24 / 68
24 子供たちの不思議な会話
しおりを挟む
今度はジョアンがニコッと笑いました。
彼らは何か特殊な意思疎通方法をもっているのでしょうか?
絵を描く作業に戻ろうとしたアレクが私に気づいて言いました。
「ローゼリア」
ドレックがその声に反応します。
「ローゼリア」
するとジョアンが口を開きました。
「ローゼリアはエヴァンの」
エスメラルダが不思議そうな顔をします。
「エヴァン?」
ジョアンが頷くとエスメラルダが喋りはじめました。
『やあ!エヴァン君。久しぶりだね』
『ご無沙汰していますサリバン先輩。お時間をいただいて恐縮です』
『いやいや、私も楽しみにしていたんだ。なぜ君ばかりが女性にモテるのかを研究する件だけど、そろそろ協力する気になったかな?』
『いや、それは絶対にお断りです。今日は私の婚約者を紹介したいと思って連れてきました』
『へぇ…エヴァン君の婚約者かぁ。実に興味深いな』
『彼女は治療教育に興味を持っているんですよ。できればその道に進みたいと考えているので、連れてきました。ジョアンも彼女のことが大好きなんですよ』
『ジョアン君が認めているなら適性は申し分ないね。それにしてもこの分野に興味を持つなんて珍しいご令嬢だ』
話していた私はそこまで詳細に覚えていませんが、おそらく一言一句間違っていないと思ます。
しかも話すたびに場所を移動して仕草も真似するので、誰が発言していたのかまでわかります。
サリバン博士は聴覚がトリガーと言っていましたが、エスメラルダの能力はその場の全てを完璧に記憶するものの様です。
「驚いたな。どのくらい過去まで記憶しているのだろう」
いつの間にか部屋に入っていたサリバン博士が目を見開いています。
その後ろでリリアナ夫人もとても驚いた顔をしていました。
エスメラルダがまた喋りはじめました。
『はじめまして、サリバン博士。私はこの子の母親でルーラと申します。お招きに応じて参りましたがエスメラルダはここで何をするのでしょうか?』
『はじめましてルーラ夫人。私はハロルド・サリバンと申します。ここの責任者です。お嬢さんに何をさせるかというお話ですが、特に何もさせることはありませんよ?自由に過ごして貰えればそれだけで結構です』
『まさか。それだけであのお金をいただけるのですか?』
『ええ、もちろんです。こちらでの生活費も必要ありません』
『まあ!そうですか。ではこれが領収証です。もうお伺いすることは無いと思いますので、娘をよろしくお願いします。エスメラルダ、博士のいうことを良く聞いて大人しくしていなさい。お母さんもお父さんもお兄ちゃんも引っ越すから、もう会えないわ。とにかくあの気持ち悪い癖を出さないようにしないといけないわよ』
『夫人、そういう言い方は…』
『だってこの子のあの気持ち悪い癖のせいで、ご近所から変な目で見られていたんですから。こちらで引き取っていただけてお金までもらえて助かりましたよ。じゃあねエスメラルダ』
『エスメラルダ嬢は責任をもってこちらでお育てしますので安心してください』
『ええ、どうとでもなさって下さい。じゃあね、エスメラルダ。これでさよならよ』
私は思わずエスメラルダに駆け寄って抱きしめてしまいました。
エスメラルダは不思議そうな顔で私を見上げています。
すると他の三人の子供たちも駆け寄ってきて、私の足に抱きつきました。
困った私はサリバン博士の顔を見ました。
博士はゆっくりと頷いて言いました。
「今の会話は彼女がここに来た初日に、母親と交わしたものだ。彼女は三歳だったから七年前のものだ。凄いな…もしかしたら生まれた時から全ての記憶があるのかもしれない」
リリアナ夫人が目を見開いて博士を見ました。
その視線に気づいた博士はリリアナ夫人を促して退出しました。
博士は振り向きながら私に言いました。
「大丈夫そうなら部屋に来てくれないか」
私は頷きましたが、エスメラルダが親に売られたような存在だという現実に、まだ戸惑っています。
もしかしたら他の二人も同じような境遇なのかもしれません。
私はそれが事実だったらと考えただけでも泣きそうな気分になって、とても確認することはできませんでした。
彼らは何か特殊な意思疎通方法をもっているのでしょうか?
絵を描く作業に戻ろうとしたアレクが私に気づいて言いました。
「ローゼリア」
ドレックがその声に反応します。
「ローゼリア」
するとジョアンが口を開きました。
「ローゼリアはエヴァンの」
エスメラルダが不思議そうな顔をします。
「エヴァン?」
ジョアンが頷くとエスメラルダが喋りはじめました。
『やあ!エヴァン君。久しぶりだね』
『ご無沙汰していますサリバン先輩。お時間をいただいて恐縮です』
『いやいや、私も楽しみにしていたんだ。なぜ君ばかりが女性にモテるのかを研究する件だけど、そろそろ協力する気になったかな?』
『いや、それは絶対にお断りです。今日は私の婚約者を紹介したいと思って連れてきました』
『へぇ…エヴァン君の婚約者かぁ。実に興味深いな』
『彼女は治療教育に興味を持っているんですよ。できればその道に進みたいと考えているので、連れてきました。ジョアンも彼女のことが大好きなんですよ』
『ジョアン君が認めているなら適性は申し分ないね。それにしてもこの分野に興味を持つなんて珍しいご令嬢だ』
話していた私はそこまで詳細に覚えていませんが、おそらく一言一句間違っていないと思ます。
しかも話すたびに場所を移動して仕草も真似するので、誰が発言していたのかまでわかります。
サリバン博士は聴覚がトリガーと言っていましたが、エスメラルダの能力はその場の全てを完璧に記憶するものの様です。
「驚いたな。どのくらい過去まで記憶しているのだろう」
いつの間にか部屋に入っていたサリバン博士が目を見開いています。
その後ろでリリアナ夫人もとても驚いた顔をしていました。
エスメラルダがまた喋りはじめました。
『はじめまして、サリバン博士。私はこの子の母親でルーラと申します。お招きに応じて参りましたがエスメラルダはここで何をするのでしょうか?』
『はじめましてルーラ夫人。私はハロルド・サリバンと申します。ここの責任者です。お嬢さんに何をさせるかというお話ですが、特に何もさせることはありませんよ?自由に過ごして貰えればそれだけで結構です』
『まさか。それだけであのお金をいただけるのですか?』
『ええ、もちろんです。こちらでの生活費も必要ありません』
『まあ!そうですか。ではこれが領収証です。もうお伺いすることは無いと思いますので、娘をよろしくお願いします。エスメラルダ、博士のいうことを良く聞いて大人しくしていなさい。お母さんもお父さんもお兄ちゃんも引っ越すから、もう会えないわ。とにかくあの気持ち悪い癖を出さないようにしないといけないわよ』
『夫人、そういう言い方は…』
『だってこの子のあの気持ち悪い癖のせいで、ご近所から変な目で見られていたんですから。こちらで引き取っていただけてお金までもらえて助かりましたよ。じゃあねエスメラルダ』
『エスメラルダ嬢は責任をもってこちらでお育てしますので安心してください』
『ええ、どうとでもなさって下さい。じゃあね、エスメラルダ。これでさよならよ』
私は思わずエスメラルダに駆け寄って抱きしめてしまいました。
エスメラルダは不思議そうな顔で私を見上げています。
すると他の三人の子供たちも駆け寄ってきて、私の足に抱きつきました。
困った私はサリバン博士の顔を見ました。
博士はゆっくりと頷いて言いました。
「今の会話は彼女がここに来た初日に、母親と交わしたものだ。彼女は三歳だったから七年前のものだ。凄いな…もしかしたら生まれた時から全ての記憶があるのかもしれない」
リリアナ夫人が目を見開いて博士を見ました。
その視線に気づいた博士はリリアナ夫人を促して退出しました。
博士は振り向きながら私に言いました。
「大丈夫そうなら部屋に来てくれないか」
私は頷きましたが、エスメラルダが親に売られたような存在だという現実に、まだ戸惑っています。
もしかしたら他の二人も同じような境遇なのかもしれません。
私はそれが事実だったらと考えただけでも泣きそうな気分になって、とても確認することはできませんでした。
83
あなたにおすすめの小説
言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。
王宮勤めにも色々ありまして
あとさん♪
恋愛
スカーレット・フォン・ファルケは王太子の婚約者の専属護衛の近衛騎士だ。
そんな彼女の元婚約者が、園遊会で見知らぬ女性に絡んでる·····?
おいおい、と思っていたら彼女の護衛対象である公爵令嬢が自らあの馬鹿野郎に近づいて·····
危険です!私の後ろに!
·····あ、あれぇ?
※シャティエル王国シリーズ2作目!
※拙作『相互理解は難しい(略)』の2人が出ます。
※小説家になろうにも投稿しております。
赤毛の伯爵令嬢
もも野はち助
恋愛
【あらすじ】
幼少期、妹と同じ美しいプラチナブロンドだった伯爵令嬢のクレア。
しかし10歳頃から急に癖のある赤毛になってしまう。逆に美しいプラチナブロンドのまま自由奔放に育った妹ティアラは、その美貌で周囲を魅了していた。いつしかクレアの婚約者でもあるイアルでさえ、妹に好意を抱いている事を知ったクレアは、彼の為に婚約解消を考える様になる。そんな時、妹のもとに曰く付きの公爵から婚約を仄めかすような面会希望の話がやってくる。噂を鵜呑みにし嫌がる妹と、妹を公爵に面会させたくない両親から頼まれ、クレアが代理で公爵と面会する事になってしまったのだが……。
※1:本編17話+番外編4話。
※2:ざまぁは無し。ただし妹がイラッとさせる無自覚系KYキャラ。
※3:全体的にヒロインへのヘイト管理が皆無の作品なので、読まれる際は自己責任でお願い致します。
あなたのことが大好きなので、今すぐ婚約を解消いたしましょう!
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「ランドルフ様、私との婚約を解消しませんかっ!?」
子爵令嬢のミリィは、一度も対面することなく初恋の武人ランドルフの婚約者になった。けれどある日ミリィのもとにランドルフの恋人だという踊り子が押しかけ、婚約が不本意なものだったと知る。そこでミリィは決意した。大好きなランドルフのため、なんとかしてランドルフが真に愛する踊り子との仲を取り持ち、自分は身を引こうと――。
けれどなぜか戦地にいるランドルフからは、婚約に前向きとしか思えない手紙が届きはじめる。一体ミリィはつかの間の婚約者なのか。それとも――?
戸惑いながらもぎこちなく心を通わせはじめたふたりだが、幸せを邪魔するかのように次々と問題が起こりはじめる。
勘違いからすれ違う離れ離れのふたりが、少しずつ距離を縮めながらゆっくりじりじりと愛を育て成長していく物語。
◇小説家になろう、他サイトでも(掲載予定)です。
◇すでに書き上げ済みなので、完結保証です。
第二王女と次期公爵の仲は冷え切っている
山法師
恋愛
グレイフォアガウス王国の第二王女、シャーロット。
フォーサイス公爵家の次期公爵、セオドア。
二人は婚約者であるけれど、婚約者であるだけだった。
形だけの婚約者。二人の仲は冷め切っているし冷え切っている。
そもそも温度など、最初から存在していない。愛も恋も、友情も親しみも、二人の間には存在しない。
周知の事実のようなそれを、シャーロットもセオドアも否定しない。
お互いにほとんど関わりを持とうとしない、交流しようとしない、シャーロットとセオドアは。
婚約者としての親睦を深める茶会でだけ、顔を合わせる。
親睦を深める茶会だというのに、親睦は全く深まらない。親睦を深めるつもりも深める意味も、二人にはない。
形だけの婚約者との、形だけの親睦を深める茶会。
今日もまた、同じように。
「久しぶりに見る君が、いつにも増して愛らしく見えるし愛おしく思えて、僕は今にも天に召されそうなほどの幸福を味わっている。──?!」
「あたしのほうこそセオ様とお顔を合わせること、夢みたいに思ってるんですからね。大好きなセオ様を独り占めしているみたいに思えるんですよ。はっ?!」
顔を合わせて確認事項を本当に『確認』するだけの茶会が始まるはずが、それどころじゃない事態に陥った。
【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか
まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。
己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。
カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。
誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。
ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。
シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。
そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。
嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。
カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。
小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。
【完結】優雅に踊ってくださいまし
きつね
恋愛
とある国のとある夜会で起きた事件。
この国の王子ジルベルトは、大切な夜会で長年の婚約者クリスティーナに婚約の破棄を叫んだ。傍らに愛らしい少女シエナを置いて…。
完璧令嬢として多くの子息と令嬢に慕われてきたクリスティーナ。周囲はクリスティーナが泣き崩れるのでは無いかと心配した。
が、そんな心配はどこ吹く風。クリスティーナは淑女の仮面を脱ぎ捨て、全力の反撃をする事にした。
-ーさぁ、わたくしを楽しませて下さいな。
#よくある婚約破棄のよくある話。ただし御令嬢はめっちゃ喋ります。言いたい放題です。1話目はほぼ説明回。
#鬱展開が無いため、過激さはありません。
#ひたすら主人公(と周囲)が楽しみながら仕返しするお話です。きっつーいのをお求めの方には合わないかも知れません。
【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない
春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。
願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。
そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。
※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる