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第一章 たとえ君が誰であろうと好きにならずにいられなかった
第三話
しおりを挟む「っ! ……妖魔?!」
「追っていた奴かもしれない。油断するな」
「はっ!」
音と同時に俺と少尉は席を立ち、応戦できるよう身構えた。
グニャリと世界が歪み、先程までの落ち着いた喫茶店の内装がチカチカした蛍光色の空間へ変化する。
言うなれば派手なペンキで壁や床だけでなく家具や電気もデタラメに塗りたくられた感じだ。
妖魔の作る異空間。餌としてこの異空間に囚われてしまうと一般人は逃げることができない。
だが、月光隊はちがう。
月光隊員の特殊能力、退魔の力があればこの異空間から出ることもできるし、親玉を倒し異空間自体を消滅することができるのだ。
ここ最近、集団拐かし事件が相次いでおり、俺と少尉はその調査に当たっていた。
状況的に妖魔の仕業だろうと読んでいたが間違いなかったようだ。
妖魔はさまざまな姿を持っている。人や動物の姿が多いが今回の相手は木の形をしていた。
先程までは絶対に無かった5メートルくらいの木が店の真ん中でうねうねと動いている。
その幹には人の顔に見えるものが無数にあって、かなり見た目がおぞましい。
妖魔の周りを見回せば、喫茶店の給仕や客が十五名ほどいるのがわかった。
「衛は一般人の強制送還を。僕が妖魔を引き付ける」
「承知しました」
一条寺少尉は腰に帯刀していた剣を抜かず、宙空から突然現れたサーベルを引き抜くと颯爽と妖魔に走り寄る。その姿を横目に俺は近場の初老の給仕へ走り寄った。
退魔の力には個人差があり、使う武器はなにもない空間から具現化する。
一条寺少尉はサーベル、三枝先輩は槍、五木先輩は護符、おとめは日本刀で、俺は二丁拳銃だ。
この時代の主流はまだ火縄銃などの単発銃で、俺が具現化した連射できる拳銃は珍しいのだが、子どものころ妖魔に襲われ、無意識に退魔の力を発揮してしまったので仕方ない。
どう考えたって刀より銃の方が強いに決まっている。俺が銃を武器に選んで妖魔を倒したって仕方ないだろう。
「あぁ……ぁの、こ、これは」
「大丈夫です、落ち着いてください。わたしは月光隊夜蝶部隊の日凪衛です。これから妖魔と交戦します。みなさんは現世へ戻ったらこの建物からすみやかに避難してください」
多分この人が一般人の中では一番冷静だろうとあたりをつけて、必要事項を説明する。
妖魔の異空間は妖魔が消滅すると現世へ影響を及ぼす。
例えば戦闘で建物を破壊してしまった場合、戦闘後に現実の建物が壊れてしまうことがあるのだ。
初老の給仕が何度もうなずくのを確認してから俺は彼の肩に触れる。
すると瞬きする間もなく給仕の姿は消えた。
「よしっ」
異空間からの強制送還させる方法も色々あるが、俺の場合は軽く触れて念じるだけでいい。
接触が必要ではあるが、一瞬ふれるだけで送還させられるのは月光隊の中でも便利な方の能力だ。
多くの送還方法は両者に合意がないとできないため、パニックを起こしている一般人を現世へ逃がすのは難しいらしい。
俺はとにかく片っ端から非戦闘員を逃がすべくその体に触れていく。
市民の憧れでもある月光隊の制服を着ているので逃げられることもなく、十五名の強制送還を終了させた。それとほぼ同じタイミングでさらさらと枯れ葉が目の前に落ちてくる。
「あのデカいのを一人で……さすが一条寺少尉」
俺の出る幕はなかったなぁなんて妖魔と少尉に振り返れば、枝の先から枯れつつある木の側に倒れている人影が見えた。
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