転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~

志波 連

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「殿下、ロバート様とライラはお付き合いをしている仲なのです。恋人にしかわからない何か感じるものがあったのではないでしょうか」

「そうなのか?」

「……はい」

「そうか、そういうものか。それにしても恋人にしかわからない何かとはなんだ?」

 サリーは心の中で舌打ちをした。

「私が賊に飛び掛かった時、服を引き剝がして逃亡を阻止しました。ロバート様は賊の剝き出しになった背中を見て、ライラとの違いに気付いたようです。ね? そうですよね?」

 サリーの暴露にロバートの顔が一気に染まる。
 聞いていたイースの顔も真っ赤になっていた。

「そ……それは……ああ、そうだな。恋人同士なら……そういうことも……あるのだろう」

 なぜイースが赤くなる? サリーはそう思ったが口には出さなかった。
 暫しの沈黙の後、廊下で控えていた衛兵に、犯人を連行するよう指示を出すイース。

「本物のライラはどこにいるんだ?」

 ロバートが立ち上がった。

「殿下、ライラの捜索を許可して下さい。彼女は昨日から実家に戻っているはずなのです」

「実家か。彼女の実家は?」

「王都の西の町です」

「ウェスト地区か。わかった、すぐに指示を出そう。しかし慎重に動く必要があるな」

「ええ、もしも何かの事件に巻き込まれていたら……彼女が心配です」

「そうだな。シューンのこともある。父に相談し影を貸していただこう」

 そう言うなりイースは立ち上がった。
 テキパキと指示を出して自分は父王のところに向かうようだ。
 イースは振り返って二人に言った。

「今夜は近衛をこの部屋に残す。君たちはゆっくり休んでくれ」

 サリーが慌てて言う。

「私はシューン殿下の側に控えております」

 イースはニコッと笑って小さく頷いた。

「では、頼む」

 ロバートも残ることになり、近衛隊長も同席することになった。
 ドアの外もしっかりと固められ、サリーはホッと息を吐いた。
 サリーがお茶を淹れてテーブルに並べる。
 一口飲んだ近衛隊長が、穏やかな声で言った。

「さあ、もう大丈夫ですから。そろそろ本当のことを言ってくださいね?」

 ロバートとサリーが、ほぼ同時に溜息を吐いた。
 その瞬間、二人の脳内にウサキチの声がした。

(こいつはシューンにとって重要な役割を担っているんだ。今のうちに仲間にしておけ)

 チラッとウサキチを見た後、サリーは意を決して顔を上げた。

「実は……」

 自分が転生者であることや、なぜか魔法が使えること、そしてシューンが担う重要な役割があり、それを実行させるために神の使いが側にいることなどをゆっくりと語るサリー。
 真面目な顔で聞いていた近衛隊長が、話し終わったサリーに言った。

「それを信じろと?」

「信じてもらうしか無いですね。見せましょうか? 魔法」

 チラッとロバートを見るサリー。
 全力で拒否するロバートが、声を出した。

「それは体験してもらった方が絶対に早いと思うぞ」

「そうね。では隊長、何になりたいですか?」

「言っている意味がわからんが……もし万が一戻らない場合も想定する必要がある。私以外で試してくれ」

「なるほど。でもこの力は必要最低限の人間にしか知らせたくないのです。本当ならあなたにも教えたくなかった」

「ほう? ではなぜ教える気になった?」

「神の使いが……そうしろと……」

「どこにいるんだ?」

 サリーが立ち上がりシューンの側に行った。

「ここに」

 ウサキチを抱き上げる。
 近衛隊長の目が点になっていた。

「冗談にしても、もう少し捻ってくれ」

「冗談ではないのです」

「ダメだ。笑いのツボがわからない」

 その時ドアがノックされた。
 ロバートがドアを開けるとイースが立っていた。

「手配は済んだ。父も感謝をしていたよ。ん? どうした? 何か雰囲気が……」

(仕方がない。こいつも引き入れろ。こいつもキーマンだしな)

 無責任なウサキチにサリーは少しだけ腹が立ったが、それ以外に方法はない。

「殿下、心してお聞きください」

 サリーは近衛隊長に話したのと同じことを説明した。

「それを信じろと?」

 一言一句違わないリアクションに、サリーは脱力した。

「信じていただくためには、体験していただくのが一番だとは思いますが……元に戻った時の状態を考えると、絶対に不敬罪で処刑されると思うので、今回はロバートでお見せします」

 ロバートはブンブンと首を振りながら後退るが、三人の視線に己が運命を受け入れた。

「どうぞ。でも服はあの衝立の向こうに置いてくださいね。絶対に約束してくださいね」

 サリーは頷きもせず笑顔だけを見せた。

「サリー……信じているからな」

 近衛隊長が口を開いた。

「私が責任をもって実行しよう」

 ロバートが安堵の表情で何度も頷いた。
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