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神の我儘
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満足そうなハロッズ侯爵とナサーリアを見ながらティナと神は会話をした。
『上手くいったわね』
『ああ、なかなか強引だったがな』
『しかし便利よね~神の啓示?私に言わせれば詐欺だわ』
『ふふふ!お前・・・それは言わぬが花というものだ』
『ふふふ・・・嫌いじゃないわ』
『『ふふふふふふふ』』
神と聖女の会話とは思えないほど黒々とした笑いだった。
それから半月ほどが何事も無く過ぎて明日はナサーリアが初めてレッスンに来る日となった。
基礎的な楽譜と弾いていて楽しい簡単な楽譜を用意してティナはいそいそとピアノを拭いていた。
ティナの腹は見るものが見れば妊娠していると気づく程度には膨れてきていた。
しかし誰も何も言わない。
ティナも何の説明もしない。
まるで触れてはいけない事のように扱われていた。
「おはようございます。ティナロア聖女様」
「ようこそいらっしゃいました。ナサーリアお嬢様。いよいよ今日からレッスンですね」
「はい。とても楽しみにしておりました。ティナロア聖女様、どうか私のことはサーリとお呼びください」
「わかりましたサーリ様。では私のことはティナと呼んでくださいね」
二人は手を取り合って楽しそうに笑った。
『うん。私の番は愛らしい』
『まだ手を出すんじゃないわよ!』
『当たり前だ!番が私のもとに来るのは天寿を全うした後だ!多分あと60年後だ!』
『えっ!あんた・・・ババ専?ケヴィンと一緒?なぜ私の周りにはそんな男しか・・・』
『違う!我が元に来るときは生涯で一番美しかった姿となってやってくるのだ!そして永遠にその姿のままなのだ!今のはちょっと真面目に腹が立ったぞ!』
『あらあら・・・便利なシステムね』
『システムとか言うな!もういい!さっさとピアノを教えてやれ!』
『ちょっと聞くけど・・・この子にピアノを仕込もうと思った理由は何?』
『えっと・・・こっちに来た時・・・弾いてくれたらうれしいなぁ~って・・・』
『なるほど・・・完全にあんたの趣味ね?』
『まあ・・・そういうことだ』
『わかったわ。真剣に仕込んであげる。その代わりこれは貸しだからね!覚えておいてよ!』
『うん。わかった』
『鬱陶しいからもう消えな!』
『はい・・・失礼します』
しょぼんと肩を落とした神が静かに姿を消した。
神が消えた方をぼんやりと見ながらナサーリアは不思議そうな顔をしていた。
「サーリ様?何か聞こえましたか?」
「いいえ、何も聞こえてはいないのですが・・・何か暖かい光のようなものを感じました」
「そうですか・・・暖かい光・・・なるほど。ナサーリア様、それは気のせいです」
「あ・・・そうですか・・・そうですよね・・・すみません」
「何かの気配は確かにありましたが、暖かい光などというほど崇高なものとでは無いと思います」
「はあ・・・なるほど・・・」
ナサーリアは困った顔をしていた。
「さあ、時間がもったいないですね。さっそく始めましょう。まずは何でも良いですから一曲お聞かせくださいますか」
「はい。それでは・・・」
ナサーリアはピアノの前に座り、一度深呼吸してからゆっくりと弾き始めた。
(へぇぇ~なかなかちゃんと弾けてるわ。これは教え甲斐があるわね)
弾き終わったナサーリアは頬を紅潮させてティナの顔を見た。
ティナは笑顔で拍手をしながらピアノに近づいた。
「素晴らしいですね。これで先生がついていなかったのですか?本当にすごいです」
「ティナ様・・・恥ずかしいです」
「いえいえ、誇ってもいいですよ。しかしまだまだ上手くなれます。頑張って行きましょうね」
「はい!」
力強く頷いたナサーリアにティナは基礎練習の楽譜を渡した。
「サーリ様。まずはこれから始めましょう。これは弾いていて面白いものではありませんが、とても重要な基礎を作ってくれるのです。これを毎日必ず10回以上は弾いてください。それができないとピアノは上手くなりません。はじめは一曲を10回ずつ、徐々に二曲から三曲と増やしていきます。できそうですか?」
「はい!」
「ではまず私が弾いてみますね?よく聞いていてください」
ティナは単調なメロディーを繰り返すだけの曲を弾き始めた。
ドから始め、一音ずつ上げていく。左右同じ動きのため和音もなく、聞いていても楽しいものではなく、ただ力強く同じ動作を繰り返すだけのものだった。
「これは指を強くして、しっかりと鍵盤を叩く技術を身に着けるために必要な練習です」
解説しながらティナは弾き続けた。
ナサーリアはそんなティナの指の動きに釘付けになっている。
「ティナ様・・・すごいです。やっぱり神の御声に聞こえます」
「・・・ありがとうございます」
ふと気づくとピアノの上に神が寝そべって幸福そうな顔で聴いている。
能天気?・・・そんな単語がティナの頭に浮かんだ。
『上手くいったわね』
『ああ、なかなか強引だったがな』
『しかし便利よね~神の啓示?私に言わせれば詐欺だわ』
『ふふふ!お前・・・それは言わぬが花というものだ』
『ふふふ・・・嫌いじゃないわ』
『『ふふふふふふふ』』
神と聖女の会話とは思えないほど黒々とした笑いだった。
それから半月ほどが何事も無く過ぎて明日はナサーリアが初めてレッスンに来る日となった。
基礎的な楽譜と弾いていて楽しい簡単な楽譜を用意してティナはいそいそとピアノを拭いていた。
ティナの腹は見るものが見れば妊娠していると気づく程度には膨れてきていた。
しかし誰も何も言わない。
ティナも何の説明もしない。
まるで触れてはいけない事のように扱われていた。
「おはようございます。ティナロア聖女様」
「ようこそいらっしゃいました。ナサーリアお嬢様。いよいよ今日からレッスンですね」
「はい。とても楽しみにしておりました。ティナロア聖女様、どうか私のことはサーリとお呼びください」
「わかりましたサーリ様。では私のことはティナと呼んでくださいね」
二人は手を取り合って楽しそうに笑った。
『うん。私の番は愛らしい』
『まだ手を出すんじゃないわよ!』
『当たり前だ!番が私のもとに来るのは天寿を全うした後だ!多分あと60年後だ!』
『えっ!あんた・・・ババ専?ケヴィンと一緒?なぜ私の周りにはそんな男しか・・・』
『違う!我が元に来るときは生涯で一番美しかった姿となってやってくるのだ!そして永遠にその姿のままなのだ!今のはちょっと真面目に腹が立ったぞ!』
『あらあら・・・便利なシステムね』
『システムとか言うな!もういい!さっさとピアノを教えてやれ!』
『ちょっと聞くけど・・・この子にピアノを仕込もうと思った理由は何?』
『えっと・・・こっちに来た時・・・弾いてくれたらうれしいなぁ~って・・・』
『なるほど・・・完全にあんたの趣味ね?』
『まあ・・・そういうことだ』
『わかったわ。真剣に仕込んであげる。その代わりこれは貸しだからね!覚えておいてよ!』
『うん。わかった』
『鬱陶しいからもう消えな!』
『はい・・・失礼します』
しょぼんと肩を落とした神が静かに姿を消した。
神が消えた方をぼんやりと見ながらナサーリアは不思議そうな顔をしていた。
「サーリ様?何か聞こえましたか?」
「いいえ、何も聞こえてはいないのですが・・・何か暖かい光のようなものを感じました」
「そうですか・・・暖かい光・・・なるほど。ナサーリア様、それは気のせいです」
「あ・・・そうですか・・・そうですよね・・・すみません」
「何かの気配は確かにありましたが、暖かい光などというほど崇高なものとでは無いと思います」
「はあ・・・なるほど・・・」
ナサーリアは困った顔をしていた。
「さあ、時間がもったいないですね。さっそく始めましょう。まずは何でも良いですから一曲お聞かせくださいますか」
「はい。それでは・・・」
ナサーリアはピアノの前に座り、一度深呼吸してからゆっくりと弾き始めた。
(へぇぇ~なかなかちゃんと弾けてるわ。これは教え甲斐があるわね)
弾き終わったナサーリアは頬を紅潮させてティナの顔を見た。
ティナは笑顔で拍手をしながらピアノに近づいた。
「素晴らしいですね。これで先生がついていなかったのですか?本当にすごいです」
「ティナ様・・・恥ずかしいです」
「いえいえ、誇ってもいいですよ。しかしまだまだ上手くなれます。頑張って行きましょうね」
「はい!」
力強く頷いたナサーリアにティナは基礎練習の楽譜を渡した。
「サーリ様。まずはこれから始めましょう。これは弾いていて面白いものではありませんが、とても重要な基礎を作ってくれるのです。これを毎日必ず10回以上は弾いてください。それができないとピアノは上手くなりません。はじめは一曲を10回ずつ、徐々に二曲から三曲と増やしていきます。できそうですか?」
「はい!」
「ではまず私が弾いてみますね?よく聞いていてください」
ティナは単調なメロディーを繰り返すだけの曲を弾き始めた。
ドから始め、一音ずつ上げていく。左右同じ動きのため和音もなく、聞いていても楽しいものではなく、ただ力強く同じ動作を繰り返すだけのものだった。
「これは指を強くして、しっかりと鍵盤を叩く技術を身に着けるために必要な練習です」
解説しながらティナは弾き続けた。
ナサーリアはそんなティナの指の動きに釘付けになっている。
「ティナ様・・・すごいです。やっぱり神の御声に聞こえます」
「・・・ありがとうございます」
ふと気づくとピアノの上に神が寝そべって幸福そうな顔で聴いている。
能天気?・・・そんな単語がティナの頭に浮かんだ。
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