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小話 おかしな間取りの家
後編*side衛
しおりを挟む「いつからそこに……?」
居たんですか?? まで言えなかったが、口から出そうな心臓を俺はどうにか落ち着かせつつ突然現れた四ツ谷さんに問いかける。
「……日凪サンが退室の挨拶を始めたあたりです……」
それって始めからでは!? もしかしてずっと俺の背後に居た??
え、変な会話してなかった……よな? 同棲の話をしていたけど俺と少尉が付き合ってるのはいつの間にか暗黙の了解のようなので、聞かれてもとくに問題はないはずだ。
「何か用か? 四ツ谷」
「……はい、今日中に目を通していただきたい書類と……」
驚いたのもあってドギマギしながら四ツ谷さんと少尉のやり取りを見守る。
四ツ谷さんは手に持っていた書類を渡すと、チラリと俺を見てから少尉に向き直った。
「……ウチの部隊はただでさえ問題を起こす方が多いので、隊長自ら事故や事件を起こさないようお願いします。日凪サンは気にしてないようなので……」
「そう、だな。暴走しないよう気を引き締めるよ。ありがとう四ツ谷」
「……いえ……」
二人の中で会話は成立しているようだが、俺も絡む話のようなのに俺は蚊帳の外である。
そもそも有能かつスマートな少尉が事件など起こすわけがないのに。
「あの? それはどういうことでしょうか?」
俺が問いかければ、四ツ谷さんがやや呆れた顔をした。
「……先程の話、覚えてますか? 隊長は貴方との家に監禁部屋を平然と作ろうとする男なんですよ。ご自分の身を少しは案じてください……」
「あっ!」
たしかに、たしかにだ。
俺が呆然としていれば「……お先に失礼します……」と四ツ谷さんは言い逃げしてしまった。
「まったく四ツ谷は衛に甘いね。そんな怯えないでおくれ。此処はあくまでも監禁部屋ではなくお仕置き部屋を作りたかっただけなんだ」
自分の顔は見えないから判らないが、よほど慄いた顔をしていたのだろう。
少尉は静かに立ち上がると俺の腰を抱き寄せる。
「お仕置き部屋って……」
「僕が衛にするお仕置きと言えば、分かるだろう?」
少尉の指が艶めかしく俺の腰を撫でる。ただそれだけで俺の背中にゾワゾワとなんとも言い難い感覚が走り抜けた。
さっきの悪寒とも寒気とも違う。
明らかな快感だ。
「それなら……んっ、寝室でいいのでは?」
少尉の指は腰から太腿におり、いやらしく触れてくるし、熱い唇がはむはむと俺の耳を甘噛してくる。
漏れ出る声や吐息を我慢しつつ言い返せば、少尉の動きがピタリと止まった。
「まったく、君って子はそんなに悪いことをして毎日僕にお仕置きされる気なのかい?」
「え、いや、そんなつもりは」
だってお仕置きって早い話が、六時間……いや八、ではなく十時間耐久セックスのことだろう。
窓のない換気の悪そうな部屋でそれこそヤりまくったらお互い病気になりそうだ。
だから、俺の提案は多分すごくまともなものだと思うのに。
断じて毎日眠る時にお仕置きをされたいわけじゃないし、そういう意味では決して無い。
「ふふっ、いいよ、寝室を立派にしよう。ベッドも頑丈かつ寝心地の良いものを選ばなければね。やはり独逸の物が良いかな。ああそうだ、手錠を固定できる形がいいね」
先程の四ツ谷さんの言葉が浮かぶ。
もしかしなくても、ここは俺が少尉の暴走を止めるべきなのでは?
「あのっ」
「今度カタログを持ってくるから一緒に選ぼう」
良く、考えて欲しい。
自分を拘束するベッドを一緒に選ぼうと誘われて、喜ぶ人間がいるだろうか?
居るわけがない、と思うのに。
キラキラした表情で蕩けるような陽真様の幸せ全開笑顔を前にして、俺には頷く以外の選択肢がない。
「……はい」
「ふふっ、僕の我儘を聞いてくれてありがとう、衛」
まあ、でも、お仕置きは悪いことをしたらされるものだから、悪いことをしなければ、大丈夫……のはず、たぶん。
二人きりだからと、職場だと言うのにいつの間にか水音が響くようなキスをしていて、尚且つ少尉の足に自分のモノを擦り付け腰をふってしまった俺は、実は結構流され易いのかもしれない。
「まったく、こんなところでそんな風に僕を誘うなんていけない子だ。さっそくお仕置きしなくちゃね。明日の朝、僕の部屋においで」
「……はぃ」
語尾にハートが付いてそうな声で返事をする俺を満足気に少尉が見つめる。
どうやっても俺が少尉からのお仕置きを回避するのは無理そうだが、いまはただ取りあえず、あのおかしな間取りの家に住むことは回避できそうなのでそれで良しとすることにした。
□ 小話*おかしな間取りの家(完)□
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日の丸扇様
感想ありがとうございます。
衛が頼んだり今後も脅威となり得ると判断すればさっくりと手を下す陽真ですが、衛は「罪を憎んで人を憎まず」なので、すでに過去となった出来事には動かない……のだと思われます。
今の彼らに復讐しても衛が幸せになるわけではないので(むしろ自分のせいで彼らが……ってなりそうだなと陽真は考えていて、そんな優しい衛が大好き)
それよりもデロデロに甘やかしまくる方を優先している感じです。
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