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【第三章】ヒロイン様、ご都合展開は終了です
27 偽装された事件――「消えた宝飾品」とリリィの涙
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さらに数日が過ぎた頃、学園内でちょっとした事件が起きた。貴族の生徒が大切にしていた宝飾品(家宝に準じるようなネックレス)が突然紛失し、それが“セレナの仕業ではないか”という噂が立ったのだ。
最初は誰もが半信半疑だった。いくら悪役と言えど、宝飾品を盗むなんて単純な犯罪を犯すだろうか……と思われていたらしい。
ところが、なぜかリリィが「セレナ様が大切な物を隠していました……」と言い出したから状況が変わった。リリィが自分の見たことを教師に報告し、さらに周囲にも「セレナ様が誰かを陥れようとしている気配を感じました」などと吹聴したのだ。
「馬鹿馬鹿しい。私はそんな下品な真似、するわけないじゃない」
私は憤慨しながらも冷静を装う。何より、この盗難はリリィによる“えん罪”作戦の匂いがプンプンする。
ノエルは当初から「またリリィの策略でしょう」と断言しているし、アレクシスも「証拠がない」と一蹴してはくれている。
しかし、平民出身の学友が多いリリィが“被害者への同情”を煽ったのか、次第に「やっぱりセレナが怪しいのでは?」という声が大きくなってきた。
そんな噂が最高潮に達したある日、私は校内の裏庭でリリィとばったり鉢合わせした。周囲に人気はなく、向こうは待ち伏せしていたかのように私を見据えてニヤリと笑う。
「セレナ様……あなた、王子にちょっと気に入られたからって調子に乗ってるみたいね。宝飾品の盗難事件の濡れ衣を着せられるのなんて、想定外だった?」
鋭利な言葉。やはり彼女は黒幕だと確信する瞬間だったが、私はその程度で動揺したくない。
「まさか、こんな下手な罠を仕掛けてくるとは思わなかったわ。あなたの知恵袋、そこまで底が浅いの?」
軽口を叩く私に対し、リリィは唇に指を当てて、可愛らしい仕草で笑う。
「ふふ……私が何をしようと、あなたは‘悪役令嬢’としての立場を覆せない。いくら殿下が庇ってくれても、周囲があなたを敵視すれば意味がないのよ?」
その言葉を聞いて、私は改めてリリィの本性を見極めた気がした。――きっと彼女こそが、本来のゲーム進行を我が物にしたい“真の黒幕”なのだ。
おそらく、リリィ自身も“転生者”かどうかはさておき、何かしらの情報をもとに“ヒロインとしてのシナリオ”を実行しているのだろう。だから私の登場は想定外であり、邪魔であり、排除すべき障害物となっている。
もし仮にリリィが実際に“聖女”であっても、その中身は決して清らかとは言い難い。――そんな確信めいた思いが胸を埋める。
「……悪役令嬢で構わないわ。でも、あなたの思い通りにはさせない。大体、宝飾品を隠したなんて証拠はないし、すぐに嘘だってばれるでしょ」
言い放つ私を、リリィは嗤うように見つめた。
「さあ、どうかしら? 学園の人々は真実よりも噂を信じるものよ。私が‘聖女’だと知っていれば、あなただっていずれ悪人だと思われる可能性が高いわ」
その自信満々な姿に、私は一瞬苦々しい気持ちを覚える。だが、私ももう黙っていない。静かに言葉を紡ぐ。
「……それなら、私も負けずに噂を使うだけ。あなたが偽りの聖女かもしれないって、広めてみようかしら?」
リリィの顔色が一瞬変わる。すぐに取り繕ったが、その間隙を見逃さない。やはり彼女は、自分の“聖女”としてのイメージが崩れることを最も恐れているのだろう。
そう確信した私は、笑みを浮かべながら踵を返す。――このままここで罵り合っても得るものはない。むしろ人目のある場所で、あからさまにリリィを追及してやるほうが効果的だ。
「あなたのご都合展開は終わりよ、リリィ。次に何を仕掛けてくるのか、楽しみにしてるわ」
そう告げて去る私に、リリィは険しい目で何か言いたげだったが、声を上げることはなかった。
最初は誰もが半信半疑だった。いくら悪役と言えど、宝飾品を盗むなんて単純な犯罪を犯すだろうか……と思われていたらしい。
ところが、なぜかリリィが「セレナ様が大切な物を隠していました……」と言い出したから状況が変わった。リリィが自分の見たことを教師に報告し、さらに周囲にも「セレナ様が誰かを陥れようとしている気配を感じました」などと吹聴したのだ。
「馬鹿馬鹿しい。私はそんな下品な真似、するわけないじゃない」
私は憤慨しながらも冷静を装う。何より、この盗難はリリィによる“えん罪”作戦の匂いがプンプンする。
ノエルは当初から「またリリィの策略でしょう」と断言しているし、アレクシスも「証拠がない」と一蹴してはくれている。
しかし、平民出身の学友が多いリリィが“被害者への同情”を煽ったのか、次第に「やっぱりセレナが怪しいのでは?」という声が大きくなってきた。
そんな噂が最高潮に達したある日、私は校内の裏庭でリリィとばったり鉢合わせした。周囲に人気はなく、向こうは待ち伏せしていたかのように私を見据えてニヤリと笑う。
「セレナ様……あなた、王子にちょっと気に入られたからって調子に乗ってるみたいね。宝飾品の盗難事件の濡れ衣を着せられるのなんて、想定外だった?」
鋭利な言葉。やはり彼女は黒幕だと確信する瞬間だったが、私はその程度で動揺したくない。
「まさか、こんな下手な罠を仕掛けてくるとは思わなかったわ。あなたの知恵袋、そこまで底が浅いの?」
軽口を叩く私に対し、リリィは唇に指を当てて、可愛らしい仕草で笑う。
「ふふ……私が何をしようと、あなたは‘悪役令嬢’としての立場を覆せない。いくら殿下が庇ってくれても、周囲があなたを敵視すれば意味がないのよ?」
その言葉を聞いて、私は改めてリリィの本性を見極めた気がした。――きっと彼女こそが、本来のゲーム進行を我が物にしたい“真の黒幕”なのだ。
おそらく、リリィ自身も“転生者”かどうかはさておき、何かしらの情報をもとに“ヒロインとしてのシナリオ”を実行しているのだろう。だから私の登場は想定外であり、邪魔であり、排除すべき障害物となっている。
もし仮にリリィが実際に“聖女”であっても、その中身は決して清らかとは言い難い。――そんな確信めいた思いが胸を埋める。
「……悪役令嬢で構わないわ。でも、あなたの思い通りにはさせない。大体、宝飾品を隠したなんて証拠はないし、すぐに嘘だってばれるでしょ」
言い放つ私を、リリィは嗤うように見つめた。
「さあ、どうかしら? 学園の人々は真実よりも噂を信じるものよ。私が‘聖女’だと知っていれば、あなただっていずれ悪人だと思われる可能性が高いわ」
その自信満々な姿に、私は一瞬苦々しい気持ちを覚える。だが、私ももう黙っていない。静かに言葉を紡ぐ。
「……それなら、私も負けずに噂を使うだけ。あなたが偽りの聖女かもしれないって、広めてみようかしら?」
リリィの顔色が一瞬変わる。すぐに取り繕ったが、その間隙を見逃さない。やはり彼女は、自分の“聖女”としてのイメージが崩れることを最も恐れているのだろう。
そう確信した私は、笑みを浮かべながら踵を返す。――このままここで罵り合っても得るものはない。むしろ人目のある場所で、あからさまにリリィを追及してやるほうが効果的だ。
「あなたのご都合展開は終わりよ、リリィ。次に何を仕掛けてくるのか、楽しみにしてるわ」
そう告げて去る私に、リリィは険しい目で何か言いたげだったが、声を上げることはなかった。
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