Ring a bell〜冷然専務の裏の顔は独占欲強めな極甘系〜

白山小梅

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2 忘れるわけがない

1-2

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 すると由利の集団が不審そうに振り返る。

「何かご用ですか?」

 由利の側にいた三十代半ばくらいの男性がすかさず杏奈に声をかけ、由利自身は振り返ることなく、側近の男性がやり過ごすのを待っているように見えた。

 彼は会社の役員なんだから、この対応は当然のことだろう。だからこそ、今を逃したら彼と話をすることは二度と出来ないに違いない。

「突然お声をかけてしまい、申し訳ありません。YRグループの専務の由利高臣様でしょうか?」

 杏奈が名前を尋ねると、ようやく由利が静かに首だけを動かして振り返った。冷淡な目つきに、杏奈は背筋が凍りつきそうになる。

 とはいえ、ここまで来たからには怯むわけにはいかない。

「わ、私は……碓氷と申します。製菓工場の跡地に建設予定の土地について、どうしても由利専務にお伺いしたいことがあるのです」
「……碓氷……?」

 顎に指を添えてしばし考えを巡らせる由利の姿に、まさか自分のことがばれたのではと不安になる。しかし彼が覚えているはずがないという、安易な自信があり、杏奈は気にせず話を続けた。

「少しだけで構いませんので、お時間をいただけませんでしょうか?」
「専務は今はこちらの視察中ですので、何かご意見があれば会社の方にアポイントを取ってからにしてください」

 側近がそう言うと、一行は再び歩き出そうとする。このままでは行ってしまう--そう思って俯いた時だった。

「待て」

 由利の声が聞こえたかと思うと、下を向いていた杏奈の視界に男性の靴を捉える。

 慌てて顔を上げると目の前に由利の姿があり、杏奈のことを静かに見下ろしていた。彼はそのまま両親のキッチンカーに視線を移し、全体を眺めてから再び杏奈の方に向き直る。

 二人の目と目が合うと、由利はじっと彼女を見つめた。一瞬彼の目が大きく見開いたが、それ以降は表情をぴくりとも動かさない。

 それでも彼が自分を見ているという初めての出来事に、杏奈は緊張のあまり呼吸をするのを忘れてしまった。

「今夜は取引先のレセプションパーティーがあるので、その後でしたら時間をとれますが、いかがですか?」
「是非お願いいたします!」
「わかりました。では後ほどお会いしましょう」

 由利は側近に何かを伝えると、杏奈に背を向けて会場の方へと歩き去ってしまった。
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