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32話 遅れてきた時期領主
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「ディモ。終わったよー。ささっと終わらせたから! ご飯にしよう! ん? おぉ! 店が綺麗になってる。これはディモが片付けたのかい?」
「そうだよ! お姉ちゃんなら一〇分くらいで終わるかなと思って。リカルダさんとアメーリエさんと一緒に頑張ったんだよ。全員やっつけたの?」
森の安らぎ亭にある食堂を片付けていたディモ達の元にヘレーナが戻ってきた。軽い感じで戦闘終了を告げながら入ってきたが、食堂が綺麗になっている事に気付く。そして、ディモの頭を撫でながら確認をしてきた。気持ち良さそうな表情を浮かべながら、されるがままだったディモが笑顔で答えつつヘレーナに確認してきた。
「当然! 一五人程度ならそれほど時間もかからないよ」
「やっぱり凄いね! お姉ちゃんは!」
「えっ? あのアンダース一家が一〇分程度で全滅しちゃったの? ちょっと見てくる!」
「待ちなさい! アメーリエ! 外に出るのは危ないわ! もう、話を聞きなさい!」
胸を張って自慢してくるヘレーナをディモが拍手をしながら褒め称える。その賛辞に照れた表情をしていると、ディモがお返しとばかりにヘレーナの頭を撫で始めた。天にも昇る気分で天使の癒やしを受けているのを尻目に、リカルダが止める間もなくアメーリエは叫びながら表へと飛び出した。
「えっ? な、なにこれ? どういった状況なの?」
「おい! そこの! そう! お前だよ!」
外に出たアメーリエの目に入ってきたのは長い壁であり、そこにユルゲンを始めとするアンダース一家の男達が見事な等間隔で吊されていた。それも逆さま向けた正座状態で。
目の前でなにが起こっているのか理解出来ないアメーリエが呆然としていると、ユルゲンが必死の表情で話し掛けてきた。
「な、なに? 私?」
「そうだ! 早くこの縄を外せ! 悪いようにはしねえ。あいつにはもう逆らわねえ。お前達にも手を出さねえ。本当だ! 神に誓ってもいい!」
「なにを勝手に交渉しようとしてるんだい。駄目に決まってるだろ。これから開いていくんだから」
縄をほどくためにユルゲンに近付こうとしたアメーリエに背後から声がかかる。
「あっ。ヘレーナさん」
「こういった性根の腐った奴は、反省なんてしないんだよ。近付いて縄をほどいたら、あっという間に人質にされる。なあ。そこの……。名前も知らないから別にいいや」
振り返ったアメーリエにヘレーナが説明をする。名前すら覚えてもらえていないユルゲンは真っ赤な顔で睨んでおり、目には敵意に満ち溢れていた。
「へえ。まだ、自分が逆転出来ると思ってるのか。さすがは一家を預かる悪党だね」
「ちっ! それよりも早くも縄を外せよ! 十分に反省しただろが!」
「なにを言ってる? 開くのはこれからだろ?」
「なにをする気なの? お姉ちゃん?」
「宿屋で待ってなと言ったよ? ディモ」
悪態を吐いて反省している様には見えないユルゲンを見て、ヘレーナが嬉しそうに収納していた剣を取り出して軽く振るう。しかし、背後からディモに声を掛けられると、焦ったような表情で慌てて剣を背後に隠した。
「べ、別に腱という腱を全て切断して開いて、その後に回復魔法を中途半端に掛けて二度と動けないようにするとか考えてないよ。微妙に声も出るように声帯も少しだけ残してあげるから。だって、お姉ちゃんは優しいからね!」
「今のが優しいなら、厳しいのは……」
焦った表情で言い訳を始めたヘレーナだったが『開く』内容だったため、周りはドン引きしていた。そして、その内容に思わず厳しいバージョンを聞こうとしたアメーリエに、ヘレーナが軽い感じで答える。
「えっ? アメーリエは聞きたいのかい? 仕方ないね。今回は特別だよ。まずは腹を開くだろ……」
「ストップ! 止めて! ヘレーナさん! それ以上は言っちゃ駄目。さすがのディモ君も引いてるから!」
間違いなく、凄惨な内容になりそうなヘレーナの話しに、アメーリエは慌てて止めるのだった。
◇□◇□◇□
「アメーリエは無事か!」
話しを聞いたマテウスが兵を引き連れてやってきた。その様子はかなり焦った様子であり、揃えられる兵士を総動員して駆けつけたことが伺えた。
「な、なんだこれは? なにがどうなってこうなっている? それに吊されているのはアンダース一家のユルゲンと配下の幹部達か?」
「もう来たのかい? 早いじゃないか? 開く暇も与えないなんて空気の読めない男だね」
「助けてくれ……。頼む。今までの事は全て白状するから……。ぎゃぁぁぁぁ」
「男がかすり傷くらいで悲鳴を上げるなよ。仕方ないね。『我は癒やしを求める。彼の者が負った傷を塞げ』」
クルクルと回されながらヘレーナの斬撃を至近距離で体験しているユルゲンが、恐怖に怯え弱々しく呟きながら助けを求めてきた。あまりにも非現実的な光景にマテウスを始めとする兵士達も唖然としており、ヘレーナの哄笑とユルゲンの悲鳴が響き渡っていた。
「ヘレーナさん? 状況を説明して貰っても?」
「私は忙しいから森の安らぎ亭にいるアメーリエとディモに話を聞きな。但し! 全てをしっかりと説明するんだよ! 中途半端に誤魔化そうとしたら痛い目にあうからね」
ヘレーナの言葉にマテウスは首を傾げながらも、ヘレーナがアンダース一家の者を殺めないよう配下の兵士達に命じ、森の安らぎ亭に入っていくのだった。
「そうだよ! お姉ちゃんなら一〇分くらいで終わるかなと思って。リカルダさんとアメーリエさんと一緒に頑張ったんだよ。全員やっつけたの?」
森の安らぎ亭にある食堂を片付けていたディモ達の元にヘレーナが戻ってきた。軽い感じで戦闘終了を告げながら入ってきたが、食堂が綺麗になっている事に気付く。そして、ディモの頭を撫でながら確認をしてきた。気持ち良さそうな表情を浮かべながら、されるがままだったディモが笑顔で答えつつヘレーナに確認してきた。
「当然! 一五人程度ならそれほど時間もかからないよ」
「やっぱり凄いね! お姉ちゃんは!」
「えっ? あのアンダース一家が一〇分程度で全滅しちゃったの? ちょっと見てくる!」
「待ちなさい! アメーリエ! 外に出るのは危ないわ! もう、話を聞きなさい!」
胸を張って自慢してくるヘレーナをディモが拍手をしながら褒め称える。その賛辞に照れた表情をしていると、ディモがお返しとばかりにヘレーナの頭を撫で始めた。天にも昇る気分で天使の癒やしを受けているのを尻目に、リカルダが止める間もなくアメーリエは叫びながら表へと飛び出した。
「えっ? な、なにこれ? どういった状況なの?」
「おい! そこの! そう! お前だよ!」
外に出たアメーリエの目に入ってきたのは長い壁であり、そこにユルゲンを始めとするアンダース一家の男達が見事な等間隔で吊されていた。それも逆さま向けた正座状態で。
目の前でなにが起こっているのか理解出来ないアメーリエが呆然としていると、ユルゲンが必死の表情で話し掛けてきた。
「な、なに? 私?」
「そうだ! 早くこの縄を外せ! 悪いようにはしねえ。あいつにはもう逆らわねえ。お前達にも手を出さねえ。本当だ! 神に誓ってもいい!」
「なにを勝手に交渉しようとしてるんだい。駄目に決まってるだろ。これから開いていくんだから」
縄をほどくためにユルゲンに近付こうとしたアメーリエに背後から声がかかる。
「あっ。ヘレーナさん」
「こういった性根の腐った奴は、反省なんてしないんだよ。近付いて縄をほどいたら、あっという間に人質にされる。なあ。そこの……。名前も知らないから別にいいや」
振り返ったアメーリエにヘレーナが説明をする。名前すら覚えてもらえていないユルゲンは真っ赤な顔で睨んでおり、目には敵意に満ち溢れていた。
「へえ。まだ、自分が逆転出来ると思ってるのか。さすがは一家を預かる悪党だね」
「ちっ! それよりも早くも縄を外せよ! 十分に反省しただろが!」
「なにを言ってる? 開くのはこれからだろ?」
「なにをする気なの? お姉ちゃん?」
「宿屋で待ってなと言ったよ? ディモ」
悪態を吐いて反省している様には見えないユルゲンを見て、ヘレーナが嬉しそうに収納していた剣を取り出して軽く振るう。しかし、背後からディモに声を掛けられると、焦ったような表情で慌てて剣を背後に隠した。
「べ、別に腱という腱を全て切断して開いて、その後に回復魔法を中途半端に掛けて二度と動けないようにするとか考えてないよ。微妙に声も出るように声帯も少しだけ残してあげるから。だって、お姉ちゃんは優しいからね!」
「今のが優しいなら、厳しいのは……」
焦った表情で言い訳を始めたヘレーナだったが『開く』内容だったため、周りはドン引きしていた。そして、その内容に思わず厳しいバージョンを聞こうとしたアメーリエに、ヘレーナが軽い感じで答える。
「えっ? アメーリエは聞きたいのかい? 仕方ないね。今回は特別だよ。まずは腹を開くだろ……」
「ストップ! 止めて! ヘレーナさん! それ以上は言っちゃ駄目。さすがのディモ君も引いてるから!」
間違いなく、凄惨な内容になりそうなヘレーナの話しに、アメーリエは慌てて止めるのだった。
◇□◇□◇□
「アメーリエは無事か!」
話しを聞いたマテウスが兵を引き連れてやってきた。その様子はかなり焦った様子であり、揃えられる兵士を総動員して駆けつけたことが伺えた。
「な、なんだこれは? なにがどうなってこうなっている? それに吊されているのはアンダース一家のユルゲンと配下の幹部達か?」
「もう来たのかい? 早いじゃないか? 開く暇も与えないなんて空気の読めない男だね」
「助けてくれ……。頼む。今までの事は全て白状するから……。ぎゃぁぁぁぁ」
「男がかすり傷くらいで悲鳴を上げるなよ。仕方ないね。『我は癒やしを求める。彼の者が負った傷を塞げ』」
クルクルと回されながらヘレーナの斬撃を至近距離で体験しているユルゲンが、恐怖に怯え弱々しく呟きながら助けを求めてきた。あまりにも非現実的な光景にマテウスを始めとする兵士達も唖然としており、ヘレーナの哄笑とユルゲンの悲鳴が響き渡っていた。
「ヘレーナさん? 状況を説明して貰っても?」
「私は忙しいから森の安らぎ亭にいるアメーリエとディモに話を聞きな。但し! 全てをしっかりと説明するんだよ! 中途半端に誤魔化そうとしたら痛い目にあうからね」
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