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23 エスメラルダ
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ドイル邸に戻った私たちは、伯爵夫妻にサリバン博士の言葉を伝えて相談しました。
「ロゼも行くなら一考の余地はあるが、私としてはジョアンを実験材料のように扱われることは嫌だな」
ドイル伯爵が難しい顔で言いました。
そんな伯爵の肩に優しく手を置いて、リリアナ夫人が口を開きます。
「でも今の話だと実験材料にはならないような感じでしょ?むしろ特殊な才能を持つ子供を保護して伸ばすような印象を受けたけど。私はジョアンが今まで通り屋敷の中だけで過ごしてもいいし、外の世界を知っても良いし。ジョアンに選ばせてはどうかしら?」
「ああ母上、そうですね。ジョアンのことはジョアンに聞くのが一番です。それにロゼから見て父上の言うような扱いが少しでもあれば、二度と行かせないという手もありますから」
「なるほど、お試し期間ということか」
そう言うと伯爵は使用人にジョアンを呼びに行かせました。
すでに寝間着に着替えていたジョアンがララと手をつないでやってきました。
「あら、ジョアンはもう寝る準備をしていたの?」
夫人がジョアンを膝にのせながら言いました。
「違うわお母様。今日のジョアンは寝る気分だったのよ。ロゼとお兄様を送り出したらすぐに着替えてベッドにもぐりこんだもの」
「まあそうなの。ジョアンは今日は寝る日だったのね?起こしてしまって悪かったかしら。でもエヴァンがおいしいケーキを買ってきてくれたのよ?それにお夕食はあなたの好きなチキンステーキなのよ?」
ジョアンがニコッと笑いました。
「もう寝るの終わる。エヴァンのケーキ」
ご夫妻もエヴァン様もララも、そんなジョアンを愛おしそうに見ています。
今日聞いた『この子供達は捨てたようなもの』という悲しい言葉を思い出して、少し俯いてしまいました。
ジョアンは間違いなく家族に愛されています。
そのことが物凄く嬉しいと思いました。
エヴァン様が研究所の話をして、ジョアンも行ってみるかと聞きました。
「ロゼも行く?」
「ええ、毎日ではないけれど放課後は行こうと思ってるわ」
「ロゼが行く。僕も行く」
リリアナ夫人が膝で甘えるジョアンに確認しました。
「ロゼが行くならジョアンも行ってみるということ?」
「うん」
伯爵がジョアンの頭を撫でながら言いました。
「ではロゼが行く日に合わせてジョアンも行ってみようか。嫌ならすぐにロゼに言うんだよ」
「うん」
とりあえずジョアンも参加することになり、ジョアンをのせた馬車が学園に迎えに来て、私を拾って研究所に行くということになりました。
この屋敷以外の人と接するのは初めてとなるジョアンの負担を考え、週に二日から始めることになりました。
「私も一度行ってみたいわ」
ララが拗ねたように言いました。
「ではララはジョアンが続くようなら私と一緒に参観してみましょうよ」
リリアナ夫人がララを宥めるように言います。
ララは少し不満そうでしたが、小さく頷きました。
その日は少し早めの夕食をとり、お土産のチョコケーキをいただきました。
翌日には寮に戻り、残っていた課題を片づけ、週明けの放課後に専攻している教育課程の教授に相談しました。
すると教授はサリバン教授のことをよくご存じで、安心して参加する様に勧めてくださいました。
しかも、研究所で過ごす時間は課外授業扱いとして、レポートを出せば専攻授業の単位に反映するとのことでした。
基本授業のほか、専攻科目の勉強に加えて研究所に行くというハードスケジュールを覚悟していた私は、少しホッとしました。
その日のうちに研究所への通行証が届いたとエヴァン様が学園に来られました。
「先輩は今日からでも来てほしいって言ってたけど、無理することはないからね?しっかりとスケジュールを立ててから始めなさい」
ララも交えて三人でスケジュールを立てた結果、木曜と金曜に研究所に行き、金曜日にはそのままドイル邸に帰るということになりました。
ララは私がいない時間が暇になるからと、学園の女子乗馬クラブに入るそうです。
「だからお兄様、私に乗馬服をプレゼントして?」
エヴァン様は苦笑いをしながら頷いて約束していました。
そんな二人を見ながら、私は家族っていいなぁと考えてしまいました。
「ロゼも一緒に買いに行こう。今週の休みは一日しか取れそうにないから、二人とも予定を空けておいてね」
お忙しいエヴァン様は用件だけ済ませて仕事に戻られました。
私たちは残って楽しくおしゃべりしながら、それぞれのチャレンジについて語り合いました。
毎日が追われるように過ぎていき、研究所に始めていく日になりました。
授業が終わってすぐに正門に向かいます。
ジョアンを乗せた馬車は、既に停まっていました。
従者に手を貸してもらい馬車に乗り込むと、リリアナ夫人も一緒にいます。
「初日だからご挨拶をしたいと思って」
少し照れたように仰いますが、親としてはやはり心配なのでしょう。
研究所に着くと、先日と同じスタッフの方が迎えに来てくれました。
私が事情を説明すると、快く案内してくれました。
ジョアンは緊張することもなく、吞気な顔で歩いています。
そんなジョアンを見ながらリリアナ夫人と私は少し安心して顔を見合わせました。
サリバン博士を二人に紹介していたら、エスメラルダがやってきました。
エスメラルダは上手にお辞儀をした後、ジョアンの目をじっと見ています。
数秒間そうしていたでしょうか、エスメラルダがニコッと笑ってジョアンに手を伸ばしました。
ジョアンはその手をとり、二人で部屋を出て行こうとします。
「ジョアン?」
リリアナ夫人が引き止めようと手を伸ばした時、サリバン博士が止めました。
「ここは絶対に安全です。好きにさせてみましょう。ローゼリア嬢は一緒に行ってみるかい?」
「はい」
私は二人を追いかけました。
今日の子供たちの気分は南側の部屋だったようで、エスメラルダとアレク、そしてドレックがそれぞれに過ごしています。
エスメラルダが二人の肩を叩き、振り向かせました。
四人は無言でそれぞれの顔を見ています。
「ロゼも行くなら一考の余地はあるが、私としてはジョアンを実験材料のように扱われることは嫌だな」
ドイル伯爵が難しい顔で言いました。
そんな伯爵の肩に優しく手を置いて、リリアナ夫人が口を開きます。
「でも今の話だと実験材料にはならないような感じでしょ?むしろ特殊な才能を持つ子供を保護して伸ばすような印象を受けたけど。私はジョアンが今まで通り屋敷の中だけで過ごしてもいいし、外の世界を知っても良いし。ジョアンに選ばせてはどうかしら?」
「ああ母上、そうですね。ジョアンのことはジョアンに聞くのが一番です。それにロゼから見て父上の言うような扱いが少しでもあれば、二度と行かせないという手もありますから」
「なるほど、お試し期間ということか」
そう言うと伯爵は使用人にジョアンを呼びに行かせました。
すでに寝間着に着替えていたジョアンがララと手をつないでやってきました。
「あら、ジョアンはもう寝る準備をしていたの?」
夫人がジョアンを膝にのせながら言いました。
「違うわお母様。今日のジョアンは寝る気分だったのよ。ロゼとお兄様を送り出したらすぐに着替えてベッドにもぐりこんだもの」
「まあそうなの。ジョアンは今日は寝る日だったのね?起こしてしまって悪かったかしら。でもエヴァンがおいしいケーキを買ってきてくれたのよ?それにお夕食はあなたの好きなチキンステーキなのよ?」
ジョアンがニコッと笑いました。
「もう寝るの終わる。エヴァンのケーキ」
ご夫妻もエヴァン様もララも、そんなジョアンを愛おしそうに見ています。
今日聞いた『この子供達は捨てたようなもの』という悲しい言葉を思い出して、少し俯いてしまいました。
ジョアンは間違いなく家族に愛されています。
そのことが物凄く嬉しいと思いました。
エヴァン様が研究所の話をして、ジョアンも行ってみるかと聞きました。
「ロゼも行く?」
「ええ、毎日ではないけれど放課後は行こうと思ってるわ」
「ロゼが行く。僕も行く」
リリアナ夫人が膝で甘えるジョアンに確認しました。
「ロゼが行くならジョアンも行ってみるということ?」
「うん」
伯爵がジョアンの頭を撫でながら言いました。
「ではロゼが行く日に合わせてジョアンも行ってみようか。嫌ならすぐにロゼに言うんだよ」
「うん」
とりあえずジョアンも参加することになり、ジョアンをのせた馬車が学園に迎えに来て、私を拾って研究所に行くということになりました。
この屋敷以外の人と接するのは初めてとなるジョアンの負担を考え、週に二日から始めることになりました。
「私も一度行ってみたいわ」
ララが拗ねたように言いました。
「ではララはジョアンが続くようなら私と一緒に参観してみましょうよ」
リリアナ夫人がララを宥めるように言います。
ララは少し不満そうでしたが、小さく頷きました。
その日は少し早めの夕食をとり、お土産のチョコケーキをいただきました。
翌日には寮に戻り、残っていた課題を片づけ、週明けの放課後に専攻している教育課程の教授に相談しました。
すると教授はサリバン教授のことをよくご存じで、安心して参加する様に勧めてくださいました。
しかも、研究所で過ごす時間は課外授業扱いとして、レポートを出せば専攻授業の単位に反映するとのことでした。
基本授業のほか、専攻科目の勉強に加えて研究所に行くというハードスケジュールを覚悟していた私は、少しホッとしました。
その日のうちに研究所への通行証が届いたとエヴァン様が学園に来られました。
「先輩は今日からでも来てほしいって言ってたけど、無理することはないからね?しっかりとスケジュールを立ててから始めなさい」
ララも交えて三人でスケジュールを立てた結果、木曜と金曜に研究所に行き、金曜日にはそのままドイル邸に帰るということになりました。
ララは私がいない時間が暇になるからと、学園の女子乗馬クラブに入るそうです。
「だからお兄様、私に乗馬服をプレゼントして?」
エヴァン様は苦笑いをしながら頷いて約束していました。
そんな二人を見ながら、私は家族っていいなぁと考えてしまいました。
「ロゼも一緒に買いに行こう。今週の休みは一日しか取れそうにないから、二人とも予定を空けておいてね」
お忙しいエヴァン様は用件だけ済ませて仕事に戻られました。
私たちは残って楽しくおしゃべりしながら、それぞれのチャレンジについて語り合いました。
毎日が追われるように過ぎていき、研究所に始めていく日になりました。
授業が終わってすぐに正門に向かいます。
ジョアンを乗せた馬車は、既に停まっていました。
従者に手を貸してもらい馬車に乗り込むと、リリアナ夫人も一緒にいます。
「初日だからご挨拶をしたいと思って」
少し照れたように仰いますが、親としてはやはり心配なのでしょう。
研究所に着くと、先日と同じスタッフの方が迎えに来てくれました。
私が事情を説明すると、快く案内してくれました。
ジョアンは緊張することもなく、吞気な顔で歩いています。
そんなジョアンを見ながらリリアナ夫人と私は少し安心して顔を見合わせました。
サリバン博士を二人に紹介していたら、エスメラルダがやってきました。
エスメラルダは上手にお辞儀をした後、ジョアンの目をじっと見ています。
数秒間そうしていたでしょうか、エスメラルダがニコッと笑ってジョアンに手を伸ばしました。
ジョアンはその手をとり、二人で部屋を出て行こうとします。
「ジョアン?」
リリアナ夫人が引き止めようと手を伸ばした時、サリバン博士が止めました。
「ここは絶対に安全です。好きにさせてみましょう。ローゼリア嬢は一緒に行ってみるかい?」
「はい」
私は二人を追いかけました。
今日の子供たちの気分は南側の部屋だったようで、エスメラルダとアレク、そしてドレックがそれぞれに過ごしています。
エスメラルダが二人の肩を叩き、振り向かせました。
四人は無言でそれぞれの顔を見ています。
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