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幼馴染で大親友

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キリウスから説明を受けたハーベストにも全面的な賛同と支援を約束した。
帰国を取りやめたキアヌは以前にも増して睡眠時間を削るほどの激務をこなしている。
アルベッシュ帝国の正式文書として発送された招待国への案内も無事に到着し、詳細を詰める会議から参加したいと申し出た国も多く、それぞれの国のトップレベルの知能がアルベッシュ帝国に集結しつつあった。

ティナは時々会議に呼ばれる以外はリリアンと一緒にアーレントのお守りをして過ごしていた。

『アルに呼ばれてティナロアになってから、今が一番平和だわ』

『そうだな。お前にはいろいろ苦労を掛けたからなぁ。まあ夫婦になった暁には百億倍返しをするから』

『単位が大きすぎて逆にコワイわ・・・』

『そういえばティナの弟がいただろ?ジュリア。結婚したぞ』

『えっ!結婚・・・もしかしてシェリー?』

『ご名答。二人で教会と孤児院を上手く運営してる。もう任せても大丈夫だから天使は戻したよ』

『そう、ちゃんとやってるんだ・・・安心したわ。ありがとうねアル』

『お前の弟は俺の弟でもあるからな。まあ時々様子を見に行ってあの旨いけど、手がべとべとになる鶏肉を一緒に食ってこよう』

窓辺に置いた椅子にゆったりと座り、柑橘の香りがする紅茶を飲みながらアルフレッドと脳内デートを楽しんでいた時、部屋のドアが遠慮がちにノックされた。

『ん?珍しいお客様のようだぞ?』

『誰かしら?アル・・・また後でね』

ティナは立ち上がってドアを開けた。

「まあ!マリアンヌ皇女様。どうなさったのですか?さあどうぞお入りください」

少し目元を赤く腫らして俯いていたマリアンヌがコクっと頷いて入ってきた。
メイドに新しい紅茶とお菓子の準備を頼み、ソファーを勧めるティナ。
いつも一緒にいる侍女一人を連れてマリアンヌが座った。

「マリアンヌ皇女様?如何されたのですか?お顔の色があまりよろしくありませんわ」

「ティナロア様・・・実は私・・・自国の説得に失敗したのです」

「自国の説得でございますか?ああ・・・例の?」

「はい。現皇帝である兄はハーベスト陛下の正妃以外は認めないと・・・騎士上がりの宰相など以ての外だと申しますの。挙句の果てに役立たずは帰国せよと・・・」

「それはお辛いですわね」

「ええ、帰国したら私はまたどこぞの王族に娶わせられるのだと思います。拒めば兄は迷うことなく私に毒杯を渡すでしょう」

「そんな!」

「私はキリウス様以外の方との婚姻など絶対に嫌なのでございます」

「もちろんそうでしょうとも」

「ですから・・・先日キリウス様とハーベスト様がせっかく考えてくださったプランを真っ向から否定した自分の幼稚さに嫌気がさしておりますの」

「・・・マリアンヌ皇女様」

「どうぞお笑いになって?あんなに否定した同じ口で・・・ティナロア様にご相談をしているのですもの」

「笑うなど!あの時のマリアンヌ皇女様はとても凛々しくて、お美しかったですわ」

「いえ・・・お恥ずかしいですわ。私はそもそも第二側妃の娘です。子供のころから他国との橋渡しとなるべく育てられた駒なのです。親の愛も兄妹の愛も知らずに育ちました。そんな私が心からお慕いし、ご信頼申し上げる事ができたのがキリウス様なのです。もしもキリウス様と引き裂かれ他国へ嫁ぐくらいなら、私は喜んで毒杯を賜る所存でございます」

「マリアンヌ皇女様!早まってはいけません!私が何か良い手を考えますから!」

「ティナロア様・・・」

マリアンヌは化粧が剝がれることも厭わず泣き崩れるマリアンヌを前に呆然とした。

「マリー!」

キリウスがノックもなく部屋に駆け込んできた。

「あっ!レディティナ・・・申し訳ございません」

「大丈夫ですわ、キリウス様」

キリウスはティナに目礼だけして、泣きじゃくるマリアンの前に回り込み跪いた。

「マリー、私は覚悟を決めました。命に代えてもあなたを手放したくありません。私が・・・エイアール国に行き国王陛下に直接婚姻のご承認を頂いて参ります」

マリーが目を見開いて顔を上げた。

「なりません!キリウス様。殺されてしまいます。兄は欲深い人です。あなたを人質にして見返りを求めるはずです。それを拒めば見せしめに・・・」

「心配いりませんよマリー。私もアルベッシュ帝国の宰相を任される身です。私に手をかけるほどのバカはいないでしょう。もしそうなっても・・・私の命がどれほど重たいかを身をもって知ることになるだけです。それより私はあなたの心の重荷の方が心配です」

「キリウス様・・・どうか・・・思いとどまってくださいませ・・・」

「そうだぞキリウス。早まるな」

ハーベストが部屋に入ってきた。

「アル・・・」

「そうだ。俺がアルでお前がイース。そう呼び合った仲じゃないか。水臭い」

「よろしければ私からご提案があります」

ハーベストの後ろからひょっこりキアヌが顔を出した。
騎士として鍛え上げたハーベストに比べると、キアヌは背も体も一回り小さい。
キアヌ単体で見るとスラっとした見目麗しい王子様という風情だが、ハーベストと並ぶとどうしても貧弱という印象が否めない。

「まあ!陛下も殿下も・・・私のために・・・申し訳ございません。しかし・・・」

ハーベストが笑いながらマリアンヌの言葉を遮る。

「皇女様のためというより我が大切な幼馴染であり、大親友キリウスのためです。彼の幸せは私の幸せであり、彼が幸せになるためにはマリアンヌ姫が幸せになる必要があるということです」

「・・・陛下」

マリアンヌが立ち上がって深々とお辞儀をした。
ティナが場の雰囲気をかえるように努めて明るい声を出した。

「キアヌ殿下、ご提案というのは?」

キアヌがニコッと笑って口を開いた。

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