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まるで恋人

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目をぱしぱしさせながら神を凝視しているティナを見て神が言った。

「おい!遊ぶなよ。お前も探せ」

「あっごめん。ねえ・・・あんたってさぁ、光るの?」

「お前見えるのか?そうか・・・遂に見えるようになったか・・・よしよし、いい傾向だな。これは天使達だ」

「えっっっっ!天使?」

「大きな声を出すな!図書館だぞ」

「ご・・・ごめん。だって驚かすんだもん」

「本当は見えないはずなんだが、お前って天使にも気に入られたのかもしれないな。だとしたら仲よくしておけよ?結構役立つから」

「へぇ~天使を便利使いするって気が引けるわね」

「神の俺をここまで蔑ろにする女とは思えない発言だが」

「あんたは別よ。神様っぽく無いもん」

「あのなぁ・・・まあいいか・・・これなんかどうだ?結構詳しく書かれているぞ」

「どれどれ?へぇ~あの頃に流行ったのって結局インフルエンザってこと?それと・・・脚気?脚気って何よ」

「脚気っていうのはだな、ビタミン不足で発症する病だ。全粒パンならいいが、遺族たちが好む白パンは原因のひとつだな」

「へぇ~食生活で予防できるの?」

「ああ、逆にいうと食生活の改善でしか予防できない。主食を豚肉に変えて全粒粉のパンと緑黄色野菜を多用すれば大丈夫だろう」

「要するにそれを流行らせればいいわけね?ということは・・・それを使った流行りそうなレシピと広告塔になりうる人材の確保ね」

「さすがだな。脚気はそれで何とかなるだろう。インフルエンザは少々難解だな」

「そうね・・・ウィルスの飛沫感染かぁ。流行るのは冬場よね?予防接種っていう概念は無い時代だから・・・やっぱり地道にマスクをするしか無いのかしら」

「マスクは有効な手段だろうな。それと気管に効く漢方薬と解熱薬か」

「それしかないね・・・マスクの作り方は覚えることにして。漢方薬の選定と結局のところは衛生管理意識の向上ね」

「それこそケヴィンに言って冊子にしてもらえよ。それでさぁ・・・やってもらってる間にちょっと旅行にでも行かないか?」

「仕事は人に振っておいて遊ぼうっていうの?ふふふ・・・悪くないわね」

「そうだろう?どこか行きたいところはあるか?」

「急には思いつかないけど・・・育った街には行ってみたいかな・・・」

「いいのか?あまりいい思い出はないだろう?」

「うん。そうなんだけど・・・あの教会がどうなってるのかとか、マダムマリアンの家がまだあるのかとか・・・」

「よし!行ってみよう。俺が一緒なら大丈夫だろう?気になるなら確認した方がいいさ」

「そうね。じゃあまずはケヴィンに会ってから・・・行ってみようかな」

「よし!まずはケヴィンか。急ぐぞ!俺たちのかわいいアーレントをあまり人任せにはできないからな」

「俺たちのって・・・なんか照れる」

赤い顔で手をつなぎながら出て行く二人を受付のスタッフが不思議そうな顔で見送った。
ティナがケヴィンに電話をしている間に、神は屋台でクレープを買ってきた。
ティナがチョコバナナ、神はストロベリークリームだ。
電話を終えたティナがクレープを受け取りながら神に話しかけた。

「なかなか気が利くじゃないの。神にしておくのはもったいないわね」

「ははは。褒めてるのか?それ。ああそうだ、俺のことはなんと呼ぶ?神とか大魔神じゃまずいだろ?」

「そうね・・・見た目はハーベストだけどあんたはあんただから違う名前がいいわよね。ところであんた本名はなんていうの?」

「俺の名前か・・・かなり長いからなぁ。聞きたい?二分ぐらいかかるぞ」

「いや、遠慮する。そうねぇ・・・家族にはなんて呼ばれてたの?」

「神に家族などいるわけないだろ?でも神仲間からはアルって呼ばれてる」

「アル?へぇ~素敵じゃない。じゃあ私もそう呼んでも良い?」

「ああ、もちろんだ」

「じゃあアル。それ半分食べさせて」

「食いかけでいいのか?」

「うん。私のも半分あげる」

「じゃあ換えっこな」

神はものすごく嬉しそうに食べかけのクレープをティナに突き出す。
受け取りながらティナも満面の笑みを返した。

「ケヴィンは会社にいるんだって。近くのカフェで待ち合わせることになったから」

「そうか。あいつもなかなかフットワークが軽いな」

「そうなのよ。本当にいい人だよね。今回の件も製薬部門の人を同行してくれるっていうから話は早いと思うわ」

「じゃあすぐにでも旅行に行けるな」

「そうね。それにしてもアルと旅行に行く日が来るとはね」

「ああ、それは俺も思う。でも俺は・・・うれしいし楽しい」

「ちょっと!恥ずかしいこと言わないで。まるで告白してるみたいよ」

「うん、コクってるし」

「ちょっと!・・・早く行こう」

ニコニコと笑う神の手を引いてティナは車に向かった。
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