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第137話 勇者、姫をさがす(ババァでない方)
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神剣ミカガミノツルギとの交渉に成功した俺達は、生き残った姫を探す為に動き出した。
「姫はこのヒノモトの地のどこかに居ますわ。正確な距離は分かりませんが、それ程離れてはいないでしょう」
「ふむ、近隣の領主に保護されたか? いやそれならヒノモトが平定された時に連れて来るか。帝の血族を保護していたとなれば良い点数稼ぎになる。それに神剣を引き抜く事が出来れば次のミカドを保護した恩人の後見人となる事もたやすいだろうしな」
キュウさんは件の姫が都の近くに居るのに何故出てこないのかと疑問を抱く。
「その姫が保護してくださった領主様かそのご子息と恋仲になったというのはどうでしょうか?」
いやどうでしょうかじゃないよクロワさん。
ああもう、そんなキラキラした目をして。
「それはさておき、この状況で姫が姿を現さぬのは尋常な状況ではないであろうな」
確かに。戦いは終わっているのだから、お姫様は素直に宮廷に保護を求めれば良いだけの話。わざわざ好き好んで不自由な立場にいる必要もない。
「となると、誰かに捕まっているとか? この国に奴隷制度ってありましたっけ?」
一番わかりやすいのが悪い奴に捕まって奴隷になっているパターンだ。
戦争に負けた国の貴族の子供達の定番の転落先である。
このパターンの怖いのは、奴隷を買った人間が相手の素性を知っているかどうかだ。
例えば姫の素性を知っていた、もしくは聞いた人間が購入した場合、国が平和になった時に姫を宮廷に差し出せば皇族を保護した人間として褒美を貰える可能性を考慮して手厚い対応をするだろう。
逆に姫もしくはその肉親に恨みがある場合、復讐の為に購入する可能性もある。その場合は姫の存在を徹底的に隠すだろう。最悪死んでいる可能性もある。
ただもう一つ怖い可能性がある。
知らなかったもしくは信じなかったパターンだ。
仮に姫が自分が姫だと証言していたとして、奴隷商人もしくは奴隷を買った主が信じなかった場合だ。
だが、ヒノモトが平定された今、俺達が生き残った皇族を探している事を知った姫が持王一度自分が姫だと訴えたとする。
そうなると困るのは奴隷商人と奴隷を買った主だ。
もしも本当に奴隷が姫だった場合、自分は皇族の姫を奴隷として扱ったと言う事になる。
そんな事実がバレたら身の破滅は免れないにきまってる。
たとえ知らなかったとしてもだ。
となればソイツ等のする事は一つだ。
姫の訴えを無視して表に出れない様にして隠すか、最悪殺して口封じをするだろう。
そしてこの状況を考えれば、生き残った姫は最悪の状況に直面している可能性が高い。
幸いミカガミノツルギのおかげで生きている事は保証されている訳だが。
「いや、我が国に奴隷という概念は無いな。似たような存在はいるがその者達は働いて自分を買い戻す事が出来る。そしてそういう者でも主が役所に申し出て登録させる必要がある。我等も人買いに攫われた可能性を考慮して既に調べている」
へー、自分の買い戻しができるとか西方諸国の奴隷とは随分と考え方が違うんだな。
「となると、残った可能性は非合法な人攫い?」
「その可能性は高いな。非合法な仕事をさせる為など後ろめたい理由から人攫いを利用する者は少なくない」
成程、この国もまだまだ復興途中って訳か。
シルファリアを救ったらこの国の復興を手伝うのも良いかもしれないな。
「とにかく我々は不法に使役されている奴隷が居ないか調査してみよう」
「じゃあ俺は……そうだ!」
◆
「よし、今度はこっちに跳ぶぞ!」
夜、俺は月の灯りを頼りにヒノモトの国の空を飛ぶ。
その腰には神剣ミカガミノツルギを携えて。
「どうだミカガミノツルギ?」
俺は鞘に収まったミカガミノツルギに問いかける。
「この辺りで感じる姫の気配はどうだ?」
「そうですね……先程の場所よりも気配が薄いですね」
成程、この辺りだと姫の気配は感じにくいのか。
俺はキュウさんからもらった地図を灯りの魔法で照らしながら印をうつ。
何をしているのかって?
それはヒノモト周辺を飛び回って姫の気配の濃い場所を探してるのだ!
良く分からない?
単純な話だ。
ミカガミノツルギの話では姫は都周辺に存在を感じると言っていた。
だとすれば俺がミカガミノツルギを持って王都から離れたらその分姫の気配が感じられなくなると言う事だ。
そして都を中心に各方向都を離れれば、どの方角がより気配を感じ、どの方角がより気配を感じなくなるのかが分かる。
つまり姫の居る位置を大雑把に感知できると言う訳だ。
そして地図に記入した姫の気配を濃く感じる部分と薄く感じる部分を照らし合わせ、濃い部分を集中的にキュウさんに調べて貰えば、短い時間で姫の居場所を特定できるって寸法である。
◆
「という訳でこの辺りの地域に姫はいる筈です」
俺はキュウさんに地図を返却し、姫が居るであろう地域を伝える。
「ここは!?」
と、キュウさんが難しい顔になる。
「何か問題でも?」
「うむ、実はこの辺りは貴族が暮らす地域でな。それも我々武人ではなく、帝の血族の方々が暮らしていらっしゃる場所が近い」
それってもしかして……。
「姫は自分の親戚に拉致されているって事ですか?」
キュウさんは渋い顔を変えず、無言でそれを肯定した。
一体誰が姫を攫ったんだ!?
だが、その答えはすぐに判明する。
◆
「姫君が拉致された場所が分かったぞ」
俺から捜索範囲を絞った地図を渡されたキュウさんは、まさに迅速という言葉の通りに姫君が幽閉されている場所を探り当てた。
「姫君が拉致されたのは……あのユキ姫様のお屋敷だ」
バ、ババァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
「姫はこのヒノモトの地のどこかに居ますわ。正確な距離は分かりませんが、それ程離れてはいないでしょう」
「ふむ、近隣の領主に保護されたか? いやそれならヒノモトが平定された時に連れて来るか。帝の血族を保護していたとなれば良い点数稼ぎになる。それに神剣を引き抜く事が出来れば次のミカドを保護した恩人の後見人となる事もたやすいだろうしな」
キュウさんは件の姫が都の近くに居るのに何故出てこないのかと疑問を抱く。
「その姫が保護してくださった領主様かそのご子息と恋仲になったというのはどうでしょうか?」
いやどうでしょうかじゃないよクロワさん。
ああもう、そんなキラキラした目をして。
「それはさておき、この状況で姫が姿を現さぬのは尋常な状況ではないであろうな」
確かに。戦いは終わっているのだから、お姫様は素直に宮廷に保護を求めれば良いだけの話。わざわざ好き好んで不自由な立場にいる必要もない。
「となると、誰かに捕まっているとか? この国に奴隷制度ってありましたっけ?」
一番わかりやすいのが悪い奴に捕まって奴隷になっているパターンだ。
戦争に負けた国の貴族の子供達の定番の転落先である。
このパターンの怖いのは、奴隷を買った人間が相手の素性を知っているかどうかだ。
例えば姫の素性を知っていた、もしくは聞いた人間が購入した場合、国が平和になった時に姫を宮廷に差し出せば皇族を保護した人間として褒美を貰える可能性を考慮して手厚い対応をするだろう。
逆に姫もしくはその肉親に恨みがある場合、復讐の為に購入する可能性もある。その場合は姫の存在を徹底的に隠すだろう。最悪死んでいる可能性もある。
ただもう一つ怖い可能性がある。
知らなかったもしくは信じなかったパターンだ。
仮に姫が自分が姫だと証言していたとして、奴隷商人もしくは奴隷を買った主が信じなかった場合だ。
だが、ヒノモトが平定された今、俺達が生き残った皇族を探している事を知った姫が持王一度自分が姫だと訴えたとする。
そうなると困るのは奴隷商人と奴隷を買った主だ。
もしも本当に奴隷が姫だった場合、自分は皇族の姫を奴隷として扱ったと言う事になる。
そんな事実がバレたら身の破滅は免れないにきまってる。
たとえ知らなかったとしてもだ。
となればソイツ等のする事は一つだ。
姫の訴えを無視して表に出れない様にして隠すか、最悪殺して口封じをするだろう。
そしてこの状況を考えれば、生き残った姫は最悪の状況に直面している可能性が高い。
幸いミカガミノツルギのおかげで生きている事は保証されている訳だが。
「いや、我が国に奴隷という概念は無いな。似たような存在はいるがその者達は働いて自分を買い戻す事が出来る。そしてそういう者でも主が役所に申し出て登録させる必要がある。我等も人買いに攫われた可能性を考慮して既に調べている」
へー、自分の買い戻しができるとか西方諸国の奴隷とは随分と考え方が違うんだな。
「となると、残った可能性は非合法な人攫い?」
「その可能性は高いな。非合法な仕事をさせる為など後ろめたい理由から人攫いを利用する者は少なくない」
成程、この国もまだまだ復興途中って訳か。
シルファリアを救ったらこの国の復興を手伝うのも良いかもしれないな。
「とにかく我々は不法に使役されている奴隷が居ないか調査してみよう」
「じゃあ俺は……そうだ!」
◆
「よし、今度はこっちに跳ぶぞ!」
夜、俺は月の灯りを頼りにヒノモトの国の空を飛ぶ。
その腰には神剣ミカガミノツルギを携えて。
「どうだミカガミノツルギ?」
俺は鞘に収まったミカガミノツルギに問いかける。
「この辺りで感じる姫の気配はどうだ?」
「そうですね……先程の場所よりも気配が薄いですね」
成程、この辺りだと姫の気配は感じにくいのか。
俺はキュウさんからもらった地図を灯りの魔法で照らしながら印をうつ。
何をしているのかって?
それはヒノモト周辺を飛び回って姫の気配の濃い場所を探してるのだ!
良く分からない?
単純な話だ。
ミカガミノツルギの話では姫は都周辺に存在を感じると言っていた。
だとすれば俺がミカガミノツルギを持って王都から離れたらその分姫の気配が感じられなくなると言う事だ。
そして都を中心に各方向都を離れれば、どの方角がより気配を感じ、どの方角がより気配を感じなくなるのかが分かる。
つまり姫の居る位置を大雑把に感知できると言う訳だ。
そして地図に記入した姫の気配を濃く感じる部分と薄く感じる部分を照らし合わせ、濃い部分を集中的にキュウさんに調べて貰えば、短い時間で姫の居場所を特定できるって寸法である。
◆
「という訳でこの辺りの地域に姫はいる筈です」
俺はキュウさんに地図を返却し、姫が居るであろう地域を伝える。
「ここは!?」
と、キュウさんが難しい顔になる。
「何か問題でも?」
「うむ、実はこの辺りは貴族が暮らす地域でな。それも我々武人ではなく、帝の血族の方々が暮らしていらっしゃる場所が近い」
それってもしかして……。
「姫は自分の親戚に拉致されているって事ですか?」
キュウさんは渋い顔を変えず、無言でそれを肯定した。
一体誰が姫を攫ったんだ!?
だが、その答えはすぐに判明する。
◆
「姫君が拉致された場所が分かったぞ」
俺から捜索範囲を絞った地図を渡されたキュウさんは、まさに迅速という言葉の通りに姫君が幽閉されている場所を探り当てた。
「姫君が拉致されたのは……あのユキ姫様のお屋敷だ」
バ、ババァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
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