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計画は順調です

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ランバーツ伯爵を死に追いやり、その娘であったティナロアを屋敷と共に売り飛ばした後妻母娘が、抜けることのできない蟻地獄に嵌り込んで行くのと反比例する様に、キアヌ達の交渉は実を結んでいった。

実務者レベルでの調整も進み、工事業者による現地調査も終盤を迎えている。
人命に関わる案件のため、治山工事とダム工事はほぼ同時進行で進められることになった。

帝国側の責任者と共に、治山工事にはロバート伯爵が、ダム工事にはワンド伯爵が責任者として出張る。
キアヌは皇宮内に用意された管理事務所に詰め、報告されてくる進捗状況の把握や必要物資の調達指示など、寝る間も惜しんで奮闘していた。

そのうちに帰る時間も惜しくなったキアヌは事務所内にベッドを持ち込んで泊まり込むようになる。
そうなるとベルツ王国が借り上げている家にはティナの護衛騎士とメイド達だけが済むことになり、キリウスの心配が増えてしまった。

「ティナ嬢、そろそろ城に越してきませんか?キアヌ殿もほとんど帰っていない今、ティナ嬢だけ家に帰るという必要性もないでしょう」

「それはそうなのですが・・・屋台のこともありますし」

「まだ続けるのですか?そもそも私にコンタクトをとるという目的は果たしているのですから閉めても良いのでは?」

「確かに・・・でもなかなか人気があって・・・」

「閉めにくいですか。まあティナ嬢のフィッシュバーガーは最高ですからね。わからなくも無いですけど・・・地元の民に屋台の権利とレシピを売ってはどうですか?」

「売る?レシピを?」

「ええ、すぐに買い手は着くと思いますが・・・いっそ私が買い取って誰かにやらせようかな・・・うん。それがいいかも」

「キリウス様がオーナーに?」

「ええ、どうですか?」

「キリウス様なら信頼できますし、何の問題もありませんがご迷惑ではないですか?」

「いいえ。むしろ市井の動きや思想も探れる絶好の拠点となりますから、ありがたいのですが・・・どうですか?」

「はい、そのお話に乗りました!」

「ははは、あの頃のティナ嬢を思い出しますね。あなたはとても苦労をなさったのでしょうが、私にとってはとても平和で楽しい時間でしたよ」

「苦労というほどでは無いですし、そのことが無ければ今の私はありませんから。そうですね、確かに今となっては良い思い出ですわね」

「今だから言いますけど・・・私は本気であなたのことが好きだったのですよ?」

「っう・・・すみません・・・そういったことにはさっぱり疎くて・・・ごめんなさい」

「いいえ、そんなあなただからこそ思いを寄せたのです」

ティナが真っ赤な顔をして俯いていたらバンという大きな音がして宰相執務室の扉が開いた。

「アーレント~!!!父様だぞ~。お菓子を持ってきたぞ~」

にやけた顔でハーベストが籠を抱えて入ってくる。
床で遊んでいるアーレントの前に籠を置いたハーベストはティナに近づき抱き寄せた。

「まあハーベスト様!あんなにお菓子ばかり与えては食事をしなくなってしまうと申し上げましたでしょう?」

「いいではありませんかティナ。アーレントがお菓子に夢中になってくれている間はあなたを独占できるのですから」

ハーベストはぎゅっとティナを抱きしめて胸に顔を埋めてティナの香りを満喫している。

「もう・・・困った皇帝さまだこと」

キリウスが額に手をやりながらハーベストに言った。

「お前・・・仕事は終わったのか?」

キリウスの声にティナの胸の谷間から顔を上げたハーベストがぼそっと返事をする。

「なんだ、お前そこにいたのか。ティナと一緒にいるなんて羨ましい奴だな」

「ここは俺の執務室だからな」

「・・・フンっ!」

「なんだ?せっかき良い話を纏めてやったのに」

「良い話?なんだそれ」

「ティナ嬢に関することだ。そろそろ屋敷を引き払ってこちらに居を移してもらう」

「本当か!キリウス!」

「ああ、近いうちに引っ越してもらうよ」

「それは嬉しい!私の部屋の隣はずっとティナのために開けてあるからな。今日からでも問題ない」

「あのなぁ・・・お前の隣って・・・無理に決まってるだろ?まずはリリベル妃には何かしらの理由をつけて本宮に戻ってもらい、その侍女としてティナロア嬢を迎え入れる」

「なるほど・・・で、俺は毎晩ティナの部屋に帰るのだな?」

「まあ、そうなると貴族たちの噂になるだろうな。ハーベストは父親の側妃に夢中だと」

「うっ・・・流石にそれは・・・困る」

「ははは~今更お前が悪評を気にするか?心配するな、手は考えてある」

「ここまで待たされたんだ。お前に全部任せるよ」

「ああ、それが賢明だろう・・・っていうか、お前なぁ・・・人と話している時くらいティナ嬢を離せ!」

「なぜ?」

「・・・いや・・・なんでもない。ああ!そういえばレナードから連絡があったんだ!」
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