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到着前
2日ほど馬車に揺られてオリフィス地域の付近に下ろしてもらった。
激戦区であるため、ここからは徒歩で向かう。
「久しぶりの移動は体に堪えるなぁ」
「2日は長いですね......身体中が痛いです」「今日1日は、休めるからしっかりと休んで......問題は明日からだな」
「明日どこに配属されるかですよね......」
1日目から戦場に派遣されることはないと信じたいが、父が根回ししていたら前線に派遣されてもおかしくはない。
「普通だと、物資管理とか食事とかの雑用から始まるんだけど、どうだろうな」
「普通じゃないですからね」
今は朝の4時。
5時には着くから、大分休めるだろうな。
今日は明日に備えて休むことしか出来ない。
「まあ、歩こう!ここから少し歩いた所にとっておきがあるんだ」
「先輩ここ来たことあるんですか?」
「あぁ。陸軍の部隊研修は全ての部隊を1年かけて周り、その後部隊長が指名制で選んでいくんだ。僕が研修だった頃、ここは激戦区じゃなかったけどね」
歩き出した先輩は、少し悲しげな空気を纏っている気がした。
とっておきは、きっと親友のイヴァンさんとの思い出でもあるんだろうな。
「いいんですか。とっておきの場所を俺なんかに教えて」
「いいに決まってるだろう。君が僕の部下を辞める予定があるなら話は別だけど?」
「なら、大丈夫ですね」
「ふふ。君のような子は初めてだ。研修まで保った子は今まで一度もいなかった。これからもずっと僕の部下でいてくれよ」
「死ぬまでずっと俺は貴方の部下でいます」
「じゃあ、君は永久に僕の部下だね」
死なせないと約束した。
死なないと約束した。
だから、俺は永遠に先輩の部下でいる。
嬉しそうな先輩の足取りは今にもスキップしそうだ。
先輩が幸せなら何だっていい。
大切な人を亡くした哀しみはなくなることはないって知ってる。
それでも、少しでも哀しみを和らげてあげたいと思う。
「先輩、とっておきのヒントください」
「えー。じゃあ、草があります」
「ここにだってあるじゃないですか」
「そうだね。でも、ヒント無しに見た方がきっと良いはずだよ」
「分かりました」
しばらく歩くと分かれ道になっていて、第3基地の方向を示す看板があった。
「昔は看板なんてなかったのに」
9年前か。
分かれ道の左側が基地への道だけど、先輩は迷わず右へ行った。
きっとこの先にとっておきがあるのだろう。
右の道は細く草も多くて、進むにつれ、道とは言えなくなっていった。
「じゃあ、アラン。目を閉じて」
「え、でも」
「いいから。僕を信じて」
「分かりました」
大人しく目を閉じると、両手を引かれた。
開けたくなる気持ちを抑え、ゆっくりと歩いていく。
「よーし!ほら、目を開けてごらん」
「わっ......」
とっておきは本当に綺麗だった。
光が反射してキラキラとしている湖の周りにコスモスが咲き誇っていた。
「どう?とっておきだろう?」
そういう先輩の顔は満足そうな得意げに笑っていた。
繋がったままの手の心地よさも風に靡く先輩の三つ編みも無邪気な笑顔もきっと忘れることはない。
「はい。とても綺麗です」
「ふふっ。そうだろう!オリフィス地域だと聞いてから君にこれを見せたくてしょうがなかったんだ。一緒に見れて良かった」
先輩の手はやっぱり硬くて、温かい。
手を繋いでるのに、こんなに近くにいるのに、先輩がどこか遠くに行ってしまいそうな気がした。
思わず先輩の手を強く握ってしまう。
「君はやっぱり甘えたがりなんだな」
そう言って、先輩は笑いながら手を握り返してくれた。
「僕のことばかり見てないで、少しは湖でも見たらどうだい?せっかくの綺麗な景色なんだから」
「せっかく先輩と来たんだから、先輩と景色を一緒に覚えていたいんです」
「それならば、しっかり見ないとね。僕も君とのこのひとときを心に焼き付けよう」
激戦区であるため、ここからは徒歩で向かう。
「久しぶりの移動は体に堪えるなぁ」
「2日は長いですね......身体中が痛いです」「今日1日は、休めるからしっかりと休んで......問題は明日からだな」
「明日どこに配属されるかですよね......」
1日目から戦場に派遣されることはないと信じたいが、父が根回ししていたら前線に派遣されてもおかしくはない。
「普通だと、物資管理とか食事とかの雑用から始まるんだけど、どうだろうな」
「普通じゃないですからね」
今は朝の4時。
5時には着くから、大分休めるだろうな。
今日は明日に備えて休むことしか出来ない。
「まあ、歩こう!ここから少し歩いた所にとっておきがあるんだ」
「先輩ここ来たことあるんですか?」
「あぁ。陸軍の部隊研修は全ての部隊を1年かけて周り、その後部隊長が指名制で選んでいくんだ。僕が研修だった頃、ここは激戦区じゃなかったけどね」
歩き出した先輩は、少し悲しげな空気を纏っている気がした。
とっておきは、きっと親友のイヴァンさんとの思い出でもあるんだろうな。
「いいんですか。とっておきの場所を俺なんかに教えて」
「いいに決まってるだろう。君が僕の部下を辞める予定があるなら話は別だけど?」
「なら、大丈夫ですね」
「ふふ。君のような子は初めてだ。研修まで保った子は今まで一度もいなかった。これからもずっと僕の部下でいてくれよ」
「死ぬまでずっと俺は貴方の部下でいます」
「じゃあ、君は永久に僕の部下だね」
死なせないと約束した。
死なないと約束した。
だから、俺は永遠に先輩の部下でいる。
嬉しそうな先輩の足取りは今にもスキップしそうだ。
先輩が幸せなら何だっていい。
大切な人を亡くした哀しみはなくなることはないって知ってる。
それでも、少しでも哀しみを和らげてあげたいと思う。
「先輩、とっておきのヒントください」
「えー。じゃあ、草があります」
「ここにだってあるじゃないですか」
「そうだね。でも、ヒント無しに見た方がきっと良いはずだよ」
「分かりました」
しばらく歩くと分かれ道になっていて、第3基地の方向を示す看板があった。
「昔は看板なんてなかったのに」
9年前か。
分かれ道の左側が基地への道だけど、先輩は迷わず右へ行った。
きっとこの先にとっておきがあるのだろう。
右の道は細く草も多くて、進むにつれ、道とは言えなくなっていった。
「じゃあ、アラン。目を閉じて」
「え、でも」
「いいから。僕を信じて」
「分かりました」
大人しく目を閉じると、両手を引かれた。
開けたくなる気持ちを抑え、ゆっくりと歩いていく。
「よーし!ほら、目を開けてごらん」
「わっ......」
とっておきは本当に綺麗だった。
光が反射してキラキラとしている湖の周りにコスモスが咲き誇っていた。
「どう?とっておきだろう?」
そういう先輩の顔は満足そうな得意げに笑っていた。
繋がったままの手の心地よさも風に靡く先輩の三つ編みも無邪気な笑顔もきっと忘れることはない。
「はい。とても綺麗です」
「ふふっ。そうだろう!オリフィス地域だと聞いてから君にこれを見せたくてしょうがなかったんだ。一緒に見れて良かった」
先輩の手はやっぱり硬くて、温かい。
手を繋いでるのに、こんなに近くにいるのに、先輩がどこか遠くに行ってしまいそうな気がした。
思わず先輩の手を強く握ってしまう。
「君はやっぱり甘えたがりなんだな」
そう言って、先輩は笑いながら手を握り返してくれた。
「僕のことばかり見てないで、少しは湖でも見たらどうだい?せっかくの綺麗な景色なんだから」
「せっかく先輩と来たんだから、先輩と景色を一緒に覚えていたいんです」
「それならば、しっかり見ないとね。僕も君とのこのひとときを心に焼き付けよう」
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