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【第四章】学園祭は、あなたと
41 学園祭の朝――活気と緊張の中で
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ついに学園祭当日を迎えた。早朝から続々と来場者が集まり、学園の門はいつも見られないほどの行列で賑わっている。貴族だけでなく、一般市民や商人らも興味本位で訪れ、校内の熱気はまさにお祭りそのもの。
門をくぐった瞬間、出店の香りと人いきれが押し寄せてきた。前世の文化祭を思い出す懐かしさと、この世界ならではの貴族的な優雅さが入り混じり、頭がクラクラするほど活気に満ちている。
「セレナ様、こちらへどうぞ。バザーの準備が急ピッチで進んでおります」
ノエルが私を案内してくれる先には、王子が企画したバザーのブースが設置されていた。すでに多くの生徒が手作りアクセサリーやお菓子を並べ、呼び込みの声を張り上げている。
アレクシスは少し離れたところで騎士らと話し合いをしていたが、私を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。
「セレナ、間に合ったな。よかった……。どうだ、これだけの規模にできたのはお前のおかげだよ」
「いえいえ、私だけじゃなくて、みんなが協力してくれたからよ。王子や公爵家が共同で主催するとなれば、そりゃ注目を集めるわ」
実際、私の名義で出品した高級菓子やアクセサリーはすでに飛ぶように売れているようだ。今回の売上はすべて慈善団体に寄付することにしている。
“聖女のリリィだけが慈善をするわけではない”という事実を、華やかに示したかったのだ。この企画に賛同してくれた生徒や教員、さらに外部の商人までもが参加してくれたため、予想以上の盛況ぶりである。
「殿下のお力はやはり偉大ですね。これならリリィの聖女ステージにも対抗できるかもしれません」
皮肉めいた言葉を口にする私に、アレクシスは静かに頷く。
「そうだな。でも、リリィが何かやらかすなら、それは夕方のステージだろう。そこまで油断はできない。……ああ、そうだ。舞踏会の準備も並行して進んでいるが、時間まではここで一緒に接客をしてくれないか?」
「えっ、私が? いいの?」
王子自ら接客をすれば大盛況なのはわかるが、私も前へ出て売り子をするのは少し照れくさい。それでも、せっかくならやってみようと頷く。
「わかったわ。どんな感じで呼び込みすればいいの? ‘いらっしゃいませ~’ とか言えばいいのかしら?」
アレクシスが苦笑する。
「そんな感じだ。簡単だが慣れていないから俺も緊張する。……ま、楽しもう。今日は学園祭なんだから」
なんだか肩の力が抜ける。王子の甘い笑顔に誘われ、私はちょっとだけ顔を赤らめながら売り子の立ち位置へ進む。目の前には、好奇心に満ちた来場者が行き交っている。
「ようこそ、王立学園バザーへ。良かったら見て行ってくださいね!」
私が声を張り上げると、周囲の客がどっと沸き、あちこちで「公爵令嬢セレナ様が接客してる!」「王子殿下もいる!」と大騒ぎになる。
これはこれで一種の“客寄せパンダ”だが、祭なんだからいいではないか。実際、商品は面白いように売れていく。
アレクシスも慣れない手つきで「どうだね、こちらの品は?」なんて声をかけ、客に笑顔を振りまいている。ときどき客の女性が赤面したり、子どもが目を輝かせて近寄ったり……王子の人気のほどが改めて伺える。
(リリィのステージが始まるまで、こうして人々と触れ合いながら時間を過ごすのも悪くない。むしろ、今はめいっぱい楽しんでおこう)
私の心が踊る。こんなに“自分の意思”で学園祭を満喫するなんて、転生してから初めての経験だ。悪役令嬢という呪縛なんて一瞬忘れてしまうほど、楽しくて仕方ない。
――だが、ふと視線の先に、こちらを睨むように見つめる人影を見つけた。金髪を揺らす少女――リリィだ。遠巻きにバザーの様子を眺め、何やら思案げに唇を噛んでいる。こちらの盛況ぶりが気に食わないのだろう。
目が合うと、リリィはサッと視線を逸らして去っていった。背には薄緑色のローブを羽織り、まるで“聖女様”を演出するコスチュームのようにも見える。
(夕方のステージ……いったい、どんな奇跡を見せるつもり? 禁忌の魔法まで引っ張り出して何をやるのかしら?)
胸騒ぎを覚えつつも、私はその背に声をかけるわけにもいかず、黙って見送るしかなかった。いずれ、あちらが舞台へ立ったときが勝負だ――その予感だけが、甘い祭の熱気の中でひそかに私の心を冷やしていた。
門をくぐった瞬間、出店の香りと人いきれが押し寄せてきた。前世の文化祭を思い出す懐かしさと、この世界ならではの貴族的な優雅さが入り混じり、頭がクラクラするほど活気に満ちている。
「セレナ様、こちらへどうぞ。バザーの準備が急ピッチで進んでおります」
ノエルが私を案内してくれる先には、王子が企画したバザーのブースが設置されていた。すでに多くの生徒が手作りアクセサリーやお菓子を並べ、呼び込みの声を張り上げている。
アレクシスは少し離れたところで騎士らと話し合いをしていたが、私を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。
「セレナ、間に合ったな。よかった……。どうだ、これだけの規模にできたのはお前のおかげだよ」
「いえいえ、私だけじゃなくて、みんなが協力してくれたからよ。王子や公爵家が共同で主催するとなれば、そりゃ注目を集めるわ」
実際、私の名義で出品した高級菓子やアクセサリーはすでに飛ぶように売れているようだ。今回の売上はすべて慈善団体に寄付することにしている。
“聖女のリリィだけが慈善をするわけではない”という事実を、華やかに示したかったのだ。この企画に賛同してくれた生徒や教員、さらに外部の商人までもが参加してくれたため、予想以上の盛況ぶりである。
「殿下のお力はやはり偉大ですね。これならリリィの聖女ステージにも対抗できるかもしれません」
皮肉めいた言葉を口にする私に、アレクシスは静かに頷く。
「そうだな。でも、リリィが何かやらかすなら、それは夕方のステージだろう。そこまで油断はできない。……ああ、そうだ。舞踏会の準備も並行して進んでいるが、時間まではここで一緒に接客をしてくれないか?」
「えっ、私が? いいの?」
王子自ら接客をすれば大盛況なのはわかるが、私も前へ出て売り子をするのは少し照れくさい。それでも、せっかくならやってみようと頷く。
「わかったわ。どんな感じで呼び込みすればいいの? ‘いらっしゃいませ~’ とか言えばいいのかしら?」
アレクシスが苦笑する。
「そんな感じだ。簡単だが慣れていないから俺も緊張する。……ま、楽しもう。今日は学園祭なんだから」
なんだか肩の力が抜ける。王子の甘い笑顔に誘われ、私はちょっとだけ顔を赤らめながら売り子の立ち位置へ進む。目の前には、好奇心に満ちた来場者が行き交っている。
「ようこそ、王立学園バザーへ。良かったら見て行ってくださいね!」
私が声を張り上げると、周囲の客がどっと沸き、あちこちで「公爵令嬢セレナ様が接客してる!」「王子殿下もいる!」と大騒ぎになる。
これはこれで一種の“客寄せパンダ”だが、祭なんだからいいではないか。実際、商品は面白いように売れていく。
アレクシスも慣れない手つきで「どうだね、こちらの品は?」なんて声をかけ、客に笑顔を振りまいている。ときどき客の女性が赤面したり、子どもが目を輝かせて近寄ったり……王子の人気のほどが改めて伺える。
(リリィのステージが始まるまで、こうして人々と触れ合いながら時間を過ごすのも悪くない。むしろ、今はめいっぱい楽しんでおこう)
私の心が踊る。こんなに“自分の意思”で学園祭を満喫するなんて、転生してから初めての経験だ。悪役令嬢という呪縛なんて一瞬忘れてしまうほど、楽しくて仕方ない。
――だが、ふと視線の先に、こちらを睨むように見つめる人影を見つけた。金髪を揺らす少女――リリィだ。遠巻きにバザーの様子を眺め、何やら思案げに唇を噛んでいる。こちらの盛況ぶりが気に食わないのだろう。
目が合うと、リリィはサッと視線を逸らして去っていった。背には薄緑色のローブを羽織り、まるで“聖女様”を演出するコスチュームのようにも見える。
(夕方のステージ……いったい、どんな奇跡を見せるつもり? 禁忌の魔法まで引っ張り出して何をやるのかしら?)
胸騒ぎを覚えつつも、私はその背に声をかけるわけにもいかず、黙って見送るしかなかった。いずれ、あちらが舞台へ立ったときが勝負だ――その予感だけが、甘い祭の熱気の中でひそかに私の心を冷やしていた。
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