私、どのゲームの悪役令嬢なの?

うっちー(羽智 遊紀)

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プロローグ

朝食で家族が勢ぞろいする

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「お待たせセバスチャン。さあ行きましょうか。ん? マリーナは付いてこなくていいわよ。貴方は自分の仕事をしてきなさいな。ああ、忘れない内に言っとくけど、明日からは貴方は来なくて良いわよ」

「え? あ、あのその……」

「安心しなさい。首にはしないわ」


 着替えが終わった希は、扉の外で待機していたセバスチャンに微笑みながら声をかける。そして自分の後を付いてくるマリーナには、無表情で仕事に戻るようにと伝える。明日から来なくて良いとの言葉に、顔面蒼白になったマリーナだった、首になるのではないと知ると安堵の表情を浮かべた。

「なにを喜んでいるの? 今回だけなのよ。貴方の事を特別に許すのは。次はないわ。汚名返上する気があるのならがむしゃらに働きなさい」

「は、はい。かしこまりました。申し訳ございません。お嬢様の優しさに感謝いたします」

 マリーナはセバスチャンに仕事を押し付けた事を反省しているようで、青白い顔をしたままフラフラと去っていく。そんなマリーナの様子を見て軽くため息を吐いているユーファネートに、セバスチャンは自分は期待に添えるように頑張ろうと気合いを入れ直していた。

「あのユーファネート様。食堂に向かいませんと」

 気合いを入れ直したセバスチャンがマリーナが角を曲がるまで見送っているユーファネートの行動を疑問に思いつつ、じっとしてるユーファネートに話し掛けてきた。まさかユーファネートの記憶がないから、家の間取りなんて分からないと言えない希は、マリーナが向かった方向に急ぎ歩こうとする。

「わ、分かっているわ。さあ行くわよセバスチャン」

「あ、あの。そちらは逆方向です!」

「し、知ってるわよ。ちょっとセバスチャンを試しただけなのよ」

 希は何度も間違いながらも、なんとか食堂にたどり着いた。侯爵家の屋敷は部屋数が多く別邸もあるようで、扉や階段の多さに、食後に自室に戻れる自信は全くなかった。なんとか食堂にたどり着いたけど、これは本格的にまずいわね。後で見取り図を描かないと完全に迷子だわ。などと小さく呟きながら食堂に入った希は感嘆の声を小さくだす。

「すごい……。まさに貴族の豪華さね」

「おはようユーファネート。気分はどうだい? 熱は引いたかな?」

「おはようございます。お父様お母様。昨日はユックリと休みましたので大丈夫です」

 食堂に入った希が豪華絢爛な内装を見て小さくため息を吐く。そして不自然にならないように周囲を観察していると、父親であるアルベリヒが心配そうにしつつ朝の挨拶をしてきた。その隣には同じように心配している母親のマルグレートもいた。そんな両親に問題ない事を伝えた希に、悪意ある言葉が耳に入る。

「ユーファネートが朝の挨拶をした? 悪い物でも食べたんじゃないのか? だいたい熱を出したくらいで大げさだぞ。好き嫌いが多くて偏食ばかりするから体調を崩すんだ」

 心配している両親の近くに座っていた13才くらいの少年が声を掛けてきた。どこかで見た事のある顔だな。と希が思いながら少年を眺めていると、反応がない事に機嫌を損ねた顔になった少年が口を尖らせる。

「いつものように悪態をつかないのか?」

「こらギュンター 。ユーファネートは丸一日高熱で寝ていたのだぞ。もっと優しくしなさい」

「そうよ。それに女の子は少し儚げの方が可愛らしいのよ」

◇□◇□◇□

新しい情報が追加されました
ギュンター ・ライネワルト

ユーファネート・ライネワルトの兄であり、次期侯爵です。雷獅子と呼ばれるほどの雷魔法の使い手であり、帝国からは一騎当千の若武者と恐れられています。また性格も苛烈であり、学院では上級生や先生であったとしても、自分が正しいと思ったことは筋を曲げない頑固な一面も。彼は貴方と出会った事で優しさを理解し、そして人との接し方を学びます。そんな彼の庇護に入れば、苛烈ながも優しい笑顔を見ることが出来るでしょう。

◇□◇□◇□

「雷獅子ギュンター?」

「え? 雷獅子ってなんだ?」

 希の言葉にギュンターが不思議そうな顔をする。まだ13才のギュンターは適性を調べておらず、ゲーム情報だと15才の時に神殿で雷属性と選定され、そこから剣技と雷属性を合わせた戦いをする事で雷獅子と呼ばれるようになる。

「い、いえ、お兄様の姿を見たら、なぜかその言葉が出てきました」

「……。なんだよ調子が狂うな。早く元気になれ。肉食えよ!」

「それにしても雷獅子か。ギュンターに似合う言葉だな。まあ15才の属性判断で分かる事だが」

 妹であるユーファネートの普段とは違う様子に困惑した表情を浮かべていたギュンターだったが、雷獅子と呼ばれた事に機嫌を良くしながら食事を始める。かなりの健啖家らしく、朝食にもかかわらず肉を中心とした食事を何度もお代わりしながら食べていた。

「可愛い」

「は? なに言ってるんだ? お前、本当におかしいぞ? 今日は出された朝食を全部食べてるしな」

 希の年齢からすれば弟と言っても良いくらいの年齢の子が一所懸命に食事をしているのは見ていて楽しかった。マナーなどは覚えていなかったが、どうやらユーファネートの身体が覚えているらしく、苦になる事なく朝食を終える事が出来た。

 ただ、ギュンターは肉を頬張りながらも、優雅に朝食をしている希に疑惑の視線を向けるのだった。
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