契約勇者は自由を求める 〜勝手に認定された勇者なんて国王様に全てお返しいたします〜

夢幻の翼

文字の大きさ
4 / 4

最終話 悪徳国王の末路

しおりを挟む
(さあ、始めるとするか)

 その夜、僕は城に忍び込みいくつかの道具に仕込みをすませる。

 ――翌日。

 王家では上級貴族など国の主だった者達を集めて儀式が行われていた。

「皆の者! 勇者マーカス・レッジは魔神王の城にて消息不明となった! 追跡調査も行ったが所在は掴めなかったため第七代目勇者マーカス・レッジは死亡したものと認定する!」

 室内からザワザワとざわめきが広がっていった。

「静まれ!」

「だが、我が国は勇者のひとりが死んだとて大きな問題ではない! 勇者が居なければ勇者を認定して育てれば良いのだ!」

 国王の言葉にその場に居る者達に緊張が走る。

 王家の勇者認定は神の名において絶対の契約として与えられる使命で、その人の家柄や人格、男女や年齢さえも全く考慮されずに指名され、逃げる事は不可能であった。

 指名の方法は、儀式の間に置かれている巨大な水晶体に王家の契約が封印された勇者の首輪を捧げて王が勅命を出すだけで契約が施行される事になる。

 そしてこの場には国の主だった者達が集まって儀式を見ているので、誰が次の勇者に選抜されたかすぐに国中へ広がるのであった。

「では儀式を行う。今度の勇者には魔神王の討伐に加えて前勇者の生死確認をしてもらうとするか。なに、失敗したならばまた次の勇者を指名すれば良いだけよ」

 王の発言に参戦恐々の貴族達だったが、王は涼しい顔で言い放った。

「なに、この勇者選抜は王家の者は選ばれないようになっておるから心配するな。もし、お前達の誰かが選ばれたならすぐに子供に家督を譲ることだな。でないと家長を失った家は取り潰しになるからな」

 部屋の空気が一気に重くなり皆が一斉に祈りだした。

 自分が選ばれませんにように――と。

「よし! 勇者選抜儀式を始める!」

 王が魔力を伴った杖を振りかざして王家の制約文を読み上げた。

「我が国に害する悪魔を倒すべく、我が国の剣となり、その身の全てを国の為に捧げる忠実な下僕となる勇者を選抜したまえ!」

勇者強制契約ギアス!」

 王の力ある言葉に反応した魔力が水晶体に吸い込まれていき、やがてひとりの人物を映し出した。

 ――そこに映っていたのは……。

 ザワザワ……そこにいる者達全員が息を飲んだ。

「な、なぜだ!? なぜ我の顔が映し出されているんだ!!」

 王は目の前で起こった事にわなわなと両の手を頬に充てて叫ぶしか出来なかった。

「王家の秘術は王家には適用されないはず! たとえ我が選ばれようとも我に契約は無効になるはずだ!」

 そう叫ぶ王の首には契約の首輪がはめられていた。

「こんなもの解除してくれるわ!」

 王は契約の解除しようと叫ぶが何も反応しない。

 それどころか、輝きを増して王の体を拘束した。

 その時、声も出ない周りの貴族達の後ろからひとりの男の声が聞こえた。

「これはこれは、勇者認定おめでとうございます。国王様……いえ、もう勇者様とお呼びした方が宜しいですかね」

 そこには先ほど死亡認定されたはずの元勇者マーカス・レッジが立っていた。

「マーカス・レッジ!? これは貴様の仕業か!」

 国王が叫ぶ。

「はて、なんの証拠があってそのような事をおっしゃられるのか分かりかねますが元・勇者としてアドバイスをひとつ差し上げようと思いましてね」

「な、なにを……」

 体の自由が効かない国王がうめく。

「以前魔神王に会った時に言われたのですが、貴方のやり方には大層不満を持っていました。魔神王が邪魔と言われるのならば貴方自身が直接対峙されてはいかがでしょうか?」

「ま、魔神王と話したのか!? まさか、奴の下にくだったのではないな!?」

「魔神王とは和解しただけですよ。お互いが不干渉でいるようにしたいと言ってましたよ」

「そのような戯言を真に受けたのか! この人類の敵めが!」

「何を言っても無駄ですよ」

 叫ぶ元国王を見下ろしながら僕は宰相に告げる。

「魔神王はこちらが攻めぬ限り不干渉とする旨を言っていた。今の国政を守りたいならそれを忘れてはならない」

 その言葉に宰相は静かに頷くとその場に居た貴族達に宣言する。

「この場に居る元国王はこれから魔神王の元へと向かわれる。次代の王は若き王子となるゆえ私を含め皆で支えてやるように」

 その言葉に貴族達は頷き若き王子へ忠誠を誓った。

 元国王はその日のうちに魔神王の元へ送り出されその後、姿を見た者は居なかった。

「――マーカスさん。やっぱり行ってしまわれるのですか?」
 
 勇者を辞めた僕が所属ギルドの変更をするために顔を出すとアリサが残念そうにそう言う。

「あんなことがなければこの街でもっと活躍出来たでしょうに」

「すまない、約束をしてしまったからな」

「残念ですが冒険者の方は自由にギルドの所属を変える権利があります。新しい所でも頑張ってくださいね」

「ああ、これまでありがとう」

 僕は書類をアリサから受け取ると彼女にお礼を言ってギルドを出る。

 空は青く澄んでおり暖かくなってきた風を受けながら僕は北へと足を向けた。


ー 完 ー
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

処理中です...