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第94話【ノーズの町とギルドマスター】
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「――みえたわ、あれがノーズの町よ」
馬車の御者台から前をゆびさしながらマリアーナが僕たちに教えてくれる。
「あれがノーズの町、王都のような白壁ではなく赤茶色の壁が印象的な町ですね」
「そうね、このあたりは冬になると雪も積もることが多くあるから白壁だと遠くから視認出来ないので赤土を混ぜたもので壁を築いたと言われているわ」
「そうなんですね。
王都と違って木々に囲まれた町なので緑の中でも映えますもんね」
僕がマリアーナに感想を言っているあいだ他のメンバーたちは初めてくるノーズの町にわくわくした目で反り立つ壁に見入っていた。
やがて馬車は町の門へとたどり着き、町に入る手続きをすることになる。
「めずらしいですね。
こちらの道から商人の馬車が来るなんて……。
サンザン村からノーズベリーを運ぶ馬車しか通るのをみたことないですよ。
ロギナスからわざわざ山岳経由でノーズまで来る利点は『早く着く』ことだけで他はリスクだらけですからね。
それでそんなに急いで何を運ばれているのですか?」
やはり山岳経由での移動は普通ではなかったようで体裁を整えるために護衛のみんなは馬車から降りて割れそうにない品物をそれとなくカード化から開放しておいたのですかさずマリアーナは返答をうまく返していた。
「――よろしいですよ。
特に通行証に不備はありませんのでお通りください。
ギルドの建物は町の中心地にありますので先にそこへ向かうと良いでしょう」
門兵からそう告げられたマリアーナは「ありがとうございます」と頭をひとつさげてから馬車を町の中へと進ませた。
「無事にノーズの町までたどり着きましたね。
皆さん本当にありがとうございます」
ギルドへ向かう馬車の中で僕は皆に感謝の言葉を伝える。
「まだお礼は早いですわよ。
あなたの目的はアランガスタの国へ向かうことのはず、ノーズにたどり着いてからが本番ですよ」
マリアーナがそう告げると同時に馬車はギルドの前で止まった。
「さあ、着きましたよ。
ここがノーズ斡旋ギルドになります。
私は馬車を専用の宿舎へ置いてきますので皆さんは入ってすぐのフロアで待っていてください」
マリアーナは僕たちを馬車から降ろすと馬を進ませて宿舎へと移動させた。
――からんからん。
どこの町のギルドでも同じ鐘の音が鳴り響く。
広さ的にはロギナスと同等くらいだろうか、見慣れたギルド共通の制服に身を包んだ受付嬢たちがパタパタと忙しそうに走り回っていた。
とりあえず邪魔にならない位置でマリアーナが来るのを待つことにしてその様子をながめていた。
「あの……こちらのご利用は初めてでしょうか?」
僕たちが受付へ向かわないのを見て、手のあいた受付嬢のひとりが声をかけてきた。
「少し人を待ってるだけですから大丈夫ですよ」
「そうでしたか。
ではお連れ様が来られましたら窓口へどうぞおこしください」
その女性は丁寧にお辞儀をすると笑顔をみせて仕事に戻った。
「――おまたせしました。
では行きましょうか」
しばらく待っているとマリアーナが馬車の処理を済ませてから受付前の広場にあらわれてそう言った。
「すみませんがギルドマスターに用件があるのですが面会の許可をとって頂けませんか?」
「ギルドマスターですか?
失礼ですがどういったご用件でしょうか?」
当然ながらギルドマスターに会わせてくれと言っても普通は通るはずがない。
「あら、失礼しました。
私はロギナス斡旋ギルドの副ギルドマスターを務めさせてもらっているマリアーナと申します。
このたびは当ギルドのマスターであるザッハよりノーズ斡旋ギルドのマスターであるディアルさまに手紙を届けに来ましたので内容の説明をさせて頂きたいのです」
「ロギナスのサブマス様でしたか、それは失礼しました。
なにか証明できるものはございますでしょうか?」
「そうね、これでいいかしら」
マリアーナはそう言ってロギナスのサブマスの証とザッハからの手紙を受付嬢に提示した。
「あ、ありがとうございます。
すぐにギルドマスターに確認をしてきますので少々お待ちくださいませ」
マリアーナの提示した証を確認した受付嬢は手紙を持ってすぐに奥の廊下へと飛び込んでいった。
「うまくいくと良いですね」
「そうね。まあ大丈夫でしょうけど」
などと僕たちがそう言いながら待っていると奥の廊下から先ほどの受付嬢が息を切らせながら走ってきて「お会いになるそうですから第一応接室てお待ちください」と言って僕たちを案内してくれた。
――かちゃり。
僕たちが応接室で出された紅茶を飲みながら待っていると入口のドアが開き先ほどの受付嬢と共にひとりの青年が部屋に入ってきた。
(ずいぶん若いギルドマスターだな)
僕の第一印象はそうだったが、ふとマリアーナの兄であるとの情報を思い出して納得した。
「こんな遠いところまでわざわざ来て頂いてありがとうございます。
ロギナスのギルドマスターからの手紙も拝見させて頂きました。
そちらが手紙にあったミナト殿ですか?」
僕たちの正面に座ったディアルはマリアーナとは目を合わせないように僕と向き合って話を進めようとする。
「あ、はい。
そうですが……あの、妹さんの事はよろしいのですか?」
なんとなく地雷のような気もしたがサブマスの存在を無視して話を進めるのはマズイのではないかと思いそう切り出した。
だが「わたくしには妹はおりませんが、なにかの間違いないではないですか?」とあっさりと言って退けられた。
(えっ?
だって彼女はギルドマスターの妹じゃないのか?)
僕はマリアーナとディアルを交互に見ながら何が起こっているのかを必死に頭の中でフル回転させた。
(そう言えばロギナスのギルマスが彼女を紹介する際になにか言っていたような記憶が……)
僕はその記憶を必死に掘り起こしてある結論に達した。
(マリアーナさんは妹ではないんだな)
その結論にたどり着いた僕はこの話題から出来るだけ早く離脱出来るようにと突然話を変えた。
「あ、それでザッハさんからの手紙にはどういった説明がされていましたか?」
なんだか怖くて隣に座るマリアーナを見れないままに僕はディアルにそう問いかけた。
馬車の御者台から前をゆびさしながらマリアーナが僕たちに教えてくれる。
「あれがノーズの町、王都のような白壁ではなく赤茶色の壁が印象的な町ですね」
「そうね、このあたりは冬になると雪も積もることが多くあるから白壁だと遠くから視認出来ないので赤土を混ぜたもので壁を築いたと言われているわ」
「そうなんですね。
王都と違って木々に囲まれた町なので緑の中でも映えますもんね」
僕がマリアーナに感想を言っているあいだ他のメンバーたちは初めてくるノーズの町にわくわくした目で反り立つ壁に見入っていた。
やがて馬車は町の門へとたどり着き、町に入る手続きをすることになる。
「めずらしいですね。
こちらの道から商人の馬車が来るなんて……。
サンザン村からノーズベリーを運ぶ馬車しか通るのをみたことないですよ。
ロギナスからわざわざ山岳経由でノーズまで来る利点は『早く着く』ことだけで他はリスクだらけですからね。
それでそんなに急いで何を運ばれているのですか?」
やはり山岳経由での移動は普通ではなかったようで体裁を整えるために護衛のみんなは馬車から降りて割れそうにない品物をそれとなくカード化から開放しておいたのですかさずマリアーナは返答をうまく返していた。
「――よろしいですよ。
特に通行証に不備はありませんのでお通りください。
ギルドの建物は町の中心地にありますので先にそこへ向かうと良いでしょう」
門兵からそう告げられたマリアーナは「ありがとうございます」と頭をひとつさげてから馬車を町の中へと進ませた。
「無事にノーズの町までたどり着きましたね。
皆さん本当にありがとうございます」
ギルドへ向かう馬車の中で僕は皆に感謝の言葉を伝える。
「まだお礼は早いですわよ。
あなたの目的はアランガスタの国へ向かうことのはず、ノーズにたどり着いてからが本番ですよ」
マリアーナがそう告げると同時に馬車はギルドの前で止まった。
「さあ、着きましたよ。
ここがノーズ斡旋ギルドになります。
私は馬車を専用の宿舎へ置いてきますので皆さんは入ってすぐのフロアで待っていてください」
マリアーナは僕たちを馬車から降ろすと馬を進ませて宿舎へと移動させた。
――からんからん。
どこの町のギルドでも同じ鐘の音が鳴り響く。
広さ的にはロギナスと同等くらいだろうか、見慣れたギルド共通の制服に身を包んだ受付嬢たちがパタパタと忙しそうに走り回っていた。
とりあえず邪魔にならない位置でマリアーナが来るのを待つことにしてその様子をながめていた。
「あの……こちらのご利用は初めてでしょうか?」
僕たちが受付へ向かわないのを見て、手のあいた受付嬢のひとりが声をかけてきた。
「少し人を待ってるだけですから大丈夫ですよ」
「そうでしたか。
ではお連れ様が来られましたら窓口へどうぞおこしください」
その女性は丁寧にお辞儀をすると笑顔をみせて仕事に戻った。
「――おまたせしました。
では行きましょうか」
しばらく待っているとマリアーナが馬車の処理を済ませてから受付前の広場にあらわれてそう言った。
「すみませんがギルドマスターに用件があるのですが面会の許可をとって頂けませんか?」
「ギルドマスターですか?
失礼ですがどういったご用件でしょうか?」
当然ながらギルドマスターに会わせてくれと言っても普通は通るはずがない。
「あら、失礼しました。
私はロギナス斡旋ギルドの副ギルドマスターを務めさせてもらっているマリアーナと申します。
このたびは当ギルドのマスターであるザッハよりノーズ斡旋ギルドのマスターであるディアルさまに手紙を届けに来ましたので内容の説明をさせて頂きたいのです」
「ロギナスのサブマス様でしたか、それは失礼しました。
なにか証明できるものはございますでしょうか?」
「そうね、これでいいかしら」
マリアーナはそう言ってロギナスのサブマスの証とザッハからの手紙を受付嬢に提示した。
「あ、ありがとうございます。
すぐにギルドマスターに確認をしてきますので少々お待ちくださいませ」
マリアーナの提示した証を確認した受付嬢は手紙を持ってすぐに奥の廊下へと飛び込んでいった。
「うまくいくと良いですね」
「そうね。まあ大丈夫でしょうけど」
などと僕たちがそう言いながら待っていると奥の廊下から先ほどの受付嬢が息を切らせながら走ってきて「お会いになるそうですから第一応接室てお待ちください」と言って僕たちを案内してくれた。
――かちゃり。
僕たちが応接室で出された紅茶を飲みながら待っていると入口のドアが開き先ほどの受付嬢と共にひとりの青年が部屋に入ってきた。
(ずいぶん若いギルドマスターだな)
僕の第一印象はそうだったが、ふとマリアーナの兄であるとの情報を思い出して納得した。
「こんな遠いところまでわざわざ来て頂いてありがとうございます。
ロギナスのギルドマスターからの手紙も拝見させて頂きました。
そちらが手紙にあったミナト殿ですか?」
僕たちの正面に座ったディアルはマリアーナとは目を合わせないように僕と向き合って話を進めようとする。
「あ、はい。
そうですが……あの、妹さんの事はよろしいのですか?」
なんとなく地雷のような気もしたがサブマスの存在を無視して話を進めるのはマズイのではないかと思いそう切り出した。
だが「わたくしには妹はおりませんが、なにかの間違いないではないですか?」とあっさりと言って退けられた。
(えっ?
だって彼女はギルドマスターの妹じゃないのか?)
僕はマリアーナとディアルを交互に見ながら何が起こっているのかを必死に頭の中でフル回転させた。
(そう言えばロギナスのギルマスが彼女を紹介する際になにか言っていたような記憶が……)
僕はその記憶を必死に掘り起こしてある結論に達した。
(マリアーナさんは妹ではないんだな)
その結論にたどり着いた僕はこの話題から出来るだけ早く離脱出来るようにと突然話を変えた。
「あ、それでザッハさんからの手紙にはどういった説明がされていましたか?」
なんだか怖くて隣に座るマリアーナを見れないままに僕はディアルにそう問いかけた。
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※第○話:主人公視点
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