18 / 36
王子様との出会い
そして色々となにかが決まった。
しおりを挟む
「やあ、ユーファネート。子供達だけのお茶会はどうだったかな? 楽しめたかい? 殿下とは仲良くなれたかな?」
セバスチャンに連れられ、アルベリヒとマルグレートがやってきた。開口一番にアルベリヒから希に質問が飛んできた。それに答える前にギュンターの姿も見えたが、面白くなさそうな顔をしてレオンハルトとユーファネートを見ており、そんな兄の様子に希は首を傾げつつも父親に向かって花咲いた笑顔で答えた。
「はい! レオン様と仲良くなれました。夢のようなひとときでした」
「お、おい。ユーファネート。殿下への呼びかけかた――」
「気にしないで欲しい侯爵。私がユーファに『レオンと呼んで欲しい』とお願いしたのだよ」
「あらあらまあまあ。愛称で呼ばせてもらえるなんて。それにお互いに愛称で呼び合う仲にまでなったのね」
ユーファネートの返事にアルベリヒは驚きながら確認し、レオンハルトの返事を聞いたマルグレートは微笑ましそうに2人を見る。そんなレオンハルトの発言を聞いたギュンターが怒りの声を上げた。
「なっ! レオン……ハルト殿下。ユーファを愛称で呼ぶなんて、なにを考えているのですか!?」
「気にするような事かい? ギュンターもユーファと呼んでるじゃないか?」
「俺は兄だからいいんだ……ですよ! もうなにも言いません」
「ごめんごめん」
ギュンターの反応を楽しそうに見つつレオンハルトが答える。からかわれている事に気付いたギュンターは、大きく深呼吸をすると無表情となった。これ以上は反応しないとの強い意思表示をしているギュンターに、レオンハルトは苦笑しながら謝罪すると、改めてユーファネートに向かって手を差し出した。
「これからもよろしくね。ユーファ」
「こちらこそ! よろしくお願いしますレオン様!」
笑顔のレオンハルトを見て、希も笑顔を返しながら握手だと思い何も考えずに手を差し出す。そして、レオンハルトが取った行動に、レオンハルト以外の者達は驚愕した。レオンハルトがユーファネートの手を取ると、そのまま跪いて手の甲に唇を落としたのである。
「なっ!」「まあ」「おい!」「……」
「……。にゃぁぁぁぉぁ!」
思わず硬直するアルベリヒ、扇を口元に当てて驚いた表情を浮かべるマルグレート。青筋を立てて怒りを露わにするギュンター。大きく口を開けて目を丸くするセバスチャン。そして希は、目の前で行われているレオンハルトの行動に反応出来ず、呆然としながら他人事のように眺める。自分の手の甲に触れている柔らかい感触。そしてそれがレオンハルトの唇だと気付く。全てを理解した希は、許容量を超えたのか全身を真っ赤にさせ大声で叫ぶと、そのまま意識を手放した。
◇□◇□◇□
「……殿下。先ほどの行動は『そうである』と、ライネワルト侯爵家として理解しますがよろしいでしょうな? 当人は喜びますでしょうし、そうなるのは侯爵として期待していたのは事実ですが、親の心境としては複雑だとご理解下さい」
「もちろんだとも。当然、私もそのつもりで行動したよ。こんな事を誰にでもするわけがない。様々な令嬢達と会ってきたけど、これほど気分が高揚したのは今日が初めてだった。彼女こそが僕が求め続けた女性だと確信したよ。僕は導かれた運命に抗う事なく受け入れるよ」
どこか遠くから聞こえてくる声に、希は「君☆(きみほし)」で聞いた事がある台詞だと思い出し小さく微笑む。そして徐々に近付いてくるように感じている声は、まだまだ会話を続けるようであった。
「分かりましたわ。殿下がそこまでユーファネートに心を捧げて下さるのでしたら、私達からはなにも言いません」
「ですが、いきなり登城させて王妃教育を始めるのは止めて頂きたい。下地となる教育は侯爵家の名において行います。それと学院を卒業するまでは、手を出すのを許しません」
母親であるマルグレートと、父親のアルベリヒの声が聞こえてきた。王妃教育? 学院を卒業するまで? なんの話をしているのだろう。興味を引かれた希が耳を澄ませていると、兄のギュンターが怒りの声を上げていた。
「俺は認めないかなら!」
「そんな事を言うなよギュンター義兄さん」
「誰が義兄だ! やめろ! 俺はユーファとレオンとの結婚なんて認めないからな! ユーファは俺と領地経営をこれからするんだ」
誰かがお兄様の弟になるのね。夢見心地の希がぽやっとした気分のまま、行われている会話に耳を傾けていた。どうやらユーファネートとレオンハルトが婚姻を結ぶ事で、ギュンターが兄になるらしい。それを全力でギュンターが嫌がっているようであった。
(いいじゃない。ユーファネートとレオンハルト様が結婚したら、私も家族の一員になるのでしょ。それならおはようからからお休みまでレオンハルト様と一緒にいれて、その姿を愛で続けられるじゃ……ユーファネート?)
「それって私の事じゃない!」
兄はなにをそんなに嫌がっているのかと、意識を覚醒させつつ話を聞いていた希だったが、なぜ自分が寝ているのかを思い出し、そして手の甲に付けられた唇の温かさ。眼下に広がった金髪と一房の赤髪。そして見上げて微笑む姿。そのレオンハルトとのやり取りを全てを思い出し希は飛び起きた。
「ああ、起きたようだねユーファ。目覚めはどうだい?」
「は、はい。最高です! いや違った。先ほどは失礼いたしました」
心配そうにしながらも微笑んでいるレオンハルトに、希はレアスチルを見ているような気分になりながらも謝罪する。そんな娘の態度に父親は難しい顔をしており、母親は誇らしそうにしており、兄は厳しい顔をしていた。
「今日はこれで失礼するけど、また定期的に来させてもらうよ。それと後ほど王宮から手紙を送るからね。返事はくれるよねユーファ?」
「もちろんですわ! レオン様からのお手紙は家宝にしますわ! それと、この右手の甲も永久保存にして洗わずに大事にします!」
「い、いや。そこまではいいかな。……。ユーファ? 本当に家宝にする気でしょ? 駄目だからね。それと右手も間違いなく洗うんだよ。いや、今から洗ってきなさい」
目を輝かせながら答えた希だったが、レオンハルトからは若干引き気味に釘を刺されるのだった。
セバスチャンに連れられ、アルベリヒとマルグレートがやってきた。開口一番にアルベリヒから希に質問が飛んできた。それに答える前にギュンターの姿も見えたが、面白くなさそうな顔をしてレオンハルトとユーファネートを見ており、そんな兄の様子に希は首を傾げつつも父親に向かって花咲いた笑顔で答えた。
「はい! レオン様と仲良くなれました。夢のようなひとときでした」
「お、おい。ユーファネート。殿下への呼びかけかた――」
「気にしないで欲しい侯爵。私がユーファに『レオンと呼んで欲しい』とお願いしたのだよ」
「あらあらまあまあ。愛称で呼ばせてもらえるなんて。それにお互いに愛称で呼び合う仲にまでなったのね」
ユーファネートの返事にアルベリヒは驚きながら確認し、レオンハルトの返事を聞いたマルグレートは微笑ましそうに2人を見る。そんなレオンハルトの発言を聞いたギュンターが怒りの声を上げた。
「なっ! レオン……ハルト殿下。ユーファを愛称で呼ぶなんて、なにを考えているのですか!?」
「気にするような事かい? ギュンターもユーファと呼んでるじゃないか?」
「俺は兄だからいいんだ……ですよ! もうなにも言いません」
「ごめんごめん」
ギュンターの反応を楽しそうに見つつレオンハルトが答える。からかわれている事に気付いたギュンターは、大きく深呼吸をすると無表情となった。これ以上は反応しないとの強い意思表示をしているギュンターに、レオンハルトは苦笑しながら謝罪すると、改めてユーファネートに向かって手を差し出した。
「これからもよろしくね。ユーファ」
「こちらこそ! よろしくお願いしますレオン様!」
笑顔のレオンハルトを見て、希も笑顔を返しながら握手だと思い何も考えずに手を差し出す。そして、レオンハルトが取った行動に、レオンハルト以外の者達は驚愕した。レオンハルトがユーファネートの手を取ると、そのまま跪いて手の甲に唇を落としたのである。
「なっ!」「まあ」「おい!」「……」
「……。にゃぁぁぁぉぁ!」
思わず硬直するアルベリヒ、扇を口元に当てて驚いた表情を浮かべるマルグレート。青筋を立てて怒りを露わにするギュンター。大きく口を開けて目を丸くするセバスチャン。そして希は、目の前で行われているレオンハルトの行動に反応出来ず、呆然としながら他人事のように眺める。自分の手の甲に触れている柔らかい感触。そしてそれがレオンハルトの唇だと気付く。全てを理解した希は、許容量を超えたのか全身を真っ赤にさせ大声で叫ぶと、そのまま意識を手放した。
◇□◇□◇□
「……殿下。先ほどの行動は『そうである』と、ライネワルト侯爵家として理解しますがよろしいでしょうな? 当人は喜びますでしょうし、そうなるのは侯爵として期待していたのは事実ですが、親の心境としては複雑だとご理解下さい」
「もちろんだとも。当然、私もそのつもりで行動したよ。こんな事を誰にでもするわけがない。様々な令嬢達と会ってきたけど、これほど気分が高揚したのは今日が初めてだった。彼女こそが僕が求め続けた女性だと確信したよ。僕は導かれた運命に抗う事なく受け入れるよ」
どこか遠くから聞こえてくる声に、希は「君☆(きみほし)」で聞いた事がある台詞だと思い出し小さく微笑む。そして徐々に近付いてくるように感じている声は、まだまだ会話を続けるようであった。
「分かりましたわ。殿下がそこまでユーファネートに心を捧げて下さるのでしたら、私達からはなにも言いません」
「ですが、いきなり登城させて王妃教育を始めるのは止めて頂きたい。下地となる教育は侯爵家の名において行います。それと学院を卒業するまでは、手を出すのを許しません」
母親であるマルグレートと、父親のアルベリヒの声が聞こえてきた。王妃教育? 学院を卒業するまで? なんの話をしているのだろう。興味を引かれた希が耳を澄ませていると、兄のギュンターが怒りの声を上げていた。
「俺は認めないかなら!」
「そんな事を言うなよギュンター義兄さん」
「誰が義兄だ! やめろ! 俺はユーファとレオンとの結婚なんて認めないからな! ユーファは俺と領地経営をこれからするんだ」
誰かがお兄様の弟になるのね。夢見心地の希がぽやっとした気分のまま、行われている会話に耳を傾けていた。どうやらユーファネートとレオンハルトが婚姻を結ぶ事で、ギュンターが兄になるらしい。それを全力でギュンターが嫌がっているようであった。
(いいじゃない。ユーファネートとレオンハルト様が結婚したら、私も家族の一員になるのでしょ。それならおはようからからお休みまでレオンハルト様と一緒にいれて、その姿を愛で続けられるじゃ……ユーファネート?)
「それって私の事じゃない!」
兄はなにをそんなに嫌がっているのかと、意識を覚醒させつつ話を聞いていた希だったが、なぜ自分が寝ているのかを思い出し、そして手の甲に付けられた唇の温かさ。眼下に広がった金髪と一房の赤髪。そして見上げて微笑む姿。そのレオンハルトとのやり取りを全てを思い出し希は飛び起きた。
「ああ、起きたようだねユーファ。目覚めはどうだい?」
「は、はい。最高です! いや違った。先ほどは失礼いたしました」
心配そうにしながらも微笑んでいるレオンハルトに、希はレアスチルを見ているような気分になりながらも謝罪する。そんな娘の態度に父親は難しい顔をしており、母親は誇らしそうにしており、兄は厳しい顔をしていた。
「今日はこれで失礼するけど、また定期的に来させてもらうよ。それと後ほど王宮から手紙を送るからね。返事はくれるよねユーファ?」
「もちろんですわ! レオン様からのお手紙は家宝にしますわ! それと、この右手の甲も永久保存にして洗わずに大事にします!」
「い、いや。そこまではいいかな。……。ユーファ? 本当に家宝にする気でしょ? 駄目だからね。それと右手も間違いなく洗うんだよ。いや、今から洗ってきなさい」
目を輝かせながら答えた希だったが、レオンハルトからは若干引き気味に釘を刺されるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい
鍋
恋愛
王太子の婚約者として、常に控えめに振る舞ってきたロッテルマリア。
尽くしていたにも関わらず、悪役令嬢として婚約者破棄、国外追放の憂き目に合う。
でも、実は転生者であるロッテルマリアはチートな魔法を武器に、ギルドに登録して旅に出掛けた。
新米冒険者として日々奮闘中。
のんびり冒険をしていたいのに、ヒロインは私を逃がしてくれない。
自身の目的のためにロッテルマリアを狙ってくる。
王太子はあげるから、私をほっといて~
(旧)悪役令嬢は年下Sランク冒険者の弟子になるを手直ししました。
26話で完結
後日談も書いてます。
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる