荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

文字の大きさ
94 / 201

第94話【ノーズの町とギルドマスター】

しおりを挟む
「――みえたわ、あれがノーズの町よ」

 馬車の御者台から前をゆびさしながらマリアーナが僕たちに教えてくれる。

「あれがノーズの町、王都のような白壁ではなく赤茶色の壁が印象的な町ですね」

「そうね、このあたりは冬になると雪も積もることが多くあるから白壁だと遠くから視認出来ないので赤土を混ぜたもので壁を築いたと言われているわ」

「そうなんですね。
 王都と違って木々に囲まれた町なので緑の中でも映えますもんね」

 僕がマリアーナに感想を言っているあいだ他のメンバーたちは初めてくるノーズの町にわくわくした目で反り立つ壁に見入っていた。

 やがて馬車は町の門へとたどり着き、町に入る手続きをすることになる。

「めずらしいですね。
 こちらの道から商人の馬車が来るなんて……。
 サンザン村からノーズベリーを運ぶ馬車しか通るのをみたことないですよ。
 ロギナスからわざわざ山岳経由でノーズまで来る利点は『早く着く』ことだけで他はリスクだらけですからね。
 それでそんなに急いで何を運ばれているのですか?」

 やはり山岳経由での移動は普通ではなかったようで体裁を整えるために護衛のみんなは馬車から降りて割れそうにない品物をそれとなくカード化から開放しておいたのですかさずマリアーナは返答をうまく返していた。

「――よろしいですよ。
 特に通行証に不備はありませんのでお通りください。
 ギルドの建物は町の中心地にありますので先にそこへ向かうと良いでしょう」

 門兵からそう告げられたマリアーナは「ありがとうございます」と頭をひとつさげてから馬車を町の中へと進ませた。

「無事にノーズの町までたどり着きましたね。
 皆さん本当にありがとうございます」

 ギルドへ向かう馬車の中で僕は皆に感謝の言葉を伝える。

「まだお礼は早いですわよ。
 あなたの目的はアランガスタの国へ向かうことのはず、ノーズにたどり着いてからが本番ですよ」

 マリアーナがそう告げると同時に馬車はギルドの前で止まった。

「さあ、着きましたよ。
 ここがノーズ斡旋ギルドになります。
 私は馬車を専用の宿舎へ置いてきますので皆さんは入ってすぐのフロアで待っていてください」

 マリアーナは僕たちを馬車から降ろすと馬を進ませて宿舎へと移動させた。

 ――からんからん。

 どこの町のギルドでも同じ鐘の音が鳴り響く。

 広さ的にはロギナスと同等くらいだろうか、見慣れたギルド共通の制服に身を包んだ受付嬢たちがパタパタと忙しそうに走り回っていた。

 とりあえず邪魔にならない位置でマリアーナが来るのを待つことにしてその様子をながめていた。

「あの……こちらのご利用は初めてでしょうか?」

 僕たちが受付へ向かわないのを見て、手のあいた受付嬢のひとりが声をかけてきた。

「少し人を待ってるだけですから大丈夫ですよ」

「そうでしたか。
 ではお連れ様が来られましたら窓口へどうぞおこしください」

 その女性は丁寧にお辞儀をすると笑顔をみせて仕事に戻った。

「――おまたせしました。
 では行きましょうか」

 しばらく待っているとマリアーナが馬車の処理を済ませてから受付前の広場にあらわれてそう言った。

「すみませんがギルドマスターに用件があるのですが面会の許可をとって頂けませんか?」

「ギルドマスターですか?
 失礼ですがどういったご用件でしょうか?」

 当然ながらギルドマスターに会わせてくれと言っても普通は通るはずがない。

「あら、失礼しました。
 私はロギナス斡旋ギルドの副ギルドマスターを務めさせてもらっているマリアーナと申します。
 このたびは当ギルドのマスターであるザッハよりノーズ斡旋ギルドのマスターであるディアルさまに手紙を届けに来ましたので内容の説明をさせて頂きたいのです」

「ロギナスのサブマス様でしたか、それは失礼しました。
 なにか証明できるものはございますでしょうか?」

「そうね、これでいいかしら」

 マリアーナはそう言ってロギナスのサブマスの証とザッハからの手紙を受付嬢に提示した。

「あ、ありがとうございます。
 すぐにギルドマスターに確認をしてきますので少々お待ちくださいませ」

 マリアーナの提示した証を確認した受付嬢は手紙を持ってすぐに奥の廊下へと飛び込んでいった。

「うまくいくと良いですね」

「そうね。まあ大丈夫でしょうけど」

 などと僕たちがそう言いながら待っていると奥の廊下から先ほどの受付嬢が息を切らせながら走ってきて「お会いになるそうですから第一応接室てお待ちください」と言って僕たちを案内してくれた。

 ――かちゃり。

僕たちが応接室で出された紅茶を飲みながら待っていると入口のドアが開き先ほどの受付嬢と共にひとりの青年が部屋に入ってきた。

(ずいぶん若いギルドマスターだな)

 僕の第一印象はそうだったが、ふとマリアーナの兄であるとの情報を思い出して納得した。

「こんな遠いところまでわざわざ来て頂いてありがとうございます。
 ロギナスのギルドマスターからの手紙も拝見させて頂きました。
 そちらが手紙にあったミナト殿ですか?」

 僕たちの正面に座ったディアルはマリアーナとは目を合わせないように僕と向き合って話を進めようとする。

「あ、はい。
 そうですが……あの、妹さんの事はよろしいのですか?」

 なんとなく地雷のような気もしたがサブマスマリアーナの存在を無視して話を進めるのはマズイのではないかと思いそう切り出した。

 だが「わたくしには妹はおりませんが、なにかの間違いないではないですか?」とあっさりと言って退けられた。

(えっ?
 だって彼女はギルドマスターの妹じゃないのか?)

 僕はマリアーナとディアルを交互に見ながら何が起こっているのかを必死に頭の中でフル回転させた。

(そう言えばロギナスのギルマスが彼女を紹介する際になにか言っていたような記憶が……)

 僕はその記憶を必死に掘り起こしてある結論に達した。

(マリアーナさんはではないんだな)

 その結論にたどり着いた僕はこの話題から出来るだけ早く離脱出来るようにと突然話を変えた。

「あ、それでザッハさんからの手紙にはどういった説明がされていましたか?」

 なんだか怖くて隣に座るマリアーナを見れないままに僕はディアルにそう問いかけた。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...