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11 卒業式です
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それから二週間ほど、ドイル邸で療養した私はララと一緒に寮に帰りました。
寝ている間はずっとジョアンが部屋にいてくれました。
特に何も話すこともなく、エヴァン様に強請った土の図鑑を、床に寝転がって見ているだけなのに、なぜか私はとても癒してもらっている気分でした。
私が復学するまでは自宅通学を許されているララは、毎日授業内容を話してくれました。
少しでも遅れを取り戻さなくてはいけませんから、とてもありがたいです。
エヴァン様も毎日というわけではありませんが、顔を見せて下さいました。
伯爵がお見舞いだと言って毎日花を届けてくださいました。
さすがスパダリ親子というところですね。
リリアナ夫人から聞きましたが、アランが何度か会いに来たそうです。
もちろん門前払いで、持参した花も受け取らなかったそうですが。
「顔はまだ腫れてたわよ。エヴァンったらどれだけ本気で殴ったのかしらね」
「吹っ飛んでましたから」
「いい気味だわ。頬骨を粉砕骨折していて顔の形が変わればいいのに」
リリアナ夫人はそう言って悪い顔をしたあと、私にウィンクをしました。
私のことで私以上に怒ってくれる人たちが、こんなにいることが救いになりました。
私は父の願いを叶えることはできませんでしたが、幸せ者だなと思います。
ハイド伯爵夫妻の心労は如何ばかりかとは思いますが、そこは親子三人で解決してもらうしかありません。
私はあの方たちに育てていただきましたから、申し訳ない気持ちはありますが、そのために私以外の女性に心を捧げた人と一生添い遂げることなど絶対に無理です。
復学した私には、なぜか王家から差し向けられた護衛が一人つけられました。
エヴァン様が言うには皇太子殿下の差配だそうで、マリア王女殿下を牽制するためだそうです。
まさか私に何かをしてくるとは思えませんが、卒業式はもうすぐですから備えあれば憂いなしということで、ありがたく護衛していただいています。
ちなみについてくださった護衛の方は女性で、この学園の卒業生なのだそうです。
夜も私たちの部屋に寝泊まりされて、勉強を教えてくださいます。
護衛よりむしろこちらの方がありがたいというのは内緒ですけど。
アランからは毎日のように手紙が来ますが、開封せずそのまま送り返しています。
何度か花もきましたが、今更何のつもりなのでしょうね。
部屋に飾る気にはなれませんが、花に罪はないので学食に飾ってもらいました。
本音を言えばアランの顔を見たいし、話もしたいという気持ちがあります。
これが未練というものなのかと思いますが、やっと見つけた治療教育者という未来を実現するためには、断ち切るしかないのです。
何事もなかったように接してくれるララやクラスメイト達には感謝しかありませんが、私は自分ではどうすることもできない複雑な心境のまま、卒業式の日を迎えました。
「大丈夫?」
ララが心配してくれます。
「うん、大丈夫。しっかり見送るよ」
「そう、ずっと一緒にいるから安心してね。お兄様もいるし」
「ありがとう」
私たちは手をつないで卒業式の会場に向かいました。
卒業生が在校生に拍手で迎えられて入場してきます。
もう割り切ったつもりでも、列の中にアランを探してしまう私は未練がましい女です。
「来たわ」
ララが私より先にアランを見つけて教えてくれます。
あれほど目で探していたくせに、いざとなると顔を伏せてしまいました。
卒業生の入場が終わり、王太子殿下が壇上で祝辞を述べられます。
王太子殿下の後ろにはエヴァン様が控え、ララを見つけて手を振りました。
あの方は緊張するという事が無いのでしょうか?
「卒業生のみなさん。卒業おめでとう。これから成人として社会に巣立つ皆さんに、私から祝いの言葉を贈ろう。『囚われず、拘らず、偏らず』これは私の恩師から頂いた言葉だ。君たちの未来は輝かしい事ばかりではないだろう。悩み、迷い、苦しむことも多いはずだ。その時にこの言葉を思い出してほしい。社会が君たちに何をしてくれるかを考えるより、君たちが社会のために何が出来るかを考える人材であることを心から願っている。健闘を祈る」
さすが皇太子殿下です!感動しました!
仰る通りです。
親の願いに囚われ過ぎて、それを全うすることに拘り過ぎた結果、偏った考えを持ってしまった私たちが、正しい思考を持てるはずがありません。
目から鱗が落ちたような気分です。
学長や教授陣からの祝辞が終わり、卒業生が退場します。
入場の時とは違い、私は顔を上げて拍手をしました。
一瞬アランと目が合ってドキッとしましたが、それだけです。
アランは悲痛な顔をしていましたけど、今更ですね。
マリア王女殿下はこちらを見ることもなく、美しい微笑みを湛えて退場していきます。
さすが王族ですね、心臓に剛毛でも生えているのでしょうか。
それとも彼女にとっては些細なことだったのでしょうか?
夕方からは卒業を祝うダンスパーティーが開催されます。
当然ですが、アランからドレスは届きませんでした。
貰っても着ませんけどね?
その代わりと言っては失礼ですが、ドイル伯爵がララと私にドレスを贈ってくださいました。
お見立てはリリアナ夫人だそうで、ララには可愛らしいオレンジ色のAラインドレス、私には紫色のエンパイアドレスです。
まだ胃に負担を掛けるわけにはいかない私に、コルセットをしなくて済むエンパイアを選ぶなんて、本当に私のためを思ってくださっていることをひしひしと感じます。
入場は護衛騎士のお姉さまが正装してエスコートしてくださいました。
エヴァン様はお忙しいそうで、ララも一緒に三人で入場します。
「お兄様より断然かっこいいわ」
ララはそう言ってニコニコしています。
「エヴァン様とは比べ物にもなりませんよ」
そう言って謙遜されますが、ストレートの黒髪を後ろでキリっとひとつに縛り、白地に金のモールでシンプルな飾りがついた騎士の正装って、本当にかっこいいです。
壇上におられるエヴァン様は文官の正装なのでしょうか、濃紺に金モールが良く映えています。
皇太子殿下がにこやかに開会を宣言されました。
ファーストダンスは留学生であるマリア王女殿下が務めることになっているので、パートナーはアランでしょうね。
見たくもあり、見たくもなしという感じです。
「あれ?お相手は皇太子殿下なのね。てっきりアランだと思ったけど。それにあの二人は色を合わせていないわ」
ララが小首を傾げて言いました。
私も不思議に思ってエヴァン様を見たら、ニコニコ笑いながらVサインをしています。
私を気遣って無理やり皇太子殿下に押し付けたのかもしれません。
マリア王女は無表情で踊っていますが、さすがに王太子殿下の誘いは断れませんよね。
ファーストダンスが終わり、生徒たちがダンスフロアに向かいました。
ララと私はお料理コーナーにまっしぐらです。
とはいえ、まだカスタードプディングしかいただけませんが。
「あれ?プディングもいいけど、ロゼのためにポタージュスープも用意したんだよ?」
後ろからエヴァン様の声がしました。
護衛騎士のお姉さまが一歩下がり小さく礼をされています。
「好きだろ?かぼちゃのポタージュ」
そう言ってスープカップを私に手渡してくださいました。
「ありがとうございます。でもかぼちゃが好きって子供みたいで恥ずかしいです」
「子供じゃないさ。君は立派なレディだ。それを飲み終わったら踊らないか?」
「いいんですか?」
「もちろん。というより今日はそのために来たんだ。衣装も紺色にしたかったから、少し厚手だけどこれにしたんだから」
私は急いでポタージュスープを流しこみました。
寝ている間はずっとジョアンが部屋にいてくれました。
特に何も話すこともなく、エヴァン様に強請った土の図鑑を、床に寝転がって見ているだけなのに、なぜか私はとても癒してもらっている気分でした。
私が復学するまでは自宅通学を許されているララは、毎日授業内容を話してくれました。
少しでも遅れを取り戻さなくてはいけませんから、とてもありがたいです。
エヴァン様も毎日というわけではありませんが、顔を見せて下さいました。
伯爵がお見舞いだと言って毎日花を届けてくださいました。
さすがスパダリ親子というところですね。
リリアナ夫人から聞きましたが、アランが何度か会いに来たそうです。
もちろん門前払いで、持参した花も受け取らなかったそうですが。
「顔はまだ腫れてたわよ。エヴァンったらどれだけ本気で殴ったのかしらね」
「吹っ飛んでましたから」
「いい気味だわ。頬骨を粉砕骨折していて顔の形が変わればいいのに」
リリアナ夫人はそう言って悪い顔をしたあと、私にウィンクをしました。
私のことで私以上に怒ってくれる人たちが、こんなにいることが救いになりました。
私は父の願いを叶えることはできませんでしたが、幸せ者だなと思います。
ハイド伯爵夫妻の心労は如何ばかりかとは思いますが、そこは親子三人で解決してもらうしかありません。
私はあの方たちに育てていただきましたから、申し訳ない気持ちはありますが、そのために私以外の女性に心を捧げた人と一生添い遂げることなど絶対に無理です。
復学した私には、なぜか王家から差し向けられた護衛が一人つけられました。
エヴァン様が言うには皇太子殿下の差配だそうで、マリア王女殿下を牽制するためだそうです。
まさか私に何かをしてくるとは思えませんが、卒業式はもうすぐですから備えあれば憂いなしということで、ありがたく護衛していただいています。
ちなみについてくださった護衛の方は女性で、この学園の卒業生なのだそうです。
夜も私たちの部屋に寝泊まりされて、勉強を教えてくださいます。
護衛よりむしろこちらの方がありがたいというのは内緒ですけど。
アランからは毎日のように手紙が来ますが、開封せずそのまま送り返しています。
何度か花もきましたが、今更何のつもりなのでしょうね。
部屋に飾る気にはなれませんが、花に罪はないので学食に飾ってもらいました。
本音を言えばアランの顔を見たいし、話もしたいという気持ちがあります。
これが未練というものなのかと思いますが、やっと見つけた治療教育者という未来を実現するためには、断ち切るしかないのです。
何事もなかったように接してくれるララやクラスメイト達には感謝しかありませんが、私は自分ではどうすることもできない複雑な心境のまま、卒業式の日を迎えました。
「大丈夫?」
ララが心配してくれます。
「うん、大丈夫。しっかり見送るよ」
「そう、ずっと一緒にいるから安心してね。お兄様もいるし」
「ありがとう」
私たちは手をつないで卒業式の会場に向かいました。
卒業生が在校生に拍手で迎えられて入場してきます。
もう割り切ったつもりでも、列の中にアランを探してしまう私は未練がましい女です。
「来たわ」
ララが私より先にアランを見つけて教えてくれます。
あれほど目で探していたくせに、いざとなると顔を伏せてしまいました。
卒業生の入場が終わり、王太子殿下が壇上で祝辞を述べられます。
王太子殿下の後ろにはエヴァン様が控え、ララを見つけて手を振りました。
あの方は緊張するという事が無いのでしょうか?
「卒業生のみなさん。卒業おめでとう。これから成人として社会に巣立つ皆さんに、私から祝いの言葉を贈ろう。『囚われず、拘らず、偏らず』これは私の恩師から頂いた言葉だ。君たちの未来は輝かしい事ばかりではないだろう。悩み、迷い、苦しむことも多いはずだ。その時にこの言葉を思い出してほしい。社会が君たちに何をしてくれるかを考えるより、君たちが社会のために何が出来るかを考える人材であることを心から願っている。健闘を祈る」
さすが皇太子殿下です!感動しました!
仰る通りです。
親の願いに囚われ過ぎて、それを全うすることに拘り過ぎた結果、偏った考えを持ってしまった私たちが、正しい思考を持てるはずがありません。
目から鱗が落ちたような気分です。
学長や教授陣からの祝辞が終わり、卒業生が退場します。
入場の時とは違い、私は顔を上げて拍手をしました。
一瞬アランと目が合ってドキッとしましたが、それだけです。
アランは悲痛な顔をしていましたけど、今更ですね。
マリア王女殿下はこちらを見ることもなく、美しい微笑みを湛えて退場していきます。
さすが王族ですね、心臓に剛毛でも生えているのでしょうか。
それとも彼女にとっては些細なことだったのでしょうか?
夕方からは卒業を祝うダンスパーティーが開催されます。
当然ですが、アランからドレスは届きませんでした。
貰っても着ませんけどね?
その代わりと言っては失礼ですが、ドイル伯爵がララと私にドレスを贈ってくださいました。
お見立てはリリアナ夫人だそうで、ララには可愛らしいオレンジ色のAラインドレス、私には紫色のエンパイアドレスです。
まだ胃に負担を掛けるわけにはいかない私に、コルセットをしなくて済むエンパイアを選ぶなんて、本当に私のためを思ってくださっていることをひしひしと感じます。
入場は護衛騎士のお姉さまが正装してエスコートしてくださいました。
エヴァン様はお忙しいそうで、ララも一緒に三人で入場します。
「お兄様より断然かっこいいわ」
ララはそう言ってニコニコしています。
「エヴァン様とは比べ物にもなりませんよ」
そう言って謙遜されますが、ストレートの黒髪を後ろでキリっとひとつに縛り、白地に金のモールでシンプルな飾りがついた騎士の正装って、本当にかっこいいです。
壇上におられるエヴァン様は文官の正装なのでしょうか、濃紺に金モールが良く映えています。
皇太子殿下がにこやかに開会を宣言されました。
ファーストダンスは留学生であるマリア王女殿下が務めることになっているので、パートナーはアランでしょうね。
見たくもあり、見たくもなしという感じです。
「あれ?お相手は皇太子殿下なのね。てっきりアランだと思ったけど。それにあの二人は色を合わせていないわ」
ララが小首を傾げて言いました。
私も不思議に思ってエヴァン様を見たら、ニコニコ笑いながらVサインをしています。
私を気遣って無理やり皇太子殿下に押し付けたのかもしれません。
マリア王女は無表情で踊っていますが、さすがに王太子殿下の誘いは断れませんよね。
ファーストダンスが終わり、生徒たちがダンスフロアに向かいました。
ララと私はお料理コーナーにまっしぐらです。
とはいえ、まだカスタードプディングしかいただけませんが。
「あれ?プディングもいいけど、ロゼのためにポタージュスープも用意したんだよ?」
後ろからエヴァン様の声がしました。
護衛騎士のお姉さまが一歩下がり小さく礼をされています。
「好きだろ?かぼちゃのポタージュ」
そう言ってスープカップを私に手渡してくださいました。
「ありがとうございます。でもかぼちゃが好きって子供みたいで恥ずかしいです」
「子供じゃないさ。君は立派なレディだ。それを飲み終わったら踊らないか?」
「いいんですか?」
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私は急いでポタージュスープを流しこみました。
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