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【第三章】ヒロイン様、ご都合展開は終了です
23朝のざわめき――噂の続報と学園の
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翌朝。
前日の“衝撃的な宣言”が学園中に知れ渡ったのか、登校した瞬間から人々の視線がひりつくように私に突き刺さった。
「セレナ様が王子と共闘するって、本当?」「ゲームとか壊すとか、いったい何の話……?」
そんなひそひそ声が廊下のあちこちで聞こえる。まるで私は“嵐の予兆”か何かのように扱われているらしい。
私はあえて気にしないフリで通り過ぎる。前世でも、大学のサークル内で噂が立ったり陰口があったりしても、なるべくスルーするよう心がけていた。
この世界の噂話は、もっと直接的で声も大きいけど、気にしていてはきりがない。周囲の囁きを耳から流しつつ、教室へ向かう。
そこへ、案の定のタイミングでアレクシスが現れた。
彼は軽く手を振って私のもとに歩み寄り、あたかも婚約者同士の仲が良いかのように、当然のように隣に並ぶ。
「おはよう、セレナ。今日は馬車で迎えに行けなくて悪かった。朝早くから王宮の方で用事があってな」
昨日はわざわざ私の家に迎えに来たのに、今日は別行動だったらしい。とはいえ、こうしてわざわざ朝イチで様子を見に来るあたり、やはり“私を放っておけない”という気持ちがあるのだろう。
――ゲームの王子ルートでは、ありえないほどの積極性だと改めて思う。
「気にしないで。私もあなたにべったり頼るつもりはないし……」
そっけなく返す私に、アレクシスは少し苦笑を浮かべる。
「ああ、わかっている。昨日は……お前の宣言に正直驚かされたよ。リリィのことを、あれほどまでに否定するとは思わなかった」
「彼女を否定したわけじゃないわ。“ヒロインごっこ”を終わらせたいだけ。リリィの正体が何であれ、王子を思いどおりにする筋書きを壊すつもりなの。そう言ったでしょ?」
私がそう言い切ると、彼は真面目な顔つきになって頷く。
「そうだったな。……俺はお前がやりたいようにすればいいと思っている。ただし、危険を伴うなら話は別だ。実際、リリィは何を仕掛けてくるかわからない。彼女の“聖女”としての力がどの程度のものか、俺もはっきり把握していないんだ」
“聖女”の力。ゲームでいえば、ヒロインであるリリィには何かしらの特別な力が与えられていたはずだ。治癒や浄化の類だった気がするが、細部は私も曖昧だ。ただ、転生先の“現実”だと、本当に奇跡のような力があるのかもしれないし、あるいは偽物の可能性もある。
「彼女が自分を大きく見せたくて誇張している……そんな可能性もあるのかしら?」
私が思いつきを口にすると、アレクシスは肩をすくめる。
「あり得る。ただし王家としては、彼女の力が本物なら利用価値は計り知れない。だからこそ、俺もむやみに排斥はできないんだ……」
その言葉に含みを感じる。リリィが本当に“奇跡の力”を持つなら、政治的にも大きな存在になる。だから、王家の立場であるアレクシスが迂闊に否定するわけにはいかないわけだ。
――要するに、私は引き続き“疑いの悪役令嬢”であり、リリィの“聖女の座”に挑む形になっている。だったらこっちにも覚悟が必要だ。
そうこうしているうちに、私たちの会話を遠巻きに見ていた生徒がどんどん集まり始める。彼らはアレクシスの姿に敬意を払いつつも、私との関係を探っているのだろう。しばらくすると、案の定、誰かが半分からかい交じりに声をかけてきた。
「セレナ様、昨日は“大胆なお言葉”をおっしゃったそうですが、今日は続きはないんですか? リリィ様と殿下の仲を割り込む、とか……」
軽口のようでいて、私を挑発しようとするニュアンスが明らかだ。でも今の私には怖いものがない。むしろ、自分から場を荒らしてでも立ち位置を確保するしかないのだ。
だから私は軽く微笑んで返す。
「ええ、もちろん。私はリリィがどれほどの“聖女”か、確かめてみたいと思っているの。――もし偽物ならば、私が彼女の野望を踏み潰すわ」
あっけらかんと言い切る私に、周囲が騒めくのを感じる。悪役令嬢に相応しい“敵役”っぽい宣言だなと、自分でも思う。
この大胆不敵な態度が人々を混乱させ、リリィにも圧力をかけるはず。ゲーム通りにいかない要素をどんどん加えて、私はあくまで“バグ技”を使って運命を変えてみせるのだ。
「それは……宣戦布告ですか、セレナ様?」
耳元でひそかに囁いてくるのはノエル。今日も私の後方で護衛を務めてくれている。私はちらりと振り返り、彼に目配せする。
「そうよ。受けて立つなら、いつでもどうぞ。……彼女が本当に清らかな聖女なら、私みたいな悪役に遅れをとるわけがないじゃない?」
少し刺激的な言葉をあえて使う。すると、アレクシスが驚いたように「お前な……」と声を出しかけるが、私はさっと彼の腕を掴んで制した。
「じゃあ、私は授業に行くわ。殿下、またあとで」
そしてくるりと踵を返して廊下を進む。背後で人々のざわめきが残り、“悪役令嬢、何を企んでるんだ?”という視線を強烈に浴び続けるが、私はそれを甘んじて受け入れる。――もう引き返さない。ご都合展開を逆手にとって、私はこの学園での立場を確立するつもりだ。
前日の“衝撃的な宣言”が学園中に知れ渡ったのか、登校した瞬間から人々の視線がひりつくように私に突き刺さった。
「セレナ様が王子と共闘するって、本当?」「ゲームとか壊すとか、いったい何の話……?」
そんなひそひそ声が廊下のあちこちで聞こえる。まるで私は“嵐の予兆”か何かのように扱われているらしい。
私はあえて気にしないフリで通り過ぎる。前世でも、大学のサークル内で噂が立ったり陰口があったりしても、なるべくスルーするよう心がけていた。
この世界の噂話は、もっと直接的で声も大きいけど、気にしていてはきりがない。周囲の囁きを耳から流しつつ、教室へ向かう。
そこへ、案の定のタイミングでアレクシスが現れた。
彼は軽く手を振って私のもとに歩み寄り、あたかも婚約者同士の仲が良いかのように、当然のように隣に並ぶ。
「おはよう、セレナ。今日は馬車で迎えに行けなくて悪かった。朝早くから王宮の方で用事があってな」
昨日はわざわざ私の家に迎えに来たのに、今日は別行動だったらしい。とはいえ、こうしてわざわざ朝イチで様子を見に来るあたり、やはり“私を放っておけない”という気持ちがあるのだろう。
――ゲームの王子ルートでは、ありえないほどの積極性だと改めて思う。
「気にしないで。私もあなたにべったり頼るつもりはないし……」
そっけなく返す私に、アレクシスは少し苦笑を浮かべる。
「ああ、わかっている。昨日は……お前の宣言に正直驚かされたよ。リリィのことを、あれほどまでに否定するとは思わなかった」
「彼女を否定したわけじゃないわ。“ヒロインごっこ”を終わらせたいだけ。リリィの正体が何であれ、王子を思いどおりにする筋書きを壊すつもりなの。そう言ったでしょ?」
私がそう言い切ると、彼は真面目な顔つきになって頷く。
「そうだったな。……俺はお前がやりたいようにすればいいと思っている。ただし、危険を伴うなら話は別だ。実際、リリィは何を仕掛けてくるかわからない。彼女の“聖女”としての力がどの程度のものか、俺もはっきり把握していないんだ」
“聖女”の力。ゲームでいえば、ヒロインであるリリィには何かしらの特別な力が与えられていたはずだ。治癒や浄化の類だった気がするが、細部は私も曖昧だ。ただ、転生先の“現実”だと、本当に奇跡のような力があるのかもしれないし、あるいは偽物の可能性もある。
「彼女が自分を大きく見せたくて誇張している……そんな可能性もあるのかしら?」
私が思いつきを口にすると、アレクシスは肩をすくめる。
「あり得る。ただし王家としては、彼女の力が本物なら利用価値は計り知れない。だからこそ、俺もむやみに排斥はできないんだ……」
その言葉に含みを感じる。リリィが本当に“奇跡の力”を持つなら、政治的にも大きな存在になる。だから、王家の立場であるアレクシスが迂闊に否定するわけにはいかないわけだ。
――要するに、私は引き続き“疑いの悪役令嬢”であり、リリィの“聖女の座”に挑む形になっている。だったらこっちにも覚悟が必要だ。
そうこうしているうちに、私たちの会話を遠巻きに見ていた生徒がどんどん集まり始める。彼らはアレクシスの姿に敬意を払いつつも、私との関係を探っているのだろう。しばらくすると、案の定、誰かが半分からかい交じりに声をかけてきた。
「セレナ様、昨日は“大胆なお言葉”をおっしゃったそうですが、今日は続きはないんですか? リリィ様と殿下の仲を割り込む、とか……」
軽口のようでいて、私を挑発しようとするニュアンスが明らかだ。でも今の私には怖いものがない。むしろ、自分から場を荒らしてでも立ち位置を確保するしかないのだ。
だから私は軽く微笑んで返す。
「ええ、もちろん。私はリリィがどれほどの“聖女”か、確かめてみたいと思っているの。――もし偽物ならば、私が彼女の野望を踏み潰すわ」
あっけらかんと言い切る私に、周囲が騒めくのを感じる。悪役令嬢に相応しい“敵役”っぽい宣言だなと、自分でも思う。
この大胆不敵な態度が人々を混乱させ、リリィにも圧力をかけるはず。ゲーム通りにいかない要素をどんどん加えて、私はあくまで“バグ技”を使って運命を変えてみせるのだ。
「それは……宣戦布告ですか、セレナ様?」
耳元でひそかに囁いてくるのはノエル。今日も私の後方で護衛を務めてくれている。私はちらりと振り返り、彼に目配せする。
「そうよ。受けて立つなら、いつでもどうぞ。……彼女が本当に清らかな聖女なら、私みたいな悪役に遅れをとるわけがないじゃない?」
少し刺激的な言葉をあえて使う。すると、アレクシスが驚いたように「お前な……」と声を出しかけるが、私はさっと彼の腕を掴んで制した。
「じゃあ、私は授業に行くわ。殿下、またあとで」
そしてくるりと踵を返して廊下を進む。背後で人々のざわめきが残り、“悪役令嬢、何を企んでるんだ?”という視線を強烈に浴び続けるが、私はそれを甘んじて受け入れる。――もう引き返さない。ご都合展開を逆手にとって、私はこの学園での立場を確立するつもりだ。
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