転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球

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【第四章】学園祭は、あなたと

40 祭前日――舞踏会のリハーサルと王子の決意

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やがて月日は流れ、学園祭前日。校舎や中庭は前夜祭も兼ねて一部公開され、既に保護者や見物客で大賑わいになっている。リリィの“聖女ステージ”は翌日の夕方に行われる予定で、各所の噂によれば相当に豪華な演出を用意しているらしい。
一方、私とアレクシスの“舞踏会”は夜にメインプログラムとして組み込まれている。昼間には私たちの“バザー”企画もあり、とにかく大忙しだ。
とはいえ前日はリハーサルや最終調整がメインで、本番ほど大掛かりにはならない。私は舞踏会の会場となるホールで音楽隊と打ち合わせをし、会場の装飾を最終確認しながら、念入りに動きを頭に入れる。

「セレナ様、ドレスはいつお召しになります? リハーサルと言っても軽装では失礼だという声が……」

そう尋ねてくるのは、イベントを仕切る令嬢たち。実際、ここまでの準備に協力した結果、私はすっかり“中心人物”として頼りにされるようになってしまった。
私は苦笑しながら首を振る。

「本番の衣装は明日にとっておくわ。今日は仮のドレスで動きだけ合わせれば十分よ。みんなも体力を温存して、本番に備えましょう」

皆が了解し、リハーサルは滞りなく進んでいく。ワルツや軽やかなダンスのパートを確認し、フォーメーションの入退場をチェックしながら、私は何度も頭の中でシミュレーションを繰り返す。
ゲーム内だったら、ヒロインが王子と踊るイベントでドキドキするはず。――今は私がその役割を実質的に担っている。複雑だけど、胸が高鳴る瞬間でもある。

夕暮れが近づき、リハーサルも終盤に差し掛かったとき、アレクシスがやってきた。護衛を連れつつも、珍しく落ち着かない表情で私のそばに立つ。
「セレナ、明日は予定通り舞踏会で一緒に踊るが……そのあと、祭の打ち上げがあるだろう? そこでもお前と過ごしたいんだ」

「打ち上げ……って、あの非公式の夜会? 先生や父兄には内緒で、学生同士がこっそり飲み物を持ち寄って語り合う……?」

私は噂には聞いていたが、貴族の令嬢である私はあまり参加を想定していなかった。
ところが、アレクシスは真顔で頷く。

「非公式だからこそ、貴族や平民の垣根なく楽しめるそうだ。俺も王族であるがゆえ、普段は遠慮していたが……今回はお前と共に行きたいと思っている。どうだろう?」

王族がそんな場に混じるのは異例中の異例だが、学園の“青春”らしい風情に憧れを持っているのかもしれない。私は少し目を丸くしつつ、まぶたを伏せる。

「別に構わないわ。……でも、誰よりも注目されるわよ、殿下がいるなんて」

それでもアレクシスは構わないと言わんばかりに笑う。――彼は本当に今、王子としてのしがらみを一部捨ててでも“私との時間”を求めてくれている気がする。
心の奥が熱くなりそうで、怖い。私だって、こんな優しい彼に惹かれているのは自覚しているのに、いまだに自分が“悪役令嬢”だと思うと臆病になってしまうのだ。

「……わかった。明日が終わったら、私も打ち上げに行ってみる。リリィがどんな結果を出そうと、私は私の道を進むだけよ」

小さく笑ってそう答えると、アレクシスは満足気に頷いてから、急ぎ足で立ち去った。宮廷での用事があるらしく、本来ならこんなギリギリまで学園にいるだけでも相当無理しているのだろう。

さて、明日は学園祭本番。リリィが“禁忌の魔法”を使うかどうか、王宮はリリィを正式な聖女として認めるのか、そしてアレクシスと私の“悪役令嬢×王子”ペアは周囲の評価をどうひっくり返せるのか――。
いろいろな思惑が渦巻く中、私は明日に備えて自宅へ戻る。夜を迎えるまで、さらに最終調整やドレスの確認をしなければ。心は高鳴り、同時に身がすくむような不安もある。
きっとこの学園祭で、リリィとの本格的な勝負が始まるのだろう。あるいは決着すらついてしまうかもしれない。
だとしても、私は逃げない。悪役だろうと何だろうと、もう後戻りできないところまで来ているのだから――。
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