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第一章 たとえ君が誰であろうと好きにならずにいられなかった
第四話
しおりを挟む一般人は全員送還したし……いや、そんなことを考えるまでもなく倒れているのは一条寺少尉だ。
そんなまさか、この程度の妖魔にやられるなんて?? という思いが俺の中に沸き起こる。
「っ!?? 少尉!!!」
三ヶ月間行動をともにして、少尉の圧倒的なまでの強さはいやというほど知っていた。
慌てて駆け寄れば、冷や汗をダラダラと垂らした少尉が俺に視線を向ける。
隣に膝を付き、上半身を抱き上げるが外傷は肩口の傷くらいだ。
血は滲んでいるが倒れるほどの傷ではない。
「すまない……油断した……」
ハァハァと顔を赤くし息苦しそうに話す少尉の様子に嫌な予感がするのに、ドキドキと鼓動が高まった。
普段も色気のある人だが、今はそれが五割増し以上である。
無駄に色っぽい。
「も、もしかして毒ですか?」
「そのようだね……体が動かない」
「今すぐ解毒剤を…っ」
「いや、薬はどれが効くのか試す時間が惜しい。……それよりも早い、解毒の方法がある……っ」
上気する少尉の顔とは逆に青ざめた俺は慌てて薬を取り出そうとしたが、少尉が体をこちらへ倒してきたため抱きとめる形になり、両手が塞がってしまった。
ふわりと感じる少尉の甘い香りにドキリとまた胸が高鳴る。
一条寺少尉はなにか香水をつけているのか良い香りがするのだが、かなり密着しないとわからない。
だからこの香りを嗅ぐときは戯れるように抱きしめられたりしている時で、そんなことは滅多にないのだが、人との接触に不慣れな俺は無駄にドギマギしてしまうのだ。
だが、今はどう考えてもそんなことに現を抜かしている場合ではない。
俺は努めて冷静を装う。
「それはどのような方法なんですか?」
「……僕は……手がうまく動かなくて、手伝ってもらえるかな?」
「当たり前です。やり方を教えてください!!」
辛そうに息が上がる少尉の姿に俺は煩悩を捨て、食い気味に答えた。
この人は本当に優秀な人なのだ。
今後のこの世界の平穏のためにもこんなところで亡くしていい存在じゃない。
「ありがとう、衛……。さっそくで悪いが、僕のペニスを取り出して扱いてくれ。精液から毒を、排出するんだ」
……………………………………………は?
「なんて?」
「ぐっ……苦しい……、早くっ」
聞き間違いかと思って思わず聞き返してしまったが、少尉は苦しそうに呻くとパタリと床に仰向けに倒れ込んでしまった。
「僕が……月光隊の、部隊長がこんな醜態を……晒すわけにはいかないんだ」
それは確かにそうですが。
「あの、いや、でも、他に方法は……」
「あと5分足らずでこの異空間は消滅してしまう……アア、なんということだ。僕が、築き上げてきたものがこんなことで崩れてしまうなんて」
確かにこの若さで軍部に顔が利くのも相当の政治手腕があってだってことはわかる。
目に見えぬ苦労や、諦めたり憤ることだって多かっただろう。
「衛……君にしか頼めないんだ」
いつも以上に艶めかしく熱く潤んだ瞳で懇願されて、俺の中のなにか崩れ落ちたような気がしたが、首を大きく横に振り理性を取り戻す。
……これは人命救助であり緊急措置だ。
「……っ! 失礼します!!」
俺は素早く一条寺少尉の前を寛げるとすでにバキバキになっていたイチモツを取り出した。
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