18 / 39
18話 宴と感謝?
しおりを挟む「二人共、本当にありがとう。最悪村が全滅していたかもしれん」
そう言って頭を下げる村長。眩しくて辛い……
夕日が照らす村長の頭は、光り輝いていた。
「うっ、頭を上げてくれ。礼なら彼女に」
思わず眩しくて声を上げてしまい、誤魔化すようにローラの話を出す。俺達から少し離れた場所で、村の女性陣達と料理をしている彼女に視線を投げた。
元々、ローラが言い出したことだ。俺は少しだけ手伝いをしただけに過ぎない。
やっと村長が深く下げた頭を上げ、帽子をかぶり眩しさが収まった。もうそれって視力阻害のスキルじゃないのか?
是ともお礼にと、今夜村で宴を開き、俺達をもてなしてくれる事になったからな。別にそこまで急ぐ旅でもないので、お言葉に甘えることにした。
ローラがかなり乗り気だったとも言う……
それに急ぐなら、俺がローラを抱え飛行魔法をとばせば半日でついてしまうのだから。
「しかし、美しいお仲間ですな。恋人か奥様ですかな?」
「いや、目的地が同じだから、道中臨時で一緒にいるだけだ」
「ほほう……」
――ジーーーーー
「あまり邪推されると困るな」
おい、エロジジイ。その関係を探るような、イヤらしい視線で俺と彼女を交互に見るのはやめろ。
低めの声で一言そういって睨むと、ヒィッ、と叫び声を上げて去って行った。
いくら娯楽がないからと、話のネタにされては困る。
「どうしたの?」
「なんでもない。それよりローラは良かったのか?」
「まぁ、急いではいるけど、エルフの時間感覚はあなた達とは違うから問題ないわよ。それにせっかくのお招きだし、みんな嬉しそうじゃない?ねぇ~ホルスちゃん」
「キュイ」
村に戻ってからホルスの世話をしていたが、ローラが預かりたいというので、今ではローラの胸元に挟まって返事をしてきた。
お前、羨ましいな…………
俺は彼女の胸元から視線をそらし尋ねる。変態扱いされたくない。
「そういうものか?」
「そういうものよ♪それより良かったの?レッドグリズリーのお肉を一ブロックだけ取って残りを全部村に上げちゃって」
「問題無いさ」
「それに毛皮や爪に牙も、被害にあった家族に譲るなんて」
「これから何かと物入りになるだろう。このままだとあの家族は飢え死にしそうだったしな」
「だからって、家畜より何倍も価値があるのに……」
「魔石と一番美味い部位だけでで十分さ。それより宴が始まるらしいぞ」
準備が終わったらしく、村の子供達がローラを呼びに駆け寄ってくる。無邪気で可愛いな。それに大量の肉が食える事にはしゃいでいる。
しかし、俺には何故かおっさん達がジョッキ片手に呼びに来た。なんだろう、この敗北感……
宴が始まり、皆とても楽しそうだ。焼かれた肉を頬張り波々に注がれたエールを煽る。男達は騒ぎすぎて女性陣に注意され、男の子達は駆け回り冒険者ごっこをし、女の子達はローラの下に集まって旅の話でも聞いているのだろう。
しかし俺はというと、
「いやぁ~~ ヒック その顔からの想像通り強いな、アンタ ヒック」
「あ、ああ……」
「なに食って、ヒック どう鍛えたら、そんな締まった身体になれるんだ? ヒック」
「お、おう……」
ガリでノッポのおっさんに、チビでデブのおっさんの、二人に挾まれ色々と聞かれるが、なぜ顔を撫でる?なぜ太腿をさする?
「お前達やめんか!恩人まで食べようとするでない」
先程悲鳴を上げて去って行った村長が戻ってきて、二人を注意してくれて助かった。そそくさと俺から離れ宴の輪に混じっていく。
「助かったよ村長」
あのままでは実力行使で排除するところだった。
「それで、フウガ殿。今日はローラ殿と同じ部屋で寝床を用意いたしましょうか?ヒッヒッヒッ」
感謝したことを後悔する。
女子共達だけ護衛して逃げちまえば良かったかな……
ローラとは別部屋を用意してもらい、宴も終わり休んだ翌朝、村人総出で見送られ俺達は村を後にした。
「昨日は楽しかったわね?」
「そうだな……」
「フフフフフ♪」
「ローラ、知ってて聞いてるだろ!」
「なんのことかわからないなぁ~」
「キュイ?」
「絶対わかってて聞いてるよな……」
しかし、随分と彼女との距離が縮まった気がする。こんな軽口を言ってくるなんて今迄無かったからな。
吊り橋効果では無いにしろ、一緒に依頼をこなした事が大きいんだろう。
しかしホルスよ、お前は俺の従魔だよな?昨日預けてからずっとローラと一緒だけど……
「キュイキュイ?」
「またお腹すいたのかな?はーい、たくさん食べてね」
「キュイ♪」
そう言ってローラは魔法袋から解体したレッドグリズリーの肉の切れ端を数枚与える。その双球の谷間が巣となり、普通の雛鳥のように、これでもかと口を開けて肉をねだる仕草。
ローラが上からそっと、その口元に肉を下げるとパクパク食べて満足すると、毛玉となってまた眠りについた。
あのさぁ、俺もそんな生活がしたいんだけど変わってくれませんか?ホルス先生……
(ゲプッ)
応援ありがとうございます!
119
お気に入りに追加
200
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる