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第三章 新隊員の選抜条件おかしくないですか??
第三話*side衛
物思いにふける間もなく俺は一条寺少尉によって資料室に押し込まれた。
ガチャリと鍵を閉める音が響く。
薄暗いその部屋は無人のようで、資料室の名に相応しく戸棚がいくつも並び、中心に閲覧用の大きめな机が置かれているだけの部屋である。
扉を背にした少尉に突然抱きしめられて、思わず固まった。
少尉からはいつも通り甘くていい香りがするし、それだけでなく触れる体が暖かくて、先程とは違った意味で心臓がうるさく鳴り響く。
「あの、少尉これはどういう……」
「何があったの?」
いつもなら引き剥がそうとするところだが今はそんな気が起きなくて、とりあえず身を任せていれば左腕を指でなぞられ耳元で囁かれた。
ああ、負傷の原因を問われているのか。
少尉からはいつもできるだけ接近戦には持ち込まれないようにと言われている。
銃の特性を考えれば当然のアドバイスだ。だというのに俺はゼロ距離射撃をするだけでなく、稀に銃を鈍器が如く妖魔に打ち付け、肉弾戦に持っていってしまうことがある。
撃つより殴る方が早い場合だってあるのだ。
……拳銃の使い方としては如何なものかとは思うけども。
「申し訳ありません。乱戦になり前に出ました。左二の腕を負傷しましたが全治二週間程度で勤務に支障はありません」
夜蝶部隊は所属人数が少ないこともあって隊長である一条寺少尉はとても親身になってくれる。
俺みたいなモブの心配までしてくれる優しい方なのだ。
でもそれも、そろそろ終わりなのかもしれない。
モブはモブらしく画面の外に追いやられるのだろう。
自然と俯きがちになった俺の顎を少尉の長い指が引き上げる。
「?!?! っんぅ!」
そして問答無用で口付けられた。
貪るように唇を奪われ、いつの間にか口の中は少尉の舌に侵略され気持ちの良い部分を攻められる。
咄嗟に少尉に抱きつけば、クスリと小さく笑われた気がした。
「そうじゃないよ衛」
「んっ……ぁっ……」
角度を変えて何度も口付けられながら抱き寄せられ、少尉の体と俺の体がピッタリとくっつく。
制服がなければ良かったのに……なんてうっかり思ってしまって、自分の煩悩に居た堪れなくなった。
職場で盛るなんて、恥ずかしすぎるだろう。
「先程、月代おとめに何か言われていたんじゃないのかい?」
少尉の腕の中でうっとりとしていた俺は、冷水を浴びせられたように一気に現実に引き戻された。
そうだ。俺と少尉の勘違いのようなこの恋は……もうすぐ終わるんだ。
「衛?」
「あ、えっと、月代さんとは……」
素直に答えようとして俺はハッとした。
そうだ、先程の話は極秘事項だと言ってなかったか?
一条寺少尉を見ればどこか探るような視線で俺を見ている。
ここで素直に答えてしまったらおとめが情報漏洩をしたことになってしまう。軍規はそれなりに厳しいし、もしかしたらこれでおとめが夜蝶部隊へ移動してこれなくなるかもしれない。
一瞬。
本当に一瞬。
おとめが軍規違反となれば良いのではないか……と思ってしまった。
なんて浅ましいんだ、俺は!
邪念を打ち消すように俺は強く一条寺少尉の胸を押し、体を離した。
「二人は同期で、久しぶりに会ったので挨拶をしていただけです」
嘘ではない。だけど少尉には通用しなかった。
「……素直に言う気がないなら仕方ない。僕なりの方法で聞き出すことにするよ」
作り物のように美しく妖艶な一条寺少尉の微笑みにゾワリと悪寒が走る。
恐怖……のはずなのに。
まるで他の刺激を思い出したかのように、俺の体がゾクゾクと震えた。
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