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本物のオーラ
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神に背中を押されたティナは意を決して声を出した。
「ハーベスト陛下はそんな方ではありませんし、今後は率先して戦争を起こすこともありません!」
その場にいる全員がティナの強い口調に圧倒された。
「私はハーベスト陛下と接点がありました。親しくお話をさせていただいたこともございます。尊敬すべき方であり、側近の方々も素晴らしい方々でした。誠意をもって接すれば必ず応えて下さいます。私は絶大なる信頼を寄せております!」
『う~ん。正しいがちょっと妬ける』
ティナは神の声に吹き出しそうになりながら肩の力を抜いた。
「時期が来れば・・・私がアルベッシュ帝国に親善大使として向かいましょう」
全員がハッと顔を上げてティナを見た。
誰も発言しない数秒が流れた後、キアヌ第二王子が口を開いた。
「聖女様をハーベスト陛下に会わせるかどうかは別にして・・・早速外交にも力を入れよう。なんならアルベッシュ帝国にはまずは私が向かっても構わない」
ハロッズ侯爵がキアヌ殿下の顔を見て頷きながら言った。
「ご立派なお覚悟です。さあ、話をまとめましょう。災害防止と農地改善、そして外交の三本柱を同時に、しかも可及的速やかに遂行するという事でいかがでしょうか」
近衛師団長のロバート伯爵が立ち上がった。
「それでは私が災害防止に関する責任者となりましょう」
文官長であるワンド伯爵が続く。
「私は農地改善を担いましょう」
最後にキアヌ第二王子が座ったまま発言した。
「外交はもとより王族の責務だ。そちらの方は私が中心となって進めよう。オルフェウス大神官とフェルナンド神官は、民意を取りまとめることに奔走してもらいたい。そして聖女ティナロアとハロッズ侯爵、二人には総指揮を任せよう」
そこまで言った時、扉がスッと開いた。
「私も仲間にお入れください」
「ナサーリア!」
ハロッズ侯爵が愛娘のもとに駆け寄った。
「ナサーリア・・・お前はまだ幼い。ここは大人に任せるんだ。お前には聖女としての役割があるだろう?」
「はい、お父様。しかし私も聖女として神より力を与えられた責務がございます。聖女ティナロア様のお傍でお役に立ちたいのです。それにティナロア様には御子様をお守りするという大切なお役目がございます」
ティナが席を離れナサーリアのそばに行った。
「サーリ様、ありがとうございます。それでは私と共に頑張ってくださいますか?」
「はい!ティナロア様、サーリは嬉しゅうございます」
ティナはハロッズ侯爵に向かって言った。
「侯爵様、サーリ様の安全はわが身に変えましてもお守りいたしますので、どうかサーリ様のご意志を・・・」
ハロッズ侯爵はぐっと拳を握った後、ふと顔を上げた。
ナサーリアの頭をなでながら言った。
「私のかわいいサーリ・・・お前は聖女として神に選ばれたのだったな・・・我が手を離れていくのだな・・・」
「お父様、サーリは聖女として正しい道を歩んでいきとうございます。でもお父様の娘であることには変わりはございません。どうか・・・どうか・・・お父様」
「ああ、分かっている。分かってはいるのだが・・・」
ハロッズ侯爵はナサーリアをぎゅっと抱きしめた後、ティナと二人の神官に向かって言った。
「娘を・・・どうぞよろしくお願いいたします」
ティナは自分にはまったく縁がなかった父親の愛情を目の当たりにして感動していた。
そんなティナの心情を察したのか神がティナに寄り添った。
『あの愛情深い父親を少しでも安心させられないかしら』
『う~ん。わかった、やってみよう』
神がそう言った瞬間、ナサーリアの周りにキラキラとした光が乱れ飛んだ。
まるでナサーリアに纏わりつくように飛び交っている。
「こ・・・これは・・・」
普段は神とティナにしか見えない天使たちが、その場にいる全員に見えていた。
ティナが優しい微笑みを浮かべ、十字を切り跪きながら言った。
「天使さまです。とてもたくさんの天使様が聖女ナサーリアの勇気を湛え加護をお授けになりました」
「なんと!」
その場の全員が跪きナサーリアに向かって祈った。
そんな大人の行動にも怯むことなく、ナサーリアは微笑んだ。
「やっぱ本物の聖女は威厳が違うわぁ~」
ティナは誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。
「ハーベスト陛下はそんな方ではありませんし、今後は率先して戦争を起こすこともありません!」
その場にいる全員がティナの強い口調に圧倒された。
「私はハーベスト陛下と接点がありました。親しくお話をさせていただいたこともございます。尊敬すべき方であり、側近の方々も素晴らしい方々でした。誠意をもって接すれば必ず応えて下さいます。私は絶大なる信頼を寄せております!」
『う~ん。正しいがちょっと妬ける』
ティナは神の声に吹き出しそうになりながら肩の力を抜いた。
「時期が来れば・・・私がアルベッシュ帝国に親善大使として向かいましょう」
全員がハッと顔を上げてティナを見た。
誰も発言しない数秒が流れた後、キアヌ第二王子が口を開いた。
「聖女様をハーベスト陛下に会わせるかどうかは別にして・・・早速外交にも力を入れよう。なんならアルベッシュ帝国にはまずは私が向かっても構わない」
ハロッズ侯爵がキアヌ殿下の顔を見て頷きながら言った。
「ご立派なお覚悟です。さあ、話をまとめましょう。災害防止と農地改善、そして外交の三本柱を同時に、しかも可及的速やかに遂行するという事でいかがでしょうか」
近衛師団長のロバート伯爵が立ち上がった。
「それでは私が災害防止に関する責任者となりましょう」
文官長であるワンド伯爵が続く。
「私は農地改善を担いましょう」
最後にキアヌ第二王子が座ったまま発言した。
「外交はもとより王族の責務だ。そちらの方は私が中心となって進めよう。オルフェウス大神官とフェルナンド神官は、民意を取りまとめることに奔走してもらいたい。そして聖女ティナロアとハロッズ侯爵、二人には総指揮を任せよう」
そこまで言った時、扉がスッと開いた。
「私も仲間にお入れください」
「ナサーリア!」
ハロッズ侯爵が愛娘のもとに駆け寄った。
「ナサーリア・・・お前はまだ幼い。ここは大人に任せるんだ。お前には聖女としての役割があるだろう?」
「はい、お父様。しかし私も聖女として神より力を与えられた責務がございます。聖女ティナロア様のお傍でお役に立ちたいのです。それにティナロア様には御子様をお守りするという大切なお役目がございます」
ティナが席を離れナサーリアのそばに行った。
「サーリ様、ありがとうございます。それでは私と共に頑張ってくださいますか?」
「はい!ティナロア様、サーリは嬉しゅうございます」
ティナはハロッズ侯爵に向かって言った。
「侯爵様、サーリ様の安全はわが身に変えましてもお守りいたしますので、どうかサーリ様のご意志を・・・」
ハロッズ侯爵はぐっと拳を握った後、ふと顔を上げた。
ナサーリアの頭をなでながら言った。
「私のかわいいサーリ・・・お前は聖女として神に選ばれたのだったな・・・我が手を離れていくのだな・・・」
「お父様、サーリは聖女として正しい道を歩んでいきとうございます。でもお父様の娘であることには変わりはございません。どうか・・・どうか・・・お父様」
「ああ、分かっている。分かってはいるのだが・・・」
ハロッズ侯爵はナサーリアをぎゅっと抱きしめた後、ティナと二人の神官に向かって言った。
「娘を・・・どうぞよろしくお願いいたします」
ティナは自分にはまったく縁がなかった父親の愛情を目の当たりにして感動していた。
そんなティナの心情を察したのか神がティナに寄り添った。
『あの愛情深い父親を少しでも安心させられないかしら』
『う~ん。わかった、やってみよう』
神がそう言った瞬間、ナサーリアの周りにキラキラとした光が乱れ飛んだ。
まるでナサーリアに纏わりつくように飛び交っている。
「こ・・・これは・・・」
普段は神とティナにしか見えない天使たちが、その場にいる全員に見えていた。
ティナが優しい微笑みを浮かべ、十字を切り跪きながら言った。
「天使さまです。とてもたくさんの天使様が聖女ナサーリアの勇気を湛え加護をお授けになりました」
「なんと!」
その場の全員が跪きナサーリアに向かって祈った。
そんな大人の行動にも怯むことなく、ナサーリアは微笑んだ。
「やっぱ本物の聖女は威厳が違うわぁ~」
ティナは誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。
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