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メレンゲのお菓子
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「いらっしゃいませ!毎度ありがとうございます」
真っ白なエプロンをつけたティナが元気よく声をかけた。
「ああ、ティナちゃん。今日も元気だね~。えぇっと、今日は10個貰おうかな」
「まあ10個も?ありがとうございます」
「騎士団のみんなに頼まれてね、非番の僕がお使い役さ。それにしても本当においしいよね、このフィッシュフライバーガー。冷えてていてもおいしい」
「そうですか?ちょっとソースには凝ってますからね・・・では10個で60シルバーです」
10個のバーガーを大きめの紙袋に入れて渡す。
「ああ、ありがとう。もう少しおしゃべりしたいところだけど、今日は早めに帰って配らなくちゃいけないから」
「あら、何かあるのですか?」
「うん。今日は宰相閣下が騎士団の訓練視察に来られる予定なんだ。だから来られる前に配らないといけなくてね」
「まあキリウス閣下が?」
「あれ?ティナちゃん宰相閣下を知ってるの?」
「ええ、ほんの少し・・・ずっと昔の事ですけど。あっ!これ1個キリウス閣下にお渡しいただけませんか?」
「えっ?このバーガーを?」
「ええ、お好きだったので」
騎士の手から紙袋を奪い、バーガーを一個入れた。
騎士は不思議そうな顔をしながら軽く手を振って帰っていった。
「まあ渡らなくても良いしね。ダメ元でしょう」
騎士の背中を見送りながらティナは独り言を呟いた。
ティナが異世界のファーストフードを参考に生み出したフィッシュフライバーガーは、今やこの辺りの名物となっている。
もともと仕込みの数を抑えているので売り切れるのも早い。
それもティナの狙いだった。
次々に声がかかり、2個3個と売れていく。
今日も早々に完売したので、周りの屋台に声をかけて早じまいした。
毎日タルタルソースの仕込みをする厨房では小さな悩みを抱えていた。
卵の白身が余ってしまうのだ。
白身だけでオムレツにしてみたり、魚フライの衣にしたりと料理人たちは知恵を出し合っているが、それでも消費しきれない。
心の底から飽きてしまったキアヌ達からは卵料理を出すことさえ禁じられていた。
「ただいまぁ~。あれ?皆さんどうしました?」
「あっ!お帰りなさいませ。お疲れさまでした」
「はい、といってもあまり疲れてはいませんが。それより皆さんの方が疲れた顔をしてますよ?」
「はい・・・実は」
料理長が大量の白身が入ったボールを指さしながら事情を説明した。
「なるほど・・・ではお菓子にしちゃいましょう。これも売れるかもしれませんよ?」
「お菓子ですか」
荷物をその場において、ティナが手際よく卵白を泡立てていく。
「お砂糖を少しずつ入れてください」
泡だて器がが無くても男ではある。
大量の卵白をメレンゲ状にするのはなかなかの力技のため、料理人が代わって混ぜてくれた。
「これをクッキーと同じように焼いていきます。絞り布を使ってプルンと・・・そうそう!さすがです」
ティナは料理人をおだてることも忘れない。
待つこと約30分でイメージ通りのメレンゲクッキーが焼きあがった。
料理人たちと一緒に試食をしていると、今日も待ちぼうけを耐え抜いたキアヌたちが顔を見せた。
「何やら良い匂いがするな・・・」
「ああ、殿下。お帰りなさい。ちょっと試食してみてください」
サクサクなのに口の中で一瞬で溶けてしまうメレンゲクッキー。
初めての食感に全員が感動していた。
「凄いなこれは・・・初めて食べたぞ」
キアヌが次々と頬張っていく。
「おいしいでしょ?これも一緒に売っちゃいましょうか。お砂糖を多用するけど損はしないでしょうし」
食材を粗末にすることにとてつもない罪悪感を抱いてしまう料理人たちも大喜びだった。
持て余していた卵白は全てメレンゲクッキーとなり、明日から店頭に並ぶことになった。
「これならちょっとしたお茶の時間にも重宝するな・・・ティナはもしかして天才か?」
あれだけ卵白料理を拒否していたキアヌがぽろぽろと摘まみ続けながら言った。
「天才は言いすぎですが、まあそこそこは尊敬してください」
一日の疲れも忘れて笑いあったティナたちはそれぞれの部屋に引き取り眠りについた。
ティナが部屋に入ると子守のシスターと遊んでいたアーレントがよたよたと歩いてきた。
「ただいま、アーレント。良い子にしてましたか?」
「あいっ!おたーたま」
『アーレントはやっぱりかわいい!』
神の声が頭の中に響き、ティナは苦笑した。
真っ白なエプロンをつけたティナが元気よく声をかけた。
「ああ、ティナちゃん。今日も元気だね~。えぇっと、今日は10個貰おうかな」
「まあ10個も?ありがとうございます」
「騎士団のみんなに頼まれてね、非番の僕がお使い役さ。それにしても本当においしいよね、このフィッシュフライバーガー。冷えてていてもおいしい」
「そうですか?ちょっとソースには凝ってますからね・・・では10個で60シルバーです」
10個のバーガーを大きめの紙袋に入れて渡す。
「ああ、ありがとう。もう少しおしゃべりしたいところだけど、今日は早めに帰って配らなくちゃいけないから」
「あら、何かあるのですか?」
「うん。今日は宰相閣下が騎士団の訓練視察に来られる予定なんだ。だから来られる前に配らないといけなくてね」
「まあキリウス閣下が?」
「あれ?ティナちゃん宰相閣下を知ってるの?」
「ええ、ほんの少し・・・ずっと昔の事ですけど。あっ!これ1個キリウス閣下にお渡しいただけませんか?」
「えっ?このバーガーを?」
「ええ、お好きだったので」
騎士の手から紙袋を奪い、バーガーを一個入れた。
騎士は不思議そうな顔をしながら軽く手を振って帰っていった。
「まあ渡らなくても良いしね。ダメ元でしょう」
騎士の背中を見送りながらティナは独り言を呟いた。
ティナが異世界のファーストフードを参考に生み出したフィッシュフライバーガーは、今やこの辺りの名物となっている。
もともと仕込みの数を抑えているので売り切れるのも早い。
それもティナの狙いだった。
次々に声がかかり、2個3個と売れていく。
今日も早々に完売したので、周りの屋台に声をかけて早じまいした。
毎日タルタルソースの仕込みをする厨房では小さな悩みを抱えていた。
卵の白身が余ってしまうのだ。
白身だけでオムレツにしてみたり、魚フライの衣にしたりと料理人たちは知恵を出し合っているが、それでも消費しきれない。
心の底から飽きてしまったキアヌ達からは卵料理を出すことさえ禁じられていた。
「ただいまぁ~。あれ?皆さんどうしました?」
「あっ!お帰りなさいませ。お疲れさまでした」
「はい、といってもあまり疲れてはいませんが。それより皆さんの方が疲れた顔をしてますよ?」
「はい・・・実は」
料理長が大量の白身が入ったボールを指さしながら事情を説明した。
「なるほど・・・ではお菓子にしちゃいましょう。これも売れるかもしれませんよ?」
「お菓子ですか」
荷物をその場において、ティナが手際よく卵白を泡立てていく。
「お砂糖を少しずつ入れてください」
泡だて器がが無くても男ではある。
大量の卵白をメレンゲ状にするのはなかなかの力技のため、料理人が代わって混ぜてくれた。
「これをクッキーと同じように焼いていきます。絞り布を使ってプルンと・・・そうそう!さすがです」
ティナは料理人をおだてることも忘れない。
待つこと約30分でイメージ通りのメレンゲクッキーが焼きあがった。
料理人たちと一緒に試食をしていると、今日も待ちぼうけを耐え抜いたキアヌたちが顔を見せた。
「何やら良い匂いがするな・・・」
「ああ、殿下。お帰りなさい。ちょっと試食してみてください」
サクサクなのに口の中で一瞬で溶けてしまうメレンゲクッキー。
初めての食感に全員が感動していた。
「凄いなこれは・・・初めて食べたぞ」
キアヌが次々と頬張っていく。
「おいしいでしょ?これも一緒に売っちゃいましょうか。お砂糖を多用するけど損はしないでしょうし」
食材を粗末にすることにとてつもない罪悪感を抱いてしまう料理人たちも大喜びだった。
持て余していた卵白は全てメレンゲクッキーとなり、明日から店頭に並ぶことになった。
「これならちょっとしたお茶の時間にも重宝するな・・・ティナはもしかして天才か?」
あれだけ卵白料理を拒否していたキアヌがぽろぽろと摘まみ続けながら言った。
「天才は言いすぎですが、まあそこそこは尊敬してください」
一日の疲れも忘れて笑いあったティナたちはそれぞれの部屋に引き取り眠りについた。
ティナが部屋に入ると子守のシスターと遊んでいたアーレントがよたよたと歩いてきた。
「ただいま、アーレント。良い子にしてましたか?」
「あいっ!おたーたま」
『アーレントはやっぱりかわいい!』
神の声が頭の中に響き、ティナは苦笑した。
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