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画期的なプラン
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農業改革が予想以上の成果を上げたため、余剰分を他国に売って外貨を獲得しようというプランが出された。
早速推進メンバーが集まり会議が始まる。
外交が絡むため座長はキアヌが受けもった。
「外貨の獲得も大切なことだが、周りの国の状況はどうなのだろうか?」
ハロッズ侯爵がそれに応えた。
「以前の我が国同様に戦争による疲弊が深刻です。農業改革という画期的なプランは我が国に聖女ティナロア様がおられたからこその成果ですから、他国の状況はもっと酷いものです」
「なるほど・・・そんな国々に商売を持ちかけても利が得られるのだろうか」
全員が黙ってしまった。
沈黙の中ナサーリアがおずおずと手を挙げる。
「それなら・・・差し上げれば喜ばれるのではないですか?」
全員がハッと顔を上げた。
代表する様にキアヌ殿下が発言する。
「聖女サーリ様?ここまで苦労して得た小麦を無償で他国に渡すと言われるか?」
「はい・・・困っておられるならお助けするべきと・・・」
ナサーリアが助けを求めるようにティナを見た。
ティナはとっさに考えた。
(そうよね・・・恩を売るのは良い外交政策だわ。それにトラクターや車いすのノウハウを伝授すればもっと喜ばれるはず!あっ・・・この世界には特許という考えは無いから・・・そうよ!レンタルよ!レンタカーシステムにすれば良いのよ!」
ティナは立ち上がった。
「聖女サーリ様の仰る通りです。国は違えど人は全て神の大切な御子なのです。国境は人が勝手に作ったもの。地図上に線はあれど、それは勝手に人が引いたもの。まず援助の手を差し伸べる・・・これこそが最大の外交政策では無いでしょうか」
再び全員が黙ってしまう。
(あれ?敵に塩を贈る的な考えは・・・無謀?)
キアヌがぼそっと言った。
「なるほど・・・神のご意志であればそうなのだろう。しかし我々の助けによって国力を回復した隣国が再び攻めてくるようなことがあっては、それこそ本末転倒となるが・・・」
ハロッズ侯爵も同意見のようでキアヌ殿下の発言に小さく頷いていた。
(不可侵条約を締結するのどうかしら・・・確か環太平洋条約なんちゃら?なんていう組織もあったような・・・それとも国連的な?)
ティナの熱弁は続く。
「食料の贈与を条件にベルツ王国近隣諸国による不可侵条約とその条約が守られていることを相互監視する機関を設立してはどうでしょうか」
「不可侵条約と相互監視?」
全員が初めて聞く単語に戸惑っている。
「そうです。ベルツ王国を取り巻く近隣諸国から国を代表するメンバーが一同に会して、客観的視点で意見交換する場を設けるのです。その場に参加するのであれば、ベルツ王国は食料の提供を実施すると伝えましょう。そしてそれに参加する国のどこかが裏切った場合、その他の国が連合軍として制裁を加えることをルール化するのです。相互理解を深め互助の精神を根底にする清廉な組織を結成するのです」
「それが相互監視というわけか・・・基本は信頼だな」
「まず信じる。まず我が国から始める。いかがでしょうか」
キアヌが何度か瞬きをした後、高揚した顔で立ち上がった。
「まず信じる・・・勇気が必要だな。しかし聖女が誕生した我が国にしかできない発案かもしれない。結論は暫し待ってもらえないだろうか。持ち帰って兄上にも相談したい」
全員が大きく頷きこの日は散会となった。
ナサーリアがティナに駆け寄った。
「ティナ様・・・私の幼稚な意見を擁護してくださって、本当にありがとうございました」
「いいえ、サーリ様。私は感動したのですよ?さすが聖女ナサーリア様です」
「そんな・・・今思えば少し傲慢な考えだったようです」
「そんなことはありません。それに良いことを思いついちゃったんです」
「良いこと?」
「ええ、ビジネスチャンスですよ。トラクターや車いすなどは無償で配布するのではなく、レンタルするのです。それを使って収穫量が増えたら払ってもらう契約で貸し出すのです。
儲かると思いませんか?」
「レンタル?儲かる?ははは!ティナ様ったら~本当に楽しい方ですね」
「あらあら真面目なお話ですよ?タダほど高いものはありませんからね。まず恩と名を売るのです。長い目で見ればいい商売ですよ」
神の声がティナの頭の中に響いた。
『ティナ・・・サーリを洗脳するな!』
ペロッと舌を出してティナがナサーリアに向かって言った。
「さあサーリ様、おやつにしましょう。今日はおいしいマフィンですよ。ドライフルーツをたっぷり入れたおいしいカップケーキです。蜂蜜もいっぱいかけていただきましょうね」
聖女とはいえまだ幼いナサーリアはその一言で考えることを放棄した。
早速推進メンバーが集まり会議が始まる。
外交が絡むため座長はキアヌが受けもった。
「外貨の獲得も大切なことだが、周りの国の状況はどうなのだろうか?」
ハロッズ侯爵がそれに応えた。
「以前の我が国同様に戦争による疲弊が深刻です。農業改革という画期的なプランは我が国に聖女ティナロア様がおられたからこその成果ですから、他国の状況はもっと酷いものです」
「なるほど・・・そんな国々に商売を持ちかけても利が得られるのだろうか」
全員が黙ってしまった。
沈黙の中ナサーリアがおずおずと手を挙げる。
「それなら・・・差し上げれば喜ばれるのではないですか?」
全員がハッと顔を上げた。
代表する様にキアヌ殿下が発言する。
「聖女サーリ様?ここまで苦労して得た小麦を無償で他国に渡すと言われるか?」
「はい・・・困っておられるならお助けするべきと・・・」
ナサーリアが助けを求めるようにティナを見た。
ティナはとっさに考えた。
(そうよね・・・恩を売るのは良い外交政策だわ。それにトラクターや車いすのノウハウを伝授すればもっと喜ばれるはず!あっ・・・この世界には特許という考えは無いから・・・そうよ!レンタルよ!レンタカーシステムにすれば良いのよ!」
ティナは立ち上がった。
「聖女サーリ様の仰る通りです。国は違えど人は全て神の大切な御子なのです。国境は人が勝手に作ったもの。地図上に線はあれど、それは勝手に人が引いたもの。まず援助の手を差し伸べる・・・これこそが最大の外交政策では無いでしょうか」
再び全員が黙ってしまう。
(あれ?敵に塩を贈る的な考えは・・・無謀?)
キアヌがぼそっと言った。
「なるほど・・・神のご意志であればそうなのだろう。しかし我々の助けによって国力を回復した隣国が再び攻めてくるようなことがあっては、それこそ本末転倒となるが・・・」
ハロッズ侯爵も同意見のようでキアヌ殿下の発言に小さく頷いていた。
(不可侵条約を締結するのどうかしら・・・確か環太平洋条約なんちゃら?なんていう組織もあったような・・・それとも国連的な?)
ティナの熱弁は続く。
「食料の贈与を条件にベルツ王国近隣諸国による不可侵条約とその条約が守られていることを相互監視する機関を設立してはどうでしょうか」
「不可侵条約と相互監視?」
全員が初めて聞く単語に戸惑っている。
「そうです。ベルツ王国を取り巻く近隣諸国から国を代表するメンバーが一同に会して、客観的視点で意見交換する場を設けるのです。その場に参加するのであれば、ベルツ王国は食料の提供を実施すると伝えましょう。そしてそれに参加する国のどこかが裏切った場合、その他の国が連合軍として制裁を加えることをルール化するのです。相互理解を深め互助の精神を根底にする清廉な組織を結成するのです」
「それが相互監視というわけか・・・基本は信頼だな」
「まず信じる。まず我が国から始める。いかがでしょうか」
キアヌが何度か瞬きをした後、高揚した顔で立ち上がった。
「まず信じる・・・勇気が必要だな。しかし聖女が誕生した我が国にしかできない発案かもしれない。結論は暫し待ってもらえないだろうか。持ち帰って兄上にも相談したい」
全員が大きく頷きこの日は散会となった。
ナサーリアがティナに駆け寄った。
「ティナ様・・・私の幼稚な意見を擁護してくださって、本当にありがとうございました」
「いいえ、サーリ様。私は感動したのですよ?さすが聖女ナサーリア様です」
「そんな・・・今思えば少し傲慢な考えだったようです」
「そんなことはありません。それに良いことを思いついちゃったんです」
「良いこと?」
「ええ、ビジネスチャンスですよ。トラクターや車いすなどは無償で配布するのではなく、レンタルするのです。それを使って収穫量が増えたら払ってもらう契約で貸し出すのです。
儲かると思いませんか?」
「レンタル?儲かる?ははは!ティナ様ったら~本当に楽しい方ですね」
「あらあら真面目なお話ですよ?タダほど高いものはありませんからね。まず恩と名を売るのです。長い目で見ればいい商売ですよ」
神の声がティナの頭の中に響いた。
『ティナ・・・サーリを洗脳するな!』
ペロッと舌を出してティナがナサーリアに向かって言った。
「さあサーリ様、おやつにしましょう。今日はおいしいマフィンですよ。ドライフルーツをたっぷり入れたおいしいカップケーキです。蜂蜜もいっぱいかけていただきましょうね」
聖女とはいえまだ幼いナサーリアはその一言で考えることを放棄した。
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