転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球

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【第四章】学園祭は、あなたと

リリィの新たな噂――“聖女ステージ”の準備

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舞踏会の方向性が一応決まった翌日、今度はリリィが“メインステージ”を使う企画を正式に申し込んだという話が広まった。
内容は「聖女として慈善活動を紹介し、学園に祝福をもたらす祈りの儀式を行う」とのこと。実際、リリィは平民出身ゆえに色々な慈善活動をこなしてきたという噂がある。そこに聖女としてのパフォーマンス要素を絡め、派手な“神聖”演出を加えるらしい。

「慈善って言っても、本当に彼女が主体的に何かしてきたのかしら?」
私は懐疑的だ。ノエルも同調するように口を開く。
「おそらく、実際には支援団体に名前を連ねているだけでしょう。ですが、彼女は ‘私が寄付や奉仕活動をしている姿をアピールしたい’ と考えているのでは? とにかく学園祭のメインステージでやるからには、大掛かりな仕掛けを用意しているはずです」

つまり、これはリリィにとって“絶好の自己アピールの場”というわけだ。乙女ゲーム的に言えば、ヒロインが大勢の前で健気さと正義感を見せつけ、攻略対象――つまり王子など――の好感度を一気に跳ね上げるイベントだったろう。
だが今の状況では、王子は舞踏会で私と組むと明言している。リリィは焦りからか、“慈善”や“聖女”の大義名分を使って周囲の支持を集めようとしているのではないか……。
実際、同情を買いやすい平民や、彼女を支援する一部の貴族にとっては、リリィが“ヒロイン”らしく華々しく振る舞うのは歓迎すべきことなのかもしれない。

(これ、放っておいたら、私のほうが“冷たい悪役”扱いされるかもしれない。学園祭でリリィが慈善だの奇跡だのを華々しく披露するのに対して、私が踊るだけの存在じゃインパクトが弱いわ)

考えてみると、先日の舞踏会準備でこそ私は皆をまとめ上げたが、それだけだと“気が利く公爵令嬢”くらいの評価でしかない。リリィのように派手な聖女ステージをぶち上げれば、観客の心は一気にそちらへ流れるだろう。
私は唇を噛みしめ、アレクシスに相談してみることにした。

放課後、校内の一角で合流したアレクシスに、私は率直に言う。
「リリィが祭のメインステージを独占するのは避けられないみたい。……私とあなたは舞踏会で目立つかもしれないけど、それ以外の時間帯はどうする? 正直、彼女の“聖女アピール”に対抗策が必要だと思うの」

すると、アレクシスはあまり思案する素振りを見せず「なるほど」と頷く。
「確かに、リリィに大きな顔をさせると、周囲が ‘やはりリリィこそが王子の隣にふさわしい’ と言い出すかもしれない。……なら、俺も何か祭の企画を作ってみようか」

「王子自ら、何か催しを?」

私が驚いて尋ねると、アレクシスは少し目を伏せて頬を掻く。
「恥ずかしながら、王子として公務以外の企画に参加するのは滅多にないんだが……。でも、学園祭なら多少の自由は許されるだろうし、俺もお前との連携を見せつけられる場が欲しい」

“お前との連携を見せつける”――そのストレートな言い回しに、胸が熱くなる。なんだか以前のアレクシスとは大違いだ。ゲームの王子像は、もっとクールで人を寄せ付けないはずだったのに……。
私は赤面しそうになるのを抑えながら、「いいわね。それなら、どんな企画なら王子が動いても自然かしら?」と話を膨らませる。

アレクシスは少し考えてから口を開く。
「たとえば……学園内の ‘バザー’ があるだろう? 毎年、生徒が作った工芸品や菓子を売っていると聞く。俺も貴族の一人として出品を用意し、客を呼び込むのはどうだ?」

なるほど、バザーで物品を売るのは、一般的な学園祭の光景だ。前世の感覚からしても、王子が店先に立って接客をするなら、それだけで大行列ができるだろう。
しかも、アレクシスと私が協力して何か手作り品を作ったり、特別な品を用意したりできたら……学園の注目は一気に集まるかもしれない。それに、リリィの慈善ステージと同じ“人を助ける”というコンセプトで売上を寄付する形にすれば、彼女の行動とも拮抗できそうだ。

「いいかもしれないわ。私たちも ‘売上を慈善団体に寄付します’ ってアピールすれば、リリィ一人がやってるわけじゃないってことになるし。聖女に独占される必要はない。賛同してくれる生徒も巻き込めば、かなり大きなプロジェクトになるかも」

私が熱を帯びて語ると、アレクシスも笑みを浮かべて同意する。
「よし、決まりだな。ノエルや周囲の生徒も誘って、大きく仕掛けよう。……名づけて‘王子と公爵令嬢によるバザー企画’だな」

「ちょっと、名前はもう少し考えてよね……。私ばかりが表に出るのは嫌だし」

苦笑しつつ、私たちは目を合わせて笑い合う。なんだか馬鹿みたいに楽しい。リリィと闘う、という緊迫感があるはずなのに、その陰でまるで学園祭の“普通の実行委員”のような活気が広がっていた。
――前世で文化祭を楽しめなかった反動か、私は今、この学園祭に本気でのめり込みたいと思い始めているのだ。

(これって、単なる“ゲームの破壊”だけじゃなくて……私自身が新しい道を作ろうとしている?)

自問自答するままに、アレクシスの隣で計画を練る。知らず知らずのうちに、私たちの距離は少しずつ縮まっている気がして――その事実に、私は戸惑いと心地よさを同時に味わっていた。
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