荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

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第159話【ダルべシア王都へ】

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「お買い上げありがとうございます。
 これで次の仕入れの資金が出来ました」

 ミミエルは笑顔で僕にそう告げると深々と頭をさげた。

「いや、こちらも良いものを買わせてもらいましたのでお互いさまですよ。
 しかし、在庫を全部買ってしまっては村の住人の方が困ってしまわないのかが気がかりですが……」

「ああ、それならば心配いらないですよ。
 もともとこの村ではこの芋は大量に収穫されていますし、在庫がなくなったものを補充するために店が買い集めれば村民も潤いますから」

「そうかい?
 ならば遠慮なく買わせてもらうとしよう」

 僕は彼女にそう言って雑貨店を後にした。

「――ミナトさんのすることですから特に言いませんでしたけど本当に芋をあんなにたくさん買い込んで大丈夫だったのですか?」

 店を出て馬車へと歩く道すがらノエルが僕にそう問いかけてきた。

「ああ、それに関しては問題ないよ。
 さすがに僕も考えもなくあれだけの物は買ったりしないよ。
 あの時、店内を見回しながら鑑定スキルで掘り出し物を探していたんだけど、この芋を鑑定した時に信じられない効果がついてるのに気がついたんだよ」

「信じられない効果?」

「ああ、この芋を普通に料理して食べるだけでも体力回復の効果があるのだけど加工して成分をうまく取り出せば薬を作ることが出来るみたいなんだ。
 もっとも薬師のスキルを持つ人に協力してもらわなければいけないからすぐには出来ないのだけれどね」

「薬の材料……ですか?
 どうみてもただの芋にしか見えませんけど」

「ははは、まあ成分の抽出をする必要があるからね。
 それが出来なければただの食料にしかならないからノエルの言ってることも一理あるんだよ。
 とりあえず今は出来ないことを考えても仕方ないのでまずは美味しいお菓子でも作ってみればいいだろう」

「そうね。
 王都についたら専用の道具を買って試してみることにするわ」

 ノエルはそう言うと楽しみにとばかりに微笑んだ。

「――ただいま戻りました」

 雑貨店を出てから馬車へ向って歩くこと十数分ほどでトトルが率いる商隊の休憩場所まで戻ってきた。

「お疲れ様でした。
 何か良いものでもありましたか?」

「ああ、はい。
 ちょっと面白そうなものがありましたので買わさせてもらいました」

「面白そうな物?
 あの店にそんなものありましたかね?
 まあ、良い買い物が出来たと言われるならばそれは良かったのでしょう」

「そうですね。
 実に有意義な時間でした」

 詳しい説明をしなかったのでトトルは意味がわからないとばかりに首をふるが深く追及することはなく食事の準備に戻っていった。

   *   *   *

 次の日の朝、僕たちを乗せた商隊の馬車は予定どおりにベリルの村を出発して次の村への道中を急いだ。

「予定どおりではありますがやはり大回りとなるこちらのコースを走るのは何か目的がなければ採算があわないですね。
 ミナト殿のように荷物を収納させることが出来るならそれこそ食料などを大量に買うことも出来たでしょうが馬車の積載量を考えたら重量のかさばるものは難しいですし、かと言って利益の出せる商品を取り引き出来るわけでもないですから。
 今回の件が無事に解決したらやはりこちらのルートは使う事はないかもしれませんね」

 トトルが苦笑いをしながらそんな話をするので僕もそれに付き合って話をあわせた。

「そうですか。
 やはり大手の商会は効率重視でしょうからそうなりますよね。
 ですが、まあそれが一概に悪いとも思いませんけどね」

「どうしてです?」

「いや、多くの商人全員が大手商会に所属しているわけではありませんよね?
 でしたら個人で行商をしている人や小さい商会にも商売の場があるってことですよね?
 いくら大手が効率が良くていろんなものを提供できるといっても全ての村や町に届けられるわけではないので住み分けって事で良いのではないかと思いますよ」

「いや、確かにそのとおりですね。
 私どもの商会ひとつで全ての町や村に品物を届けることは出来ておりませんし、またその必要もないという事ですね。
 今さらながらに気がつかされました」

 トトルは笑いながら僕にそう言ってお礼の仕草をした。

「――今日はこの先の村に泊まらせてもらいます。
 基本的にはベリルの村と同じ規模の村ですので同様に広場で野営をして次の日の朝に出発となります。
 その後はダルべシア王都の街まで約一日ほどになりますのでもう少しの辛抱ですよ」

 特に辛抱することは無かったような気もしたが僕はあえてそれは口に出さずに素直に肯定の合図をした。

 結局その日は予定していた村に泊まりその村でもいくつかの商品を村の雑貨店に卸していくことになりカード収納のことをあまり知らなかった店主に驚かれることになったのはよくある話だった。

   *   *   *

「――ミナト殿、見えてきましたよあれが目的地のダルべシア王都の街です」

 村で野営をしてから次の日の朝、早めに出発をした商会の馬車たちは途中の休憩もそこそこにダルべシア王都へ向けて急いで進ませていた。

 心配された正体不明の盗賊などは現れずにはぐれの獣が飛び出してきたくらいで大きく進行に響く事案はなく、無事に目的地であるダルべシアの街の近くまでたどり着いていた。

「この先にある分かれ道で本来通る予定だったマーグの街へ行く事が出来ます。
 私どもも行きはそちらの道を使ってアランガスタへ向かいました。
 まあ、予定より一日遅くなりましたけど途中でしっかりと利益の出る商売をしてきた事ですし大きな問題にはならないでしょう。
 遅れたことに関しては……ですが。
 盗賊の件については報告はしますが私どもに出来ることは限られていますから後は旦那様が判断されるでしょうから事実を話すにとどめておくつもりです」

「そうですね、それが良いと思います。
 何事も憶測が一番怖いですからね」

「そのとおりです。
 よく分かっておられますね。
 ところで王都へついたらおふたりはどうされるのですか?」

「ああ、それについてはふたりで決めてあるので大丈夫ですよ。
 とりあえず……」

 トトルの問に僕は今の時点でノエルと決めたこれからのことをかいつまんで話すことにした。
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