まさか「好き」とは思うまい

和泉臨音

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いつでも「好き」が溢れてる

2.「クリスマスに泊まりでデートしよう」

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 各務くんに「会えなくて寂しい」なんて弱音を見せた後、何故か俺は彼が物凄く可愛く見えるようになった。
 可愛いと言うか、愛おしいと言うか。
 とにかく側にいたいし、隙あらば触りたいし、キスもしたい。もちろんそういった行動が許されている間柄なので、二人の時は俺はちょいちょい各務くんの手を握るしキスもした。といってもほぼ触れるだけのやつだけど。

 そんな俺の行動に各務くんは硬直する。自分から仕掛けてくる時は押せ押せなのに、こちらから攻めるとタジタジだ。そんなところも可愛いなぁと思うが、各務くんからのキスは大体ディープキスで長い。
 求められるのは嬉しいし、気持ちいい。だけどこう、なんていうかそんな一気に気持ちを放出しなくてもいいんじゃないか、なんて思ってしまう。そうすれば俺がキスに苦しくなって、各務くんの背中を叩く必要はなくなると思う。あれは時々生命の危機を感じて力強く叩いちゃうから痛いと思うんだよね。各務くんも分かってると思うのにガバリとくる。まあ、そんな不器用なところも可愛いと思うけど。

 そんな風に接触も増えてくると、先送りにしていた問題が目の前に迫ってくるのを感じた。
 そう、つまりあれだ、キス以上の愛の営みである。

 今まで意識していなかったけど、俺だとて健康な成人男子だ。キスしたい触りたいとなれば、その先だってしたい。
 俺はやっとこの気持ちまでたどり着いたけど、各務くんはずっとこんな気持ちだったんだろうか。それなら結構悪いことをした。いや、今も悪いことをしているのかもしれない。男同士というのは未だに不明点が多いが、各務くんになら情けない姿を見せてもなんだか大丈夫な気がする。
 それに世はまさに恋人たちが浮かれるクリスマスシーズン。これを利用しない手はないだろう。

 俺は思いついたら即行動に移すタイプだ。なので最近では三日に一度はやり取りをするようになったメッセージアプリで、各務くんの予定を聞くことにする。これでよし。今夜にでも泊まりで出かけられる日程を教えてくれるだろう。

 しかし「クリスマスに泊まりでデートしよう」というのは、あまりにも下心が見え過ぎだろうか。

「チーフ、さっきから変な顔してどしたんですか?」

 職場の昼休み。我が社は食堂がないので外に食べに行くか、社内のどこかでお弁当を食べる。会議室などは主に女性陣が使用するので、俺は自分のデスクでお昼を食べることが多かった。各務くんと朝会う時はコンビニでお昼を買って出社しているからだ。誘われれば外にも行くけど、その場合コンビニで買ったものは夕飯になる。

「え、いや、何も別に」
「えー、またまたぁ。彼女のこと考えてたんじゃないですか? 顔ニヤけながら時計触ってましたよ」

 珈琲片手に外食から戻ってきた谷内くんは、席につくとニコニコと声をかけてきた。なんか話だけ聞くと俺がヤバい人みたいだけど、言われてみれば確かに各務くんから貰った腕時計に触れていた。無自覚だった。ちょっと恥ずかしい。

「……谷内くんはクリスマスもやっぱりいつものテーマパークで過ごすの?」

 俺はさり気なく話題を変えることにする。
 もはや俺に恋人がいるのは谷内くんにも槇さんにもバレてはいると思う。腕時計のことも何も言ってないのに察せられているようだが、同性同士の恋愛についてどのような感情があるか分からない相手に気安く話すつもりはない。

「ん? 今年は違いますよ。いや、ほんとあそこは最高なんですけどね! 今の彼女とは何回かクリスマスも行ってるんで、今年は普通に夜景の綺麗なレストランにしようかなと」
「へぇ……」
「あー、でもほんとクリスマスも最高なんで他の日に行きます。クリスマスだといつもとまた雰囲気も全然違って、ほんと夢の中みたいっていうか…――」

 それから午後の仕事が始まるまでどれだけくだんのテーマパークが凄いのかという話を聞くことになった。谷内くんのプレゼンが上手いのか話を聞いていると自然と興味がわいてきたものの、男二人で過ごすには少しハードルが高い気がした。出来れば各務くんとは気兼ねなく二人の時間を楽しみたい。
 そう考えると出かける場所も男二人で居ても気にならない場所の方がいいだろう。

 帰宅中の電車内で。テレビや友人などから聞いたクリスマスデートの情報を思い出しつつ、大好きな各務くんのことを考える。自然と緩む顔の筋肉を引き締めながら、俺はデートプランを練るのだった。
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