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小話 おかしな間取りの家
中編*side衛
しおりを挟む月光隊の給料はそれなりに良い。多少は俺も蓄えはあるが、見せられた間取り図の家はかなり大きいし、このあたりは帝都の中でも土地の値段がとても高い。
とてもじゃないが一般人に買える場所ではないのだ。
俺の視線を受け止めてアイスブルーの瞳がすっと細くなり、楽しそうに笑みを作った。
「良かった。一緒に住みたくないと言われたらどうしようかと思ったけど、僕と住むことには賛成のようだね」
「え、いえ、あの」
「費用の面は気にしないでいい。これでも僕はこの程度の屋敷を用意できないほど甲斐性なしではないからね」
この、程度……だと?
いや、一条寺少尉は物凄く格好いいですよ? 理想の彼氏だと思いますよ? 「あ、これがスパダリか」って思いますよ?
だがしかし、だ。
平凡雑魚モブの俺だって一応男だ。惚れた相手に多少は貢ぎたいって思うし、できれば対等な関係でいたい。
養われ庇護されるだけじゃ嫌なんだ。
俺の葛藤が顔に出過ぎていたのか、少尉の洞察力が優れているのか、たぶんその両方なのだろうけど、少尉は両手を組み俺を見上げるとニコリと微笑み言葉を続けた。
「……と、言っても真面目な衛は納得しないだろうね。そこで提案なのだけど、屋敷は僕が用意するから共に生活するようになったら家事の一部を衛にお願いしたいんだ」
一条寺少尉の提案はこうだ。
今後も俺は一銭も出さなくていいので、その代わりに休みの日に食事の支度をして欲しいとのこと。
俺も少尉も当然休みより勤務日のほうが多い。俺たちが仕事の日は通いの家政婦に来てもらい、掃除洗濯食事の用意を頼むので俺がする必要は無し。
「休みの日くらいは衛と二人きりでのんびりしたいからね。一日くらい掃除や洗濯はしなくてもいいだろうけど食事はそうもいかない。僕が出来ればいいんだが料理は生まれてこの方したことがなくて」
少し照れくさそうに微笑む少尉がなんだか可愛い。
キュッと胸が苦しくなる。万能な少尉でも出来ないことがあるとわかり、ちょっとだけ嬉しくなった。
「料理なら多少はできますが、あの、それはあまりにも俺に都合が良すぎる提案なのでは?」
「衛に都合が良いと感じるなら問題ないよ。僕がどうしても君と寝食を共にしたいんだ。僕ばかりの欲を叶えては申し訳ないからね」
「それは、俺も、少尉ともっと一緒にいたいと思ってたので……全然いいんです、けど……」
お互い様というかなんと言うか……と俺がゴニョゴニョ言っていれば、少尉が楽しげにフフフと声を出して笑う。
うぐ、なんか、凄く恥ずかしい。
「ふふっ、衛も同じ気持ちなら嬉しい。本当は屋敷が完成してから君を驚かせるつもりだったんだが……。良ければ今度の休みに予定地を見に行かないかい?」
まだ俺は条件を飲んだわけじゃないのに、少尉の中では話がサクサクと進んでいる。
いや、まあ、俺も断らない……というか、断れないけど。
楽しそうに話す少尉の笑顔をずっと見ていたいし、俺だって少尉と一緒に居る時間が増えるのは嬉しい。
提案された条件も良すぎるし、俺から断る理由はない。
「僕はまだまだ衛のことを判っていないようだからね。浮かれて勝手なことをして君を傷つけたくないんだ。協力してくれるかい?」
「……もちろんです」
なんだよ、自分の我儘のためにみたいな言い方をしてるのに、こんな下手にでて、俺に決定権までくれて。
本当に陽真様は格好良すぎてずるい。とても対等になんてなれる気がしない。
「良かった。衛も居心地が良いと思える家になれば僕も嬉しいよ。予定地が気に入らなければ他を探すので、遠慮なく言って欲しい」
「はい、ありがとうございます」
「……お二人とも……そろそろよろしいでしょうか……?」
「っっ!?!?!?」
いつの間にか俺の背後に控えていた四ツ谷さんの声にびっくりして、俺は猫のように思わず飛び上がってしまった。
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