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第112話 勇者、逆転の発想(物理で殴る)をする
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「いっそ貴方がこの国の乗っ取っては如何でしょうか?」
俺は自分が思いついた策をハイジアン王子に告げる。
「私が!?」
ハイジアン王子は突然話題の中心が自分になった事で驚きを隠せないでいる。
「まてまて。何故私なのだ。そもそも私が国を支配しても、ツギノ王国からすれば普通に第二王子が王位を継いだだけで、アレの件は普通に賠償を請求してくるだろう!?」
確かに、ハイジアン王子がクーデターを起こして国を奪っても、ツギノ王国は第二王子を傷つけられた事による賠償を取り下げはしないだろう。
だが、賠償を取り下げさせる方法はある。
それはハイジアン王子が確かに口にしたのだから。
「ええ、ただ王位を継承しただけでは駄目でしょう。ですが、新たな王となった貴方が、莫大な賠償金を支払えば話は別です」
そう、支払えば良いのだ。
ツギノ王国を黙らせるだけの金を目の前に積んで話をうやむやにしてしまえば良い。
「無理だ!」
ハイジアン王子が悲鳴を上げるように叫ぶ。
「私の言葉を聞いていなかったのか!? わが国にそんな余力は無いぞ! 復興によって見た目は確かに安定し豊かになったように見える。だがその為の予算は国営を逼迫し、ギリギリ黒字を維持できるか否かというところだ。とても賠償金を支払う余裕など無い!」
まぁそれもさっき言ってたもんな。
だが、出来ないのはあくまでもハジメデ王国だからだ。
「それをどうにかできるとしたらどうですか?」
俺の言葉にハイジアン王子がギョッとした顔でこちらを見てくる。
「な、何を……?」
「今の状況でツギノ王国相手に慰謝料を支払って和解したとしても、その後に控える国際会議でハジメデ王国はツギノ王国への負い目からかの国の発言に対して色々と譲歩する必要が出てくるでしょう」
「そ、そう……だな……」
後の国際会議が絡んでくる事も思い出して、ハイジアン王子の顔色が悪くなる。
「しかも今回の事件は周辺国からの招待客の耳にも入っていますので、会議の最中での譲歩は他国にとって格好の攻撃材料でしょうね」
「……」
そろそろ顔色が青色を超えて紫色に入りそうな感じだ。胃にも大きな穴が空きそうである。
「しかしですよ、そこでツギノ王国がそんな事どうでも良い。ハジメデ王国はわが国の大切な友人だといわんばかりに肩を組んで談笑しながら会議の場に現れたら他国はどう思うでしょうか?」
「何だと!?」
「まぁ、大げさな言い方でしたが、大問題を起こした筈のハジメデ王国とツギノ王国の代表者同士が仲良く共に登場し、会議でも強く自国にとって有利な要求をしなかったら、周辺国は両国の強い結びつきとハジメデ王国の影響力の強さを警戒しておとなしくする事でしょう」
「……出来るのか?」
ハイジアン王子が顔を青くしたまま、こちらを見てくる。
事はバカのやらかしではすまない状況だ。
隣国との関係、なにより周辺国との力関係が一瞬で破滅的状況に追い込まれるこの絶望的な事態を、収めれるといわんばかりの俺の言葉に、ハイジアン王子はできる筈が無いと言った。
だが、それなのに俺にできるのかと聞いたのは、彼が俺の正体を理解しているからだ。
破滅寸前だったこの世界を救った俺ならばこそ、その無理を実現出来るかもしれないと思ってしまったのだ。
心が縋ってしまったのだ。
だから俺は言った。断言した。
「出来ます!」
ハイジアン王子の体がビクリと震える。
「ハイジアン王子、この難局を乗り越える為、貴方がこの国を支配するのです。そして国の真の支配権をこの俺が買い取りましょう。そうすれば、あとは俺がこの案件を治めます。何もかも上手くいくように、ね」
ハイジアン王子が喉をならす。
「は、はは……君は、勇者と言うよりも悪魔だな。人の弱みに付け込んで全てを奪い去ろうとする悪魔のようだ」
「いえいえ、俺はただの人間ですよ。ただのね」
「分かった、その契約を受けよう。私がこの国の王となり、君が私を支配するが良い……」
全ての責任から開放される喜びか、破滅へと通じるかもしれない恐怖からか、ハイジアン王子の目は虚ろに微笑んでいた。
この瞬間、ハジメデ王国は俺の支配下に収まったのだった。
俺は自分が思いついた策をハイジアン王子に告げる。
「私が!?」
ハイジアン王子は突然話題の中心が自分になった事で驚きを隠せないでいる。
「まてまて。何故私なのだ。そもそも私が国を支配しても、ツギノ王国からすれば普通に第二王子が王位を継いだだけで、アレの件は普通に賠償を請求してくるだろう!?」
確かに、ハイジアン王子がクーデターを起こして国を奪っても、ツギノ王国は第二王子を傷つけられた事による賠償を取り下げはしないだろう。
だが、賠償を取り下げさせる方法はある。
それはハイジアン王子が確かに口にしたのだから。
「ええ、ただ王位を継承しただけでは駄目でしょう。ですが、新たな王となった貴方が、莫大な賠償金を支払えば話は別です」
そう、支払えば良いのだ。
ツギノ王国を黙らせるだけの金を目の前に積んで話をうやむやにしてしまえば良い。
「無理だ!」
ハイジアン王子が悲鳴を上げるように叫ぶ。
「私の言葉を聞いていなかったのか!? わが国にそんな余力は無いぞ! 復興によって見た目は確かに安定し豊かになったように見える。だがその為の予算は国営を逼迫し、ギリギリ黒字を維持できるか否かというところだ。とても賠償金を支払う余裕など無い!」
まぁそれもさっき言ってたもんな。
だが、出来ないのはあくまでもハジメデ王国だからだ。
「それをどうにかできるとしたらどうですか?」
俺の言葉にハイジアン王子がギョッとした顔でこちらを見てくる。
「な、何を……?」
「今の状況でツギノ王国相手に慰謝料を支払って和解したとしても、その後に控える国際会議でハジメデ王国はツギノ王国への負い目からかの国の発言に対して色々と譲歩する必要が出てくるでしょう」
「そ、そう……だな……」
後の国際会議が絡んでくる事も思い出して、ハイジアン王子の顔色が悪くなる。
「しかも今回の事件は周辺国からの招待客の耳にも入っていますので、会議の最中での譲歩は他国にとって格好の攻撃材料でしょうね」
「……」
そろそろ顔色が青色を超えて紫色に入りそうな感じだ。胃にも大きな穴が空きそうである。
「しかしですよ、そこでツギノ王国がそんな事どうでも良い。ハジメデ王国はわが国の大切な友人だといわんばかりに肩を組んで談笑しながら会議の場に現れたら他国はどう思うでしょうか?」
「何だと!?」
「まぁ、大げさな言い方でしたが、大問題を起こした筈のハジメデ王国とツギノ王国の代表者同士が仲良く共に登場し、会議でも強く自国にとって有利な要求をしなかったら、周辺国は両国の強い結びつきとハジメデ王国の影響力の強さを警戒しておとなしくする事でしょう」
「……出来るのか?」
ハイジアン王子が顔を青くしたまま、こちらを見てくる。
事はバカのやらかしではすまない状況だ。
隣国との関係、なにより周辺国との力関係が一瞬で破滅的状況に追い込まれるこの絶望的な事態を、収めれるといわんばかりの俺の言葉に、ハイジアン王子はできる筈が無いと言った。
だが、それなのに俺にできるのかと聞いたのは、彼が俺の正体を理解しているからだ。
破滅寸前だったこの世界を救った俺ならばこそ、その無理を実現出来るかもしれないと思ってしまったのだ。
心が縋ってしまったのだ。
だから俺は言った。断言した。
「出来ます!」
ハイジアン王子の体がビクリと震える。
「ハイジアン王子、この難局を乗り越える為、貴方がこの国を支配するのです。そして国の真の支配権をこの俺が買い取りましょう。そうすれば、あとは俺がこの案件を治めます。何もかも上手くいくように、ね」
ハイジアン王子が喉をならす。
「は、はは……君は、勇者と言うよりも悪魔だな。人の弱みに付け込んで全てを奪い去ろうとする悪魔のようだ」
「いえいえ、俺はただの人間ですよ。ただのね」
「分かった、その契約を受けよう。私がこの国の王となり、君が私を支配するが良い……」
全ての責任から開放される喜びか、破滅へと通じるかもしれない恐怖からか、ハイジアン王子の目は虚ろに微笑んでいた。
この瞬間、ハジメデ王国は俺の支配下に収まったのだった。
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