自腹取材と言い張り、奥さんと伏見稲荷大社へデートしてきた話

うっちー(羽智 遊紀)

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中編

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「稲荷せんべいのお店!」

「今買ったら荷物になるから帰りやねー」

 狐のお面のせんべいとか、おみくじ付きのせんべいが良い感じなんですよ。私の叫びに奥さんが軽く止めに入ります。仕方ありません。脳内メモに子供達へのお土産候補として書き込んで伏見稲荷大社に向かいます。

 大社へ向かうまでにもお店がたくさんです。フルーツを使ったジュース屋さんでは、唐揚げや牛ロース串を一緒に販売しております。ビールも一緒に販売しており商売上手です。


  そしてキョロキョロしながら歩いていると、お箸屋さんを発見しました。かなり本格的なお店で、材料も様々であり、また職人さんの名前が書かれている箸は入荷待ちで品切れになるほど人気でした。個人的には伏見稲荷限定の箸の持ち手側に狐が描かれているのが欲しかったです。

 そしてお箸屋さんを出て目の前にある伏見稲荷大社を見上げます。

 ……。と私の記憶ではそうなっていたのですが、後で写真を印刷すると、お箸屋さんの後にも屋台街を抜けていました。こういった記憶違いや思い込みを修正出来るので写真はいいですね。臨場感は直接見た方が間違いなく良いのですが、思い返すためにも写真は必須だと思いました。

 ちなみに写真を見て「すずめの焼鳥」が異彩を放ってましたね。隣には「ウズラの焼鳥」も並んでいたのですが、幼い頃に伏見稲荷大社に来た事のある奥さん曰く、「すずめの焼鳥」の数が少ないとの事でした。

 それ以外にもお面や八つ橋、神棚に賽銭箱もあります。え? 賽銭箱? 結構な大きさですよ? ミカン箱を超えの大きさがあります。誰が買うんだろう?

「今日は気分もいいから賽銭箱でも買っちゃおうかなー」

「ちょっと、こちらを配達して頂けるかしら?」

 などと富豪達が繰り広げるのでしょうか? そんな妄想が捗る中、屋台街を見た記憶も復活していきます。威勢のいい声で呼び込みをしている兄さんや、結構強引な口調で客を引き込もうとしているおっちゃん。可愛らしい声で呼び込みをしているお姉さん。ポーズを決めながら販売している若い人などがいました。

 皆さん観光客相手に必死です。対する観光客は外国人や学生、カップルで、おっちゃんの勢いに飲まれて購入する学生。ポーズを決めた若い人に拍手をしている外国人。冷静に断りを入れている女性。

 ちなみに私はプリンアイスが気になりました。残念ながら、これから登山レベルの参拝をするので諦めましたが。「帰りには!」と思っておりましたが、お昼ご飯を食べる事を考えると無理でした。またの機会にチャレンジをしたいですね。

 そして屋台街をすり抜けた私と奥さんは楼門ろうもんに到着です。やっとです。4000文字近くを費やして伏見稲荷大社の入り口に到着です。観光客が多くて辟易するかなと思いましたが、流れ自体は悪くありません。フラフラと楼門に向かおうとすると、奥さんに袖を掴まれます。なに? ここで久しぶりの恋人みたいな動作! 普段は絶対にそういった恋人所作をしない奥さんが大胆!

「手水舎に行くのを忘れてるよ?」

 はい、違ったー。私の勘違いー。内心で1人悶えつつ手水舎に向かうと作法を必死に思い出します。……。うん。ちゃんと書いてある。やり方が書いてあります! 1人でワタワタしているとふと思います。これって作品の参考になる!

 主人公の女性と妖狐の掛け合いが良いかもしれません。

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「そのまま楼門に入る気か? それはさすがに神への不敬じゃろ」
「え? ごめんごめん! 手水舎で清めずに入るなんてダメだよね」
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 うん。こんな感じだな。忘れないように紳士手帳に書き込みます。「手水舎で手を洗い忘れる」……。こんなメモで大丈夫だろうか? と、その時は思いましたが、このエッセイを書いている時に色々と思い出せていますので役には立っているようです。

 走り書きでもメモ大事。

 お上りさんのようにキョロキョロと眺めていると東丸神社が目に入ります。ひょっとして皆さん。「ひがしまるじんじゃ」と読みましたか? 実は「あずままろじんじゃ」なのです。江戸時代の国学者で、国学四大人の一人、荷田春満かだ の あずままろが祀られている神社です。合格祈願と書かれており、受験生が多く訪れる神社です。

 資料によると、伏見稲荷大社の境内にあるので同じ神社かと思いきや、れっきとした独立した別の神社だそうです。この辺りも話しに使えそうですよね。

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「ひがしまるじんじゃってのがあるんだね。今度、資格を受けるからお祈りしようかな?」
「お主。本当になにも知らんの。この神社は「あずままろじんじゃ」じゃ。全く別の神社じゃぞ?」
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 こんな感じかな? それよりも数年後には子供達が受験を迎えます。それに合わせてもう一度は訪れましょう。そんな事を奥さんと話しながら周辺を散策して本殿に向かいます。並んでいる人も少なく、すぐに順番が来ます。

 私は神様にお祈りで二礼にれい二拍手にはくしゅ一礼いちれいの後にお祈りする際は、「○○を叶えてください」ではなく「○○を叶えるために頑張りますので応援よろしくお願いします」とお祈りしています。

 私は神社でお祈りする時はこのやり方にしておりますが、神様から応援してもらった効果でホワイト企業に転職でき、処女作を書籍化する事ができました(あくまでも個人的な感想)。

『願いを叶えよ!』

 よりも、

『頑張るから応援お願いします!』

 こちらの方が神様も「よし! 応援しちゃろう!」となるのではないでしょうか? (くどいようですが、個人的な感想です)そして今回も効果がありました。別の作品ですが書籍化されました(『魔物をお手入れしたら懐かれました -もふプニ大好き異世界スローライフ-』アルファポリスから好評発売中)。

「これからも作家として書籍化を続けていけるように頑張りますので応援よろしくお願いします!」

こんな感じでお祈りをしました。奥さんも一所懸命祈ってますがなにをお願いしたのでしょうね。そして、拝礼もおわり、どんどんと進んでいきます。奥宮を抜けテレビなどで有名な千本鳥居をくぐり、奥社奉拝所を通って千本鳥居を見ながら熊鷹社から三つ辻を左に曲がり、疲労困憊な状態で四つ辻へ一ノ峰にある上社神蹟まで行きました。

 まあ、そんなわけで四つ辻まで行った話になるのですが、「まずは千本鳥居に行くのです」と見せかけて、その前に気になる者があるのですよ。え? 「物の間違いじゃないか?」いえいえ。者で合っているのですよ。人相占いの方が居たのです! それはもう完璧なほど怪しいほどの人相占いなのです! ビックリするくらい長髭を生やしており、そして半眼で微動だにしないわけです。

「うわぁ! 物凄く占って欲しい」

 ですが、今は奥さんとのデート(取材)の最中です。鼻息荒く駆け寄ったら「こんな人だったの? 鼻息荒く駆け寄る人なんて思わなかった」となるかもしれません。大ピンチです。奥さんが実家に帰る危機です。そもそも、時間に余裕がなく、ちょっと期待して奥さんに確認してみましたが「いや、別に」と軽くスルーされました。

 泣く泣く進んでいく私達の目に不思議な物があります。馬のリアル人形が安置されているのです。そして説明は全くなし。周りに人もおらず、この御方が何者かもさっぱり分かりません。結局、ネットで調べても馬神様くらいの情報しか得られず……。

 本当に神馬舎とは何者なのでしょうか? 謎は謎のまま進んでいく私達。

 そして、やって来た千本鳥居です。最初は大きな鳥居が連なって迎え入れてくれました。さすがに写真撮影をしている人も多く、少し渋滞気味です。ですが私達の目的は妖狐ちゃんの住処をどこにするかを決めないとダメなのです。
 注)作品では妖狐が出てくるので住処を説明する描写を書こうと思っている

 こんなところで時間を過ごす訳にはいきません。人の波をかき分けて進んでいくと登場です! テレビやネットでも有名な千本鳥居です! 少し小さめの鳥居が二股に分かれてトンネルのように続いています。そして二股の千本鳥居の上には大きな垂れ幕がかかっています。

「千本鳥居は右側通行です」

 ……。交通渋滞を避けるために一方通行になっています。風情もなにもあったもんじゃない。しかし、その選択は正解だと思わざるを得ません。綺麗に流れています。写真を撮っている人は別ですが。

 外国人の方がタブレットを構えて写真を撮ろうとしています。そして、それを微妙に避けようとしている日本人。大渋滞です。普段なら美しい光景なのでしょうが、歩き疲れている私には「邪魔しないで!」と叫びたい案件です。その撮影している前を横切っていくおっちゃん(私じゃないよ?)。写真自体は撮れたみたいですが、苦笑をしている外国人。だが、おっちゃん! 俺は貴方を称えます。

 途中で戻ったりしながら写真撮影をしようとする外国人に辟易しながら、なんとか奥社奉拝所に到着です。千本鳥居をくぐってすぐに、お守りやジュースなどが販売されています。やるな、商売上手。と思いながら購入せずにスルーすると、脇目も振らずに「おもかる石」に向かいます。

 皆さんは「おもかる石」をご存じですか? 願を掛けて石灯籠の宝珠を持ち上げ、自分の予想よりも軽ければ願いが叶い、重かったら願いは叶い難いと言われています。以前に、おもかる石を持ち上げた私は「続刊が出ますように!」と願を掛けて持ち上げ軽くて喜んでいたら、当時連載していた「異世界は幸せ(テンプレ)に満ち溢れている」の4巻が発売されました。(あくまでも個人的な感そ(以下略

 そしておもかる石と対面です! 前でテンション高くラノベが好きそうな高校生達(思い込みです)が「おもかる石」にチャレンジしています。「重いー」とか「早く持ち上げろよ!」など、楽しそうです。なに男子高生がイチャコラしてんだよ。そう言ったのが好きな先生が大挙してやってくるだろ。

 そして私達の番です。先にどうぞと奥さんに譲りましたが、仰天する言葉がやってきます。

「どうしよう。願い事が特にない」

 な……んだ……と? 本当ですか、奥さん? え? 本当にないの? なんて無垢な奥さんなのでしょうか。願い事だらけの私が腹黒に見えるじゃないですか。そんな困り顔をしている奥さんも可愛いなと思いながら、私から提案をします。

「だったら、家族の健康を願ってみたら?」

「そうやね。それやったら願ってもええな」

 天使がおる。

 なにこの天使な人? こんな素晴らしい人と一緒に人生を歩みたい。あ、私の奥さんでした。「ふんす」と鼻息が聞こえそうなやる気を出している奥さんの横で「これからも作品が書籍化していきますように。これからも作品が売れますように」な感じで、欲望願望ダダ漏れ状態でおもかる石を持ち上げます。

 あれ? 軽い!

 やった! 完璧ではないか我が軍は! これからバンバンと書籍化していきますよ! 連絡を待ってますよ!(出版社の方向を向きながら心の中で叫ぶ)

 ん? 奥さんが苦笑を浮かべている。どうしたの?

「……。めっちゃ重かった。ほんまに軽かったん? 重かったのに軽いって言ってるんちゃうの?」

 失礼な! 軽かったよ! 物凄く軽いんだよ。書籍化が掛かった願掛けなんだよ!

 必死の表情で言いましたが、本当に軽かったのですよ。ん? これって小説のネタとして書けるのでは?

-----------------
「よーし。頑張って持つぞー! あれ? 物凄く重い! なんで――ちょっと! なんで、おもかる石の上に乗ってるのよー」
「当然じゃろう。なにを簡単に願望を叶えようとしておるのじゃ。苦難を超えてこそ達成感があるじゃろうが」
「うっ! 正論なのに腹立つのはなんでだろう」
-----------------

 こんな感じですかね?

 うんうん。良い感じだ。と、自画自賛しながら紳士ノートに書き込んでおもかる石を後にすると、私達は三ツ辻に向かって歩んでいきます。
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