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第192話【雨あがって穴埋める】
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雨が降り出してから約3時間ほど過ぎた頃にようやく雨が上がった。
「雨があがるまでに思ったよりも時間がかかったな。この時間だと日が暮れるまでにエルガーまでたどり着くのは難しいだろう」
「そうですね。どうしましょうか」
「まだ日があるうちに出来るだけ進んでおくか、このままこの穴を拠点に中の調査をしておいて朝からエルガーに向かうかだな」
「調査はあまり気乗りしませんね。なんだかこの土壁を除いたら獣の集団が出てきそうな気がしてそわそわしてしまいます」
「わかった。気にはなるけれど危険を犯すほどのことではないから土砂で埋めて行くことにしよう」
僕たちは荷物を馬車に乗せて洞窟から少し離れた場所に馬車を移動してから土砂のカードを数枚出して洞窟の入口に向けて開放する。
どじゃ!
するとカードから戻った大量の土砂が洞窟の上から流れ落ちてきて入口を完全に埋めてしまった。
ズズズーン
雨あがりだったおかげで土埃も少なくまた真っ黒になることも無く穴は綺麗に埋まったのだった。
「これで大丈夫かな。一応、上の崖が崩れて穴が塞がったようには見えるから後で何か聞かれても気がつかなかったと言えば良いだろう」
「少しだけ中が気になるけれど仕方ありませんね」
ノエルはそう言うと御者台に登ってゆっくりと馬車を走らせ始めた。
◇◇◇
「――やっぱり間に合わなかったですね」
結局のところエルガーの街までもう少しのところまではたどり着いたが空が暗くなりかけたので本来の休憩場所では無いが野営をすることにした。
「明日の午前中には十分エルガーにたどり着きそうですね」
「ああ、そうだな。エルガーでは主に食料支給になるだろうが、やっておきたい事もあるから丸一日は滞在することになるだろう」
パチパチと燃える木の音を聞きながら僕はノエルにそう話す。
「やっておきたいこと?」
「うん。おそらくノーズや王都からもギルド便で僕がカード化した大量の食料が送られてきているだろうけどあくまでまとめて送っただけだからね。ちょっと大変だけど種類別に小分けしてあげないと品質保持のカード化が意味のないものになるからね」
「面倒見が良いのはわかるけど依頼を受けたわけじゃないのならあまりやりすぎない方が良いかもしれないですよ。ミナトさんはそれで良いかもしれないですが他のスキル持ちの人まで無償で依頼をやらされる可能性もありますからね」
「それは考えて無かったな。そうだな、他のスキル持ちの人に迷惑となる事はしたくないな。わかったよ、依頼が無ければ助言だけに留めておくよ」
僕はノエルの意見を尊重してそう答える。
「じゃあエルガーではギルドに顔を出して王都からの物資を置いたらアーファさんに会って行くとしよう。彼女にアドバイスをしておけば早々にロギナスに向けて出発する事が出来るだろう」
燃える火を見つめながら僕たちは明日の予定をそう決めた。
◇◇◇
「――見えました。エルガーです」
翌日の朝からエルガーに向けて出発した馬車は昼前に街へと到着し、僕たちが門兵に伝えるとすぐにギルドへと案内された。
「お疲れのところ急ぎ来てもらってすまない。まずは先日ノーズおよび王都から届いた物資のギルド便のためのカード化対応に対する礼をさせてくれ」
ギルドマスターのマグナムは僕に向けて頭を下げて礼を言う。
「いえ、自分に出来る事をしただけですよ」
僕はそう言って彼に頭をあげるように振る舞う。
「それで食料事情はなんとかなりそうですか?」
「一時的ではあるけれどあれだけの物を援助してもらえれば次の収穫時期までのつなぎにはなるでしょう」
「それは良かった。一応、王都方面の街道は馬車が通れるようにはしておきましたので何かあれば王都への馬車を出せばいいでしょう。ところでアーファさんは健在ですか?」
僕はマグナムにそう説明をしてからアーファの所在を聞く。
「ああ、アーファならば先日王都から届いた荷物の開放と細分化した物の再カード化をするためにギルドの倉庫につめています」
「会うことは出来ますか?」
「アーファの師であるミナト殿ですから拒否することはありませんよ。どうされますか? 呼びますか?」
「いえ、仕事の邪魔をしてはいけませんから僕の方から会いに行きますので案内をお願いします」
僕はなんとなく今の状況が読めていたのでそう言ってマグナムに倉庫まで案内させた。
コンコン。
――かちゃ。
マグナムが倉庫のドアをノックしてゆっくりと開き先に中に入る。
中に居た者はマグナムの姿を見た途端に泣き言を発した。
「あ、ギルドマスター。やっぱり私には無理ですよぉ。私はしがない料理人なんですから」
聞き覚えのある声と共に半泣き状態のアーファが懸命に手に持った物資をカード化していた。
「そう言ってくれるな。サブとはいえこの量のカードを開放して分けられるのはお前しか居ないんだ」
泣きつかれたマグナムは困った表情でそう答える。
「あれからそれなりに時間が経っていますがアーファさん以外のスキル持ちのレベルアップはどうなっていますか?」
僕はアーファの状況を見て予想どおりだと思いマグナムにそう問いかけた。
「雨があがるまでに思ったよりも時間がかかったな。この時間だと日が暮れるまでにエルガーまでたどり着くのは難しいだろう」
「そうですね。どうしましょうか」
「まだ日があるうちに出来るだけ進んでおくか、このままこの穴を拠点に中の調査をしておいて朝からエルガーに向かうかだな」
「調査はあまり気乗りしませんね。なんだかこの土壁を除いたら獣の集団が出てきそうな気がしてそわそわしてしまいます」
「わかった。気にはなるけれど危険を犯すほどのことではないから土砂で埋めて行くことにしよう」
僕たちは荷物を馬車に乗せて洞窟から少し離れた場所に馬車を移動してから土砂のカードを数枚出して洞窟の入口に向けて開放する。
どじゃ!
するとカードから戻った大量の土砂が洞窟の上から流れ落ちてきて入口を完全に埋めてしまった。
ズズズーン
雨あがりだったおかげで土埃も少なくまた真っ黒になることも無く穴は綺麗に埋まったのだった。
「これで大丈夫かな。一応、上の崖が崩れて穴が塞がったようには見えるから後で何か聞かれても気がつかなかったと言えば良いだろう」
「少しだけ中が気になるけれど仕方ありませんね」
ノエルはそう言うと御者台に登ってゆっくりと馬車を走らせ始めた。
◇◇◇
「――やっぱり間に合わなかったですね」
結局のところエルガーの街までもう少しのところまではたどり着いたが空が暗くなりかけたので本来の休憩場所では無いが野営をすることにした。
「明日の午前中には十分エルガーにたどり着きそうですね」
「ああ、そうだな。エルガーでは主に食料支給になるだろうが、やっておきたい事もあるから丸一日は滞在することになるだろう」
パチパチと燃える木の音を聞きながら僕はノエルにそう話す。
「やっておきたいこと?」
「うん。おそらくノーズや王都からもギルド便で僕がカード化した大量の食料が送られてきているだろうけどあくまでまとめて送っただけだからね。ちょっと大変だけど種類別に小分けしてあげないと品質保持のカード化が意味のないものになるからね」
「面倒見が良いのはわかるけど依頼を受けたわけじゃないのならあまりやりすぎない方が良いかもしれないですよ。ミナトさんはそれで良いかもしれないですが他のスキル持ちの人まで無償で依頼をやらされる可能性もありますからね」
「それは考えて無かったな。そうだな、他のスキル持ちの人に迷惑となる事はしたくないな。わかったよ、依頼が無ければ助言だけに留めておくよ」
僕はノエルの意見を尊重してそう答える。
「じゃあエルガーではギルドに顔を出して王都からの物資を置いたらアーファさんに会って行くとしよう。彼女にアドバイスをしておけば早々にロギナスに向けて出発する事が出来るだろう」
燃える火を見つめながら僕たちは明日の予定をそう決めた。
◇◇◇
「――見えました。エルガーです」
翌日の朝からエルガーに向けて出発した馬車は昼前に街へと到着し、僕たちが門兵に伝えるとすぐにギルドへと案内された。
「お疲れのところ急ぎ来てもらってすまない。まずは先日ノーズおよび王都から届いた物資のギルド便のためのカード化対応に対する礼をさせてくれ」
ギルドマスターのマグナムは僕に向けて頭を下げて礼を言う。
「いえ、自分に出来る事をしただけですよ」
僕はそう言って彼に頭をあげるように振る舞う。
「それで食料事情はなんとかなりそうですか?」
「一時的ではあるけれどあれだけの物を援助してもらえれば次の収穫時期までのつなぎにはなるでしょう」
「それは良かった。一応、王都方面の街道は馬車が通れるようにはしておきましたので何かあれば王都への馬車を出せばいいでしょう。ところでアーファさんは健在ですか?」
僕はマグナムにそう説明をしてからアーファの所在を聞く。
「ああ、アーファならば先日王都から届いた荷物の開放と細分化した物の再カード化をするためにギルドの倉庫につめています」
「会うことは出来ますか?」
「アーファの師であるミナト殿ですから拒否することはありませんよ。どうされますか? 呼びますか?」
「いえ、仕事の邪魔をしてはいけませんから僕の方から会いに行きますので案内をお願いします」
僕はなんとなく今の状況が読めていたのでそう言ってマグナムに倉庫まで案内させた。
コンコン。
――かちゃ。
マグナムが倉庫のドアをノックしてゆっくりと開き先に中に入る。
中に居た者はマグナムの姿を見た途端に泣き言を発した。
「あ、ギルドマスター。やっぱり私には無理ですよぉ。私はしがない料理人なんですから」
聞き覚えのある声と共に半泣き状態のアーファが懸命に手に持った物資をカード化していた。
「そう言ってくれるな。サブとはいえこの量のカードを開放して分けられるのはお前しか居ないんだ」
泣きつかれたマグナムは困った表情でそう答える。
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