伏見稲荷で出会った可愛い妖狐の葉子ちゃんと綺麗な楓さん。そして普通なはずの私

うっちー(羽智 遊紀)

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もののけとの出会い

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「うー、最悪の目覚めだね……」

 思わず呟きたくなるほど気分は最悪だった。スッキリするため、私はお風呂場に向かうと軽くシャワーを浴びて昨日の汗を洗い流した。

「ふー、すっきりした。それにしても昨日は最悪だったな。……。あの後もぐっすりと寝れなかったし」

 部屋に設置されているテレビを点けながら今朝の天気を確認する。よしよし。この暑さなら曇りくらいが丁度いいね。ドミトリーから見える景色は、京都らしさが微塵みじんも感じられないほど殺風景だった。

「安さで選んだからなー」

 私は窓の外に見える一般的な住宅を眺めながら昨日の事を思い出していた。夢――じゃないよね? 京都伏見に来ているから本当に魑魅怨霊のたぐいだったの? 

「全然寝られた気がしないわ。ふわぁぁぁ。ん? こんなところに人形なんてあったかな?」

 テレビ台の片隅に可愛らしい座敷わらしのような人形があった。なぜか惹かれるようにフラフラと近付いて手に取った。そして思わず抱きしめてしまう。

「触るでないわ! 無礼者! 妾を誰と思っておる!」

 突然、喋りだした人形片手に思わず固まってしまう。え? 最近の人形は喋るの? テレビで見た事あるある――そんな訳ないじゃん! でも実際喋ったよね? 思わず手の中にある人形を眺めていると、私の視線に耐えきれなくなったのか人形が焦ったような声で小さく呟いているのが聞こえた。

「シーなのじゃ。『人形のフリをして近付き、根ほり葉ほり、こやつの能力を暴いてやろう大作戦』が失敗していまうのじゃ。喋っちゃバレるから沈黙なのじゃ」

 やだ、なにこれ可愛い。

 私の視線で喋っている事に気付いた人形が慌てたように黙り込んだ。でもね、人形ちゃん。君の額の汗。それと頬に流れる汗やヒクついてる口元を見てるからね。全然、誤魔化せてないんだよ。

「あれー。やっぱりなにもきこえないなー。げんちょうだったのかなー」

 私の棒読みセリフにバレてないと思ってニヤニヤしてるけど。ニヤニヤしていいの? それとも気付いてないのかな? チョロすぎるよ? ……。それにしても可愛い人形ちゃんだね。不思議な柔らかさがあって、ずっと抱きしめ続けたくなる。

 いつまでもこうしている訳にはいかないよね。昨日の恐怖体験を完全に忘れたように、私は目の前で起っている不思議現象を知りたくなった。

「ちょっと汚れてるなー。そうだ! 洗濯機で綺麗にしようかな?」

 私のいじわる言葉に人形ちゃんがピクッと反応する。表情も少し怯えた感じになってる。やだ、もうちょっと意地悪がしたくなってきた。

「そうだ、洗面所に水を溜めて漬け洗いにしようかな? それともお風呂に水を入れて踏み洗いでもしようかな?」

 すごい。私のセリフに合わせてピクピクと動いてる。どうしよう? この状態が楽しくなってきた。もう少し楽しめるかな? などと思っていたら、プルプルと震えだした人形ちゃんの絶叫が聞こえてきた。

「鬼かー! 貴様は! どんな神経をしておったら、そこまで酷い事を考えられるのじゃー!」

 手の中でバタバタと涙目で抗議してくる人形ちゃんを見ながら、私は不思議現象に恐れるどころか笑ってしまった。
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