Luv hate

ななな

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出発前夜

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的確な指揮を執るためには、一度戦場を見ておくことが大切らしい。
昇進のための研修で俺は戦場へ行くことになった。
最初から司令部に配属された場合、1年間会議の書記をしてその後の研修での働きによって昇進出来る。
そして、その働きを見るのは、教育係。
ということで、先輩と1年間の部隊研修。
配属されたのは、第3部隊。
第3部隊は東のオリフィス地域を担当している。
オリフィス地域は国境で激戦区だ。
研修で激戦区に派遣されることは普通ない。
訓練が足りていないことや、定年退職が多く、人数が少ない司令部の人数を更に減らすことになるから。

「なぜ、アランが第3部隊に配属なんだ!?」
「そう怒らないでください。アルバーンさん。きっと父の意向でしょう。あの人は自分をよく思っていないのです」

父は強いし、すべての部隊の指揮官との関わりがある。
俺を激戦区を担当しているところへ配属するなど簡単だろう。
先輩に申し訳ないな。

「アラン。明日、出発だな」
「ですね。...すみません」
「君の父上は、本当に難儀な性格をしているな。子供を自ら、激戦区に送り出すなんて、並大抵の親じゃ出来ない」
「父は自分を祖父の子だと思っているのです。父と母は夫婦でしたが、俺の顔立ちがあまりにも祖父に似ていくので、父は母と祖父が関係を持っていたと勘違いして新しく妻を迎え、母を妾にしたんです」
「隔世遺伝を知らないのか?子供が祖父母に似るなんてよくあることなのに」
「父は祖父が元から好きではなかったのです」

祖父が妾の子ばかり可愛がり、自分には厳しい鍛錬や勉強をさせ、褒めることはなかったと父が祖父の葬式の時に漏らしていた。
生前祖父は、父を長男だからと立派に育てることだけを考え厳しくしすぎてしまったと後悔していた。
何度も謝ったが父は聞く耳を持たず、祖父は他界。
父上は自分がされた事を、俺にぶつけて過去の自分を慰めている。
もし、俺が父上に似ていたのならば、母も追い出されず、祖父と父も和解していたのでは無いか。
俺が父上に似ていれば。

「自分の髪が、目が許せない。母を不幸にしてしまった。成長すればするほど祖父の若い頃の生き写しになって、父上の目が冷たくなっていって......」
「...僕は、君の月のような淡い金色も僕とお揃いのグレーの瞳も好きだよ。君の髪が靡くたびに、僕は心を奪われるし、嫌いだった自分の目も、可愛い君とお揃いだと思うと嬉しいよ」

先輩の言葉一つで自分を許したくなってしまう。
生まれてからずっと憎んできた容姿を、綺麗と、お揃いだと言ってくれた。
この髪で、瞳でよかったと。
憎んでいたものを一瞬のうちに変えてしまった。
先輩は分かっているのだろうか。
ずっと、俺を救っていることを。
歳を重ねるたびに、父上に冷たい目を向けられるようになっていた子供の頃の俺も救ってしまった。

「だから、君は父上と会う時に前髪を下ろしていたのか」

せめて、目だけでもと思って前髪を伸ばしていた。
いつもは、前髪を分けているけど、父と会う時は目を隠すためにおろしていた。

「先輩はどうして目が嫌いなんですか」
「嫌いだったに訂正してもらうまで答えられないかな」
「...先輩はどうして目が嫌いだったんですか」
「僕の地域では皆、碧い瞳だったんだよ。両親の瞳は碧だったのに僕はグレーだった。別にそれで何か言われたわけでも、された訳でもない。皆んなと同じが良かったという子供じみた理由さ」

先輩はきっと碧い瞳でも似合うんだろう。
桃色の髪に映えそうだ。

「アラン。僕は君を絶対に死なせないよ」
「それは誓いですか。それとも約束ですか」
「うーん。誓いかな。約束にしたらそれは2人のもので、君に押し付ける形になるだろう?」
「約束にしましょう?俺は約束がいいです。先輩のために生きる努力をします」
「ふふっ、君は猫のようだな。外だと飄々としているのに家では素直だ。いいよ。約束だ。僕は君を死なせない。君は僕のために生きる努力をする。指切りだ」

先輩の手は、華奢な身体に見合わない硬さで、剣を何度も握っていたのだと分かる。

「僕は、君を死なせない。約束だ」
「俺は、死にません。約束です」

小指を離そうとしたら、先輩が手を握ってきた。
先輩は不意にこういう事をしてくる。
握ったくせに目は合わせないで、窓を見るし、黙る。

「先輩の手、あったかいね」
「君の手が冷えているだけだろう?」
「このまま、ずっと温かいままでいてくださいね」
「ふふ、そんな無茶な」

明日が、来なければいいのに。






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