愛させてよΩ様

ななな

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プロローグ

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僕の人生は最初から決まってると思ってた。家を継いで国を支える。
それが僕の人生だと思ってた。
なのに僕の性別はΩ!
Ωが家を継げない訳じゃないけど...。
僕の家は国の三大公爵家。
貴族の中じゃ地位が高い。
高いというか殆ど一番上だ。
世間的にはαの弟が継ぐ方がいい。
それに僕には役目がある...。
王太子殿下の婚約者だ。
残念ながら、僕は今この国にいるΩの中で一番地位が高いため強制的に婿入りすることになる。
まあ、名誉なことだ。
国を直接的に支えられるし、家の立場もよくなる。
問題は僕がΩなことだ。
発情期が来るなんてはしたない。
恥ずかしい。別に他のΩに対しては別に普通のことだし、しょうがないと考えてた。
でも、自分のことってなったら恥ずかしくて発情期なんかこなきゃいいのにって思う。
一般的に発情期が来だすのは16~17歳くらい。
個人差が大きいから、なるべく遅く来て欲しいと願ってる。
秋から学校も始まるし、もう少し大人なってからでいい。
別に王太子殿下の婚約者だけど、そこまで番になりたいとかはない。
だって運命じゃないから。
僕は運命の番が現れるまでの仮婚約者だし、運命の番が現れなかったらそのまま結婚だけど王子だし運命に会うことなんて容易だろう。
だから、僕は僕の運命を見つけて養って貰わないと。
今までやってきた王族の教育は無駄になるけど、とりあえず貴族にさえ嫁げればいい。
「兄様。眉間に皺が...」
「え?あぁ...」
僕を兄様と呼ぶこの可愛い可愛い弟は周りからは僕より年上に見えるらしい。
薄い桃色の髪に母上譲りの翠の目は令嬢達がうっとりするような麗しい見た目だ。
その上身長も兄の僕をとうに超えている。
こんなにかっこいいのに、性格は優しく真面目で欠点なんかないんじゃないのかと思う。
「悩みでもあるの?」
「いや...もうすぐ学校が始まるから大丈夫かなって」
「兄様なら大丈夫って言いたいんだけど...やっぱり僕も心配かな。僕も一緒に行けたらいいのにね」
「僕もエドと一緒がいいよ...」
「でも、兄様には王太子殿下がついてるから大丈夫だよ。兄様の事ちゃんと見てるし守ってくれるしね」
そりゃあ、王太子殿下の婚約者の僕に何かする人はいないし...。
でも、別に殿下と仲が良い訳でもない。
子供の時から婚約者だと決まっていたけど、誕生日にプレゼントが贈られてきたり手紙のやり取りを月に一回程度だ。
手紙には最近やっている勉強とか趣味とか他愛もないことで婚約者らしい会話など一回もしたことがない。
「別にそういうのが心配なんじゃなくて...運命の番に会えるかが心配」
「何言ってるの!?堂々と浮気宣言するなんて...兄様そんなに殿下って良くない人なの...?」
「いやいや、すごく良い方だと思うけど...僕は殿下の運命の番じゃない訳だし」
「...?何、言ってるの?殿下は兄様のこと運命の番だって随分前に発表したでしょう?」
「...えぇ?そうだっけ」
運命の番が...僕?
何か勘違いしてるのでは...?
会ったことはあるけど、そういうのは感じなかったはず...。
会った時も、すぐにどこかに行っちゃって全然運命とかそういうの感じられなかったのに。
「兄様は発情期がまだだから運命とか分からないんじゃない?発情期が来ないとαのフェロモンも分からないっていうし」
「じゃあ、普通殿下も分からないでしょう?Ωのフェロモンが出てないんだから」
「...Ωがαのフェロモンを発情期が来るまで感知出来ないだけでフェロモンは出てるんだよ。じゃなきゃ、今頃兄様がΩなんて分からないでしょう」
「そっか。...そんなようなこと習ったね」
僕と殿下が運命...?
えぇ...?絶対勘違いしてると思うんだけど。
「更に心配になったよ。兄様は美人だし、警戒心も無いから変な人に騙されそう」
「兄様のこと信用出来ないの?」
「だって、帝国の白百合と言われてる母上に瓜二つの見た目だよ?歩いただけで周りが振り向くし」
僕の母上は帝国の白百合と呼ばれるほどの美女で小さな頃から父上に一目惚れされ、父上は母上以外と結婚する気はないと婚約者もおらず、猛アプローチの末結婚したのだ。
母上は腰まで伸びた真っ直ぐの白銀の髪と翠の垂れ目に陶器の様な透き通った肌を持っている。
そしておっとりとした性格でそれはもう人気があった。
そんな母上に似てると自分でも思う。
でも、目の色は父上譲りの薄い水色でそこだけは母上と違う。
垂れ目は一緒なんだけど。
目の色以外母上の生き写しだ。
「僕がこんなに美人じゃなかったら、殿下の番に選ばれてなかったんじゃないの...」
「...無理だよ。だってこの国で一番地位が高い番なしのΩなんだから」
「分かってるよ...でも、殿下が本当の運命の番を見つけたら僕は捨てられるし。その時のために僕も運命の番見つけた方がいいじゃんか」
「兄様って殿下の事なんで好きにならないの?国中の貴族達が殿下を崇拝してるくらいなのに」
殿下は崇拝されるくらい素晴らしい人間なのだ。
見た目も王族特有の紫色の目はスッとした切れ目でさらさらした金色の髪をおでこの中心で分けた髪型は殿下のおかげで貴族の中で流行った。
勉強も優秀で本当は学校に行く必要もないはずだけど貴族との交流を深めるために僕と一緒に入学するらしい。
僕も王族の教育を受けてたから勉強は終わってるけど、貴族は学校に行くのが決まりだから3年間勉強をしなければならない。
「...嫌いじゃないけど捨てられたくない」
「捨ててもらえないよ...兄様は本当に鈍感なんだね」
困ったようにエドが笑った。
そう...僕だって殿下が嫌いじゃないから困るんだ。
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