誰が彼女を殺したのか

志波 連

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34 おばあ様の提案

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「そのアース様っていう方が創造主なのね?」

「ええ、でもお名前で呼ばれるのがお好きみたいよ。とても紳士的で素敵な方なの」

「お前の魂が人生を全うするために、手放してくださったのね?」

「そうなの。本当はずっと一緒にいたかったのだけれど、やっぱりおばあ様のことが心配で戻ることにしたのよ」

「ということは、私はそろそろお迎えが来るのね」

「それは……」

「いいのよ、マリア。私は十分に長生きしたわ。あなたが亡くなったってアレンさんに聞いて絶望したけど、あなたは戻ってきてくれた。それだけで十分よ」

「ありがとう、おばあ様。それでね、アレン様にはなんてお話しすればいいかと思って、悩んでいるの」

「きっと本当のことを話しても混乱するだろうし、信じることはできないでしょうね。だからあなたは私が拾ってきたことにするわ。どこに落ちていたことにしようかしら?」

「なんだか猫みたいね。ふふふ、どこにしましょうか。お庭?」

「そうね、庭に迷い込んできたところを拾って、私の話し相手にすることにしたって言いましょう。信じなくても関係ないもの」

「おばあ様、なんだか楽しそう」

「だってマリアが戻ってきたのだもの。これほどの悦びは無いわよ。マリアのお部屋はそのままにしてあるわ。アレンさんはおじい様の部屋を使っているの。あなたがもし嫌なら、アレンさんには領主館にお帰りいただきましょう」

「わたしね、アース様と一緒に空間の世界からずっと見てたのよ? アレン様はおばあ様にとても良くして下さって嬉しかったわ。だからアレン様の楽しみを取り上げちゃ可哀想だと思うの」

「そう? あの子はもう大丈夫だと思うわよ? 最初あった時には驚くくらい憔悴していてね。それこそ魂が萎んでいるようだったわ。マリアを死なせたのは自分だって言って、全部話してくれたの。その話を聞いて、私は思ったのよ。この子をここで突き放したら、命を粗末にするほど働いてしまうんだろうなって。だから私の介護をお願いしたのよ」

「ええ、全部見ていたわ。それにね、私も思いついた事があって、領主様に力を貸していただければって思っているの。私がちゃんと人生を終わらせるまでに実現したいことなの」

「それはなあに?」

「お年寄りが安心して暮らせる施設を作る事よ。おばあ様も入ってらしたモーリス病院より断然安くて暮らしやすい場所にするの」

「それはいいね。応援するから頑張ってみなさい」

 二人は時間も忘れてお喋りを続けた。
 ふと気づくと西の空がオレンジから濃紺に変化し始める時間になっていた。
 門のところで馬が嘶き、アレンの帰着を知らせる。

「ただいま帰りました。すぐに夕食の準備をします……お客様でしたか。失礼しました」

 マリアは立ち上がって丁寧なお辞儀をした。

「初めまして、私はマリアと言います」

 アレンの肩が大きく揺れた。
 マーガレットがニコニコと笑いながら口を開く。

「きょうね、庭で拾ったの。とても素敵なお嬢さんでしょう? 私の話し相手になってもらうことにしたから、今日から三人で暮らしましょうね」

「えっ……拾ったって……え?」

「そうよ、拾ったの」

「そんな猫の子じゃあるまいし。マリア嬢と言われましたね? お住まいはどちらなのですか? もう遅いですしお送りしましょう」

「私の住まいはここですわ。親も姉妹もいませんから、心配する人はいないのです。ですからここに住まわせてくださいませんか?」

「それは……」

 マーガレットが口を挟む。

「ここの家長は私です。私が許可したのよ? 問題ないでしょう?」

「はあ、まあそれはそうですが」

「それともこんな若くて可愛らしいお嬢さんと一緒に暮らすのは気が引ける? もしそうなら領主館に戻ってもいいけれど……」

「あっ、いえ……私は……」

 口ごもるアレンの顔をマリアとマーガレットが微笑みながら見ている。

「マーガレットさんさえ良ければ、今まで通りに」

「そう? では決まりね。このマリアにはあのマリアの部屋を使ってもらうから。それと家事は分担しなさい。朝は今まで通りアレンさんね。夕食はマリアが作りなさい。それと私の入浴もマリアにお願いしたいわ」

「はい、おばあ様」

 アレンも納得していないながらも頷いた。

「わかりました」

 マーガレットは上機嫌だ。

「今日はいつも通りにアレンさんにお願いするわね? ところで今日の夕食は何かしら?」

「あっ、今日は白身魚のムニエルを作ろうかと思っています」

「三人分ある?」

「はい、多めに準備していますので大丈夫です」

「楽しみだわ。あのねマリア。アレンさんって随分腕を上げたのよ? あなたも楽しみにしていなさいね」

「はい、おばあ様。よろしくお願いしますアレン様」

 アレンは頭の上にたくさんのはてなマークを浮かび上がらせながら台所に消えていった。
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