荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

文字の大きさ
90 / 201

第90話【サンザンの村】

しおりを挟む
「バカ野郎!!
 見ていないで早く消してやらないか!!」

 あまりの事に固まってしまっていた残りの男がリーダーの叱咤しったで我にかえり慌てて仲間の火を消そうとするが水もない状態で転げ回る者の火など消せるわけもなかった。

御者コイツも魔法スキル持ちかよ!?
 なんでこんなやつらがこんな所を通ってやがるんだ!?」

「さてな!
 お前たちはよそもんだから知らねぇだろうがこのあたりをねぐらにする頭の悪い盗賊はいないんだとよ。
 さて、終わりにさせてもらうぜ」

 ダランはそう言うとリーダーの男にむけてスキルを発動させた。

「――豪腕剣!」

「ぐっ!」

 バキン!

「ぐわっ!?」

 一度は受け止められたかに見えたダランの剣は盗賊のリーダーが持つ剣を叩き折ってそのまま男の身体を深々と斬り裂いた。

「リーダー!?」

 それを目の当たりにした仲間の男は腰を抜かさんばかりに驚きの声をあげてその場から逃げ出そうと背を向けたがその直後、「開放オープン!」カードの開放宣言がなされアイスニードルの魔法が発動する。

「がっ!?」

 男は背中から『至近距離』で魔法を撃たれて身体中の骨を折りながら絶命した。

「やっぱり使えるな。
 こいつは別れるまでに出来るだけ補充しておきたいものだぜ」

 そう、カードを開放したのは他でもないダランだった。

「な、なんなんだよお前らは!?」

 火壁に突っ込み火だるまとなったふたりの男たちの火は結局消えず、ただひとり残された男が腰を抜かしてその場にへたり込んで叫んだ。

「なにってただの商隊と護衛だがそれがどうした?」

 怯える盗賊の前にダランが立ちにらみつけると「お前たちはどこから来たんだ?」と聞いた。

「となりの国から山を越えてきたんだ。
 あっちの国ではいま大規模な盗賊狩りが始まっているから国境を越えて逃げてきたんだよ」

「ふうん。
 で、こっちの国に来てからさっそく盗賊稼業の再開ってわけだったんだな。
 ま、しかたねぇよな商隊を襲って皆殺しをすると宣言しちまったんだからその状況がそっくりそのまま自分に返ってきても文句は言えねぇよな」

「ひっ!? ひいい!!」

 ダランはそう言うと最後のひとりに剣を突き立ててとどめをさした。

「それほどたいしたやつらじゃなかったが話を聞くと多少なりともとなりの国から盗賊どもが流れてくる可能性があるってわけだ。
 ギルドとしても把握しておく必要があるだろう。
 まあ、ちょうど運良くサブマスが同行してるからそのあたりはお任せしますよ」

 ダランは盗賊たちの死体を引きずって道脇の森に放り投げながらマリアーナにむけてそう言った。

「そうですね。
 出来ればもう少し情報が欲しかったですが生きたまま旅に同行させるのは難しいですし、ミナトさんのカード化で運ぶのも結局ノーズで開放してもらわなければなりませんので盗賊の口から余計な情報をしゃべられては面白くありませんからね」

 馬車から降りてきたマリアーナが盗賊の死体からいくつかの証拠品となるものを集めると「片付けたら先を急ぎましょう」と御者台へと戻っていった。

「――強くなられましたねダランさん」

 死体を片づけてふたたび移動をはじめた馬車の中で僕は素直な感想をもらす。

「はは、まあな。
 あれから武器も新調したしサーラとの連携もしっかりと練習をしたからな」

「そんなこと言ってまたバカみたいに突っ込んで行ったわよね?
 あれほど何度も言ったのに死にたいの?このバカ兄は……」

 自慢げに話すダランの横ではあいかわらずの呆れた表情で突っ込むサーラの姿があり僕もつられて苦笑をした。

   *   *   *

 予定外のトラブルもあったが僕たちはその後2度の野営を経て山奥の村『サンザン』へと到着した。

「――とまれ!」

 サンザンの村へ入ろうとすると入口で見張りの者に馬車を止められた。

「お前たち、いつもの商人ではないようだがこんなところへ何をしにきた?
 ノーズベリーは契約した商人にしか売ることは出来ないと知ってるな?」

 見張りの者はこちらを警戒するような目で御者と護衛を交互にみる。

「ロギナスからトウライ経由でノーズまで旅をしている商人の馬車でございます。
 特にこちらで仕入れるつもりで寄ったわけではありませんが何か必要なものがあれば卸すことができるかと思い寄らせてもらいました」

 マリアーナは出来るだけ不信感をもたれないような理由を述べて村に入れてくれるように頼んだ。

「そうか。それならば中央にある集会所へ向かうがいい。
 そこで休んでいる者たちに声をかければなにか買ってくれるかもしれんぞ。
 特に酒なんかあるといいが、さすがに持ち合わせてはおらんだろう?」

 少しばかり期待を込めて見張りの者が聞くと「お酒ですか? ありますよ」とあっさり声が返ってきた。

「なっ!? 本当か?
 こんな山道を酒なんか積んで走ったら入れ物が割れるかこぼれるかで割にあわないだろうに」

「まあ、ちょっとした運び方がありまして……。
 少しですけどどうぞ、差しあげますね」

 僕がこっそりカード化を解いたお酒をマリアーナはその見張りの者へ渡して微笑む。

「ま、マジかよ。
 この村にいる期間は酒なんて飲めるはずがないと思ってたんだ。
 ほ、本当にもらっていいんだな?
 後で高額な請求をされたりしないよな?」

 酒を前にテンション爆上がりの見張りの者だったがやけに慎重に何度も確認をしてきた。

「やけに心配しますね。
 前になにかあったのですか?」

「ははは。
 いや、前に似たようなことがあって質の悪い薄い酒を高値で買わされたことがあったんだよ」

「なるほど。
 それは災難でしたね。
 大丈夫ですよ、これに関しては村に寄らせてもらったことと商売の場を提供してくれたお礼ですから」

 マリアーナはまたニコリと微笑むと軽く頭をさげて村の中に馬車を進ませた。

「ありがとね。
 思ったよりもすんなり入れて助かりましたよ」

 馬車を目的の建物へむけて進ませるマリアーナが僕にそうお礼を言った。

「いえ、僕も村の中に入る必要があったので助かりました。
 僕もはやく目的のひとを探さないといけないですけど名前を呼んであるく訳にもいかないし、とりあえずその集会所にむかうのが正解でしょう」

 僕はそう答えながら白いコインと一緒にもらったメモに書かれている名前を読み返していた。

「ラウメ……か」
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...