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王子様との出会い
王子はユーファネートの変化に満足する
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「……。なるほどね。色々と考えているんだねユーファネート嬢」
「ええ! その通りですわ。今後の予定としては、お父様とお母様の協力の下で薔薇を乾燥させ薔薇風呂や薬草風呂などを作り、先ほどのお菓子が食べられる女性貴族向けの美容を中心としたリゾートスパ計画がありますわ! 薔薇はお父様が私の為にと増産されたのを利用します。今まで不良品として処分していたのが活用出来ますわ。それと建物は、王都にある侯爵家別邸の一つを使います。今まで利用頻度も少なかったのでリフォームが必要ですが、開業するまでには間に合うかと」
「なるほど今まで使わなかった物を有効活用ね。新しく使わない発想は素晴らしいね。その他にもなにか考えているのかい?」
「もちろんですわ殿下。ライネワルト侯爵領では、これから落花生を大量生産し、飢饉に備えた困窮食として確保します。そもそも落花生は乾燥させれば長持ちしますし、翌年の種植えにも利用出来ます。過剰になればバターピーナッツなどの加工品として庶民向けや、殿下も気に入って頂いた男性貴族向けのお菓子として販売予定ですわ」
希は自分の隣に座っているレオンハルトに説明を続けていた。ただでさえレオンハルトの生姿が視線に入るごとに、希の心はテンション高く沸きだっている状態であった。さらにはレオンハルトとの距離も肩が触れ合うレベルであり、そして微笑みながら話を聞いて感心したように頷いてくれる。そして時折質問を挟み、返答をするごとに発想力の豊かさを賞賛するなど、様々な表情をレオンハルトは見せてくれていた。
(なに? 今日は私の命日になるの? レオンハルト様が目と鼻の先にいるのよ。スチル絵を得れるゴールデンタイムなの? 撮るわよ。心の中で写真を撮るわよ。ふぉぉぉ)
心の中で作成しているレオンハルトギャラリーが火を噴きそうなほど、レオンハルトの表情をつぶさに記憶し保存していく希。そろそろ表情ごとにフォルダーを分けた方が分りやすいかな? などと贅沢な悩みを抱えながらレオンハルトと会話を楽しんでいる希を、兄であるギュンターは面白くなそうに見ていた。
「おいレオン。少しユーファに近付きすぎじゃないか?」
「そうかな? それほど近付いているつもりはなかったのだが、ユーファネート嬢の話を聞いている間に近付き過ぎたようだね。嫌がられているのなら離れた方が――」
妹を取られそうで渋い顔をしているギュンターを珍しそうに見たレオンハルトだったが、確かにユーファネートとの距離が近いと理解したようで、少し距離を取ろうとする。そんなレオンハルトの動きに、希は「ガシッ」と擬音が聞こえそうな勢いでレオンハルトの袖を掴むと食い気味に答えた。
「嫌なわけがありませんわ! むしろもっと近付いていただいてもいいくらいです!」
「ふふっ。ギュンターどうしようか? ギュンターが『離れて下さい』とお願いするなら離れるけど?」
「おまっ! からかっているだけだろう!」
クスクスと笑いながらギュンターに視線を向けるレオンハルト。ようやくからかわれている事が分ったギュンターは舌打ちしそうな顔になると、セバスチャンに紅茶のお代わりを頼みながら小さい声で確認する。
「おいセバスチャン。ユーファがレオンに取られそうになっているぞ。お前はいいのかよ?」
「あれほど嬉しそうな顔をされているユーファネート様は初めて見ます。あのような顔を見られるは私は幸せ者です。嬉しい気持ちだけですので問題ありません。なにか問題が? それとギュンター様。紅茶は淹れますが、お菓子は追加は必要でしょうか?」
「いらない。……。おいユーファ。ちょっとセバスチャンを借りるぞ」
「なにかするのかい?」
「ん? レオンは気にしないでいい。ちょっと紅茶の葉を取りに行くだけだ。その間にユックリとユーファと喋っててくれ」
軽い感じで答えたギュンターがセバスチャンを連れて行こうとする。焦ったのはセバスチャンである。ユーファネートの執事として、また当主のアルベリヒから「任せた」と言われているのである。この場から簡単に離れるわけにはいかないと思い、紅茶の葉は残っていて問題ないと伝えようとしたが、その前に希から声を掛けられる。
「行ってきて良いわよセバスチャン。その間は殿下とお話をしてます。お兄様と茶葉を取ってきなさい。ついで……じゃなかった。あと、お父様とお母様を呼んできてちょうだい。そろそろお茶会の時間は終了でしょ? 残念だけど、本当に残念だけど殿下にご迷惑は掛けられないわ」
心の底から残念そうな顔をしているユーファネートを見て、セバスチャンは少しでも敬愛する主人が楽しい時間を過ごせるようにと気持ちを切り替え、ギュンターと共に席を外す。希は二人を見送るとレオンハルトに向き合いながら、改めてその美しさ、尊さ、愛おしさ、凜々しさ、全てを感じ取ろうとしていた。
「どうかしたのかい? ユーファネート嬢。あまり見続けられると、さすがに恥ずかしいかな。ところで相談なのだが……先ほど聞かせてもらった君の話に、僕も参加したいのだが構わないのだろうか?」
自分を凝視し続けているユーファネートに黙って付き合っていたレオンハルトだったが、あまりにもその時間が続いており、さすがに苦笑いしながら問い掛けてきた。
「え? 殿下もリゾートスパ計画に参加されるのですが?」
「いや、そっちではなくて困窮食としての落花生増産の方だよ。さすがに僕は美容には興味はないからね。母上なら興味津々だろうけど」
「殿下が興味を持って下さるのは嬉しい限りですし、私としては喜んでお願いしたいのですが、王族が特定の貴族の事業に肩入れするのは、周囲になにか言われませんか?」
「それは特に問題ないよ。まあでも、あまり五月蠅いなら偽名で参加させてもらうよ。第一、子供のする事に口を出すやつがいれば、それはそれで今後が分りやすくて良いよね」
レオンハルトから自分達が推し進めている事業に、まさか偽名まで使って参加表明をしてくれるとは希は思っておらず、一瞬大喜びをしていたが王子としての立場を考えて確認したが、レオンハルトから問題ないと伝えられる。
「それに君と事業が一緒に出来るなら、何度でも遊びに来れるからね。それと僕の事は殿下ではなく『レオン』と呼んで欲しい」
「え?」
爽やかな笑顔でユーファネートの手を握りながら耳元で伝えてきたレオンハルトに、希はときめきで目がくらみそうになる。目の前のレオンハルト様はなんと言ったの? え? まさか愛称で呼んで良いの? なにこれ夢なの? 色々な思いがグルグルと頭を駆け巡っている希だったが、このチャンスを逃すものかと顔を真っ赤にさせながら小さく呟いた。
「はい。レオン様」
「よろしくねユーファ」
真っ赤な顔で恥ずかしそうにしながら自分の名前を呼んだユーファネートに、レオンハルトは満足げに頷きつつ、自らもユーファネートの愛称を呼ぶのだった。
「ええ! その通りですわ。今後の予定としては、お父様とお母様の協力の下で薔薇を乾燥させ薔薇風呂や薬草風呂などを作り、先ほどのお菓子が食べられる女性貴族向けの美容を中心としたリゾートスパ計画がありますわ! 薔薇はお父様が私の為にと増産されたのを利用します。今まで不良品として処分していたのが活用出来ますわ。それと建物は、王都にある侯爵家別邸の一つを使います。今まで利用頻度も少なかったのでリフォームが必要ですが、開業するまでには間に合うかと」
「なるほど今まで使わなかった物を有効活用ね。新しく使わない発想は素晴らしいね。その他にもなにか考えているのかい?」
「もちろんですわ殿下。ライネワルト侯爵領では、これから落花生を大量生産し、飢饉に備えた困窮食として確保します。そもそも落花生は乾燥させれば長持ちしますし、翌年の種植えにも利用出来ます。過剰になればバターピーナッツなどの加工品として庶民向けや、殿下も気に入って頂いた男性貴族向けのお菓子として販売予定ですわ」
希は自分の隣に座っているレオンハルトに説明を続けていた。ただでさえレオンハルトの生姿が視線に入るごとに、希の心はテンション高く沸きだっている状態であった。さらにはレオンハルトとの距離も肩が触れ合うレベルであり、そして微笑みながら話を聞いて感心したように頷いてくれる。そして時折質問を挟み、返答をするごとに発想力の豊かさを賞賛するなど、様々な表情をレオンハルトは見せてくれていた。
(なに? 今日は私の命日になるの? レオンハルト様が目と鼻の先にいるのよ。スチル絵を得れるゴールデンタイムなの? 撮るわよ。心の中で写真を撮るわよ。ふぉぉぉ)
心の中で作成しているレオンハルトギャラリーが火を噴きそうなほど、レオンハルトの表情をつぶさに記憶し保存していく希。そろそろ表情ごとにフォルダーを分けた方が分りやすいかな? などと贅沢な悩みを抱えながらレオンハルトと会話を楽しんでいる希を、兄であるギュンターは面白くなそうに見ていた。
「おいレオン。少しユーファに近付きすぎじゃないか?」
「そうかな? それほど近付いているつもりはなかったのだが、ユーファネート嬢の話を聞いている間に近付き過ぎたようだね。嫌がられているのなら離れた方が――」
妹を取られそうで渋い顔をしているギュンターを珍しそうに見たレオンハルトだったが、確かにユーファネートとの距離が近いと理解したようで、少し距離を取ろうとする。そんなレオンハルトの動きに、希は「ガシッ」と擬音が聞こえそうな勢いでレオンハルトの袖を掴むと食い気味に答えた。
「嫌なわけがありませんわ! むしろもっと近付いていただいてもいいくらいです!」
「ふふっ。ギュンターどうしようか? ギュンターが『離れて下さい』とお願いするなら離れるけど?」
「おまっ! からかっているだけだろう!」
クスクスと笑いながらギュンターに視線を向けるレオンハルト。ようやくからかわれている事が分ったギュンターは舌打ちしそうな顔になると、セバスチャンに紅茶のお代わりを頼みながら小さい声で確認する。
「おいセバスチャン。ユーファがレオンに取られそうになっているぞ。お前はいいのかよ?」
「あれほど嬉しそうな顔をされているユーファネート様は初めて見ます。あのような顔を見られるは私は幸せ者です。嬉しい気持ちだけですので問題ありません。なにか問題が? それとギュンター様。紅茶は淹れますが、お菓子は追加は必要でしょうか?」
「いらない。……。おいユーファ。ちょっとセバスチャンを借りるぞ」
「なにかするのかい?」
「ん? レオンは気にしないでいい。ちょっと紅茶の葉を取りに行くだけだ。その間にユックリとユーファと喋っててくれ」
軽い感じで答えたギュンターがセバスチャンを連れて行こうとする。焦ったのはセバスチャンである。ユーファネートの執事として、また当主のアルベリヒから「任せた」と言われているのである。この場から簡単に離れるわけにはいかないと思い、紅茶の葉は残っていて問題ないと伝えようとしたが、その前に希から声を掛けられる。
「行ってきて良いわよセバスチャン。その間は殿下とお話をしてます。お兄様と茶葉を取ってきなさい。ついで……じゃなかった。あと、お父様とお母様を呼んできてちょうだい。そろそろお茶会の時間は終了でしょ? 残念だけど、本当に残念だけど殿下にご迷惑は掛けられないわ」
心の底から残念そうな顔をしているユーファネートを見て、セバスチャンは少しでも敬愛する主人が楽しい時間を過ごせるようにと気持ちを切り替え、ギュンターと共に席を外す。希は二人を見送るとレオンハルトに向き合いながら、改めてその美しさ、尊さ、愛おしさ、凜々しさ、全てを感じ取ろうとしていた。
「どうかしたのかい? ユーファネート嬢。あまり見続けられると、さすがに恥ずかしいかな。ところで相談なのだが……先ほど聞かせてもらった君の話に、僕も参加したいのだが構わないのだろうか?」
自分を凝視し続けているユーファネートに黙って付き合っていたレオンハルトだったが、あまりにもその時間が続いており、さすがに苦笑いしながら問い掛けてきた。
「え? 殿下もリゾートスパ計画に参加されるのですが?」
「いや、そっちではなくて困窮食としての落花生増産の方だよ。さすがに僕は美容には興味はないからね。母上なら興味津々だろうけど」
「殿下が興味を持って下さるのは嬉しい限りですし、私としては喜んでお願いしたいのですが、王族が特定の貴族の事業に肩入れするのは、周囲になにか言われませんか?」
「それは特に問題ないよ。まあでも、あまり五月蠅いなら偽名で参加させてもらうよ。第一、子供のする事に口を出すやつがいれば、それはそれで今後が分りやすくて良いよね」
レオンハルトから自分達が推し進めている事業に、まさか偽名まで使って参加表明をしてくれるとは希は思っておらず、一瞬大喜びをしていたが王子としての立場を考えて確認したが、レオンハルトから問題ないと伝えられる。
「それに君と事業が一緒に出来るなら、何度でも遊びに来れるからね。それと僕の事は殿下ではなく『レオン』と呼んで欲しい」
「え?」
爽やかな笑顔でユーファネートの手を握りながら耳元で伝えてきたレオンハルトに、希はときめきで目がくらみそうになる。目の前のレオンハルト様はなんと言ったの? え? まさか愛称で呼んで良いの? なにこれ夢なの? 色々な思いがグルグルと頭を駆け巡っている希だったが、このチャンスを逃すものかと顔を真っ赤にさせながら小さく呟いた。
「はい。レオン様」
「よろしくねユーファ」
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