男が口をひらくとそう警告をする。
「そんなこと言ってないでさっさと皆殺しすれば簡単じゃねぇですかい?」
仲間のひとりが考えもなしにニヤニヤしながらそう言って剣で空をなぎる。
「いい考えじゃないですかい?
この規模の商人馬車ならば御者に護衛2人は普通ですし、下手に生きて帰せば面倒なことになりかねないですぜ?」
側にいた他の男もそれに同意してリーダーの判断を待つ。
「話は決まったか?
なら、始めようか!」
その時、ダランが盗賊たちにそう叫びながらリーダーの男に突進をしながら斬りつける。
「ちっ!
やる気マンマンかよ、めんどくせぇ!」
男はそう叫びながら手に持った武器でダランの剣を受けとめる。
「もらったぁ!」
側にいた別の男がそう叫びながらダランの腹に向けて剣をふり抜こうとした瞬間、後方から詠唱が響く。
「アイスニードル!」
「ぐわっ!?」
ダランに向けられた剣を吹き飛ばすかのように剣と体を氷の矢が男にぶち当たる。
氷の矢は男の体に突き刺さることは無かったがそのはずみで数メートルほど飛ばされ「ぐへっ!」とうめき声をあげながら気絶をした。
「ちっ!魔法スキル持ちがいやがるのか。
しかたねぇ、おまえら足を止めろ!」
リーダーの男が指示をとばすと馬車の反対側に陣取っていた男たちが「おう!」と叫んで一斉に斬り込んできた。
「馬車と御者を狙うかよ!
さすが盗賊は容赦ないな!」
受け止められた剣をひいて少し距離をとったダランがそう叫ぶ。
「ふん。お前たちが素直に降伏しないからこうなるのだ!
恨むならば自らの判断を恨め!」
盗賊のリーダーはそう叫ぶとダランを反対側へと向かわせないような動きをみせながら時間を稼ぐ。
「おらっ! 死ねや!」
後方の盗賊たちが殺気を振りまきながら馬と御者へと向かうがマリアーナは御者台から立ち上がりもせずにぼそりとスキルを発動させた。
「――火壁」
「うわっ!? があっ!!」
「アチィ!? ぐわっ!!」
「な、なんだ!?」
突如として目の前にあらわれた火壁にふたりは飛び込み遅れていたひとりはなんとか寸前で止まることができて服に火がついて地面を転げ回る仲間を呆然とみていた。
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※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
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