Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜

白山小梅

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6 同室〜二日目〜

2-2

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「六花?」

 宗吾に声をかけられてハッと我に返る。私ったら何を甘いことを考えているのかしら。宗吾が二人きりなんて言うから変な想像をしてしまった。

「す、すごい部屋だから気後れしちゃった。こんな部屋泊まったことないし」

 クスクス笑う宗吾に手を引かれて部屋に入ると、小さな庭園に面する居間、その隣には柔らかな間接照明に照らされた薄暗いベッドルームがあった。

 ツインルームとはいえ、その雰囲気にどこか緊張してしまう。六花は宗吾の手を離すと、おもむろに窓を開けてウッドデッキに出た。

 するとその右手側に、周りを竹の壁に囲われた露天風呂が見える。石造りの湯船は一人で入るには十分すぎるほどの広さがあり、ゆっくり足を伸ばすことも出来そうだった。

 手前には部屋とを繋ぐ扉が見え、その奥に脱衣所と洗面所、そしてシャワーブースが見えた。

「うわぁ……部屋風呂なんて素敵。好きな時には入れるじゃない」
「気に入った?」
「……すごく贅沢。でも気に入った」
「それなら良かった。夕食までまだ時間があるし、先に入っちゃえば?」
「えっ、いいの?」
「もちろん。昨日はシャワーしか浴びてないし、今日はゆっくり入ってきなよ」

 六花は顔を輝かせた後に、突然眉間に皺を寄せて宗吾の顔を見る。

「絶対に覗かないでよ」
「なんで? ダメなの?」
「当たり前でしょ。さっきはいきなりキスしてくるし……私から求めなければしない約束なんだから、それはちゃんと守ってよね」
「はいはい、わかったよ」

 宗吾が両手を上げたので、六花も渋々納得する。玄関にトート型の旅行バッグを取りに行き、部屋の中へ持っていくと、中から今日買ったばかりの下着の袋を開けて確認した。

 中には白、黒、赤、青、ピンクのガーリーなものからセクシーなものまで、幅広い種類の下着が入っている。全部宗吾の趣味だろうか……そう思うと、つい苦笑いをしてしまう。

 とりあえず普段よく使っている黒の下着と、ベッドに置かれていた浴衣を持って脱衣所に向かう。チラッと宗吾を見ると、縁側に置かれている背もたれのついた椅子に座ってスマホを見ていた。

 六花は宗吾がこちらを見ていない隙にシャワーを浴び、露天風呂へと繋がる扉を開けて外へ出る。それから湯気が立ち上る石造りの湯船に近寄ると、そっと足を入れた。

 あぁ、なんて気持ちがいいんだろう……湯の中で手足を伸ばし、湯船に頭をもたれかかるとそっと目を閉じた。

 一人でのんびり入るお風呂なんていつぶりだろう。お風呂から出た後、まーちゃんの服を着せるという重労働もない。何も考えずにボーッと浸かると、お風呂はこんなにも癒しの空間になるんだ。

 空を見上げれば、少しずつ輝き出した星が瞬く。久しぶりにゆったりとした時間の流れを感じ、六花はほうっと小さく息を吐いた。

 その時だった。突然脱衣所の扉が開き、裸になった宗吾が入ってきたのだ。六花の体は硬直し、口をパクパクさせる。

「な、なんで……! 覗かないって約束したじゃない!」

 体の前で両腕をクロスさせ、体育座りのように足を縮める。どうしていいかわからず宗吾に向かって怒るが、彼はニヤッと笑いながら勢いよくお湯の中に体を沈めた。

「だから覗いてないだろ?」
「入る方がタチが悪いわ。信じられない」

 そう言いながら、目のやり場に困ってしまう。先ほどキスをした時に一度スイッチを入れられてしまったからか、宗吾の裸を見るだけで体が疼く。

「早く出ていってよ。約束したじゃない、私がその気にならなければしないって」

 六花は宗吾を睨みつける。しかし宗吾は全く意にも介さず、不敵な笑みを浮かべて六花を見つめていた。

「言った。だから六花がその気になるよう誘惑しようと思ってさ」
「はぁっ? 何よそれ。意味がわからない……」

 今立ち上がれば裸体を晒すことになる。でも誘惑すると言っている宗吾とこのまま一緒に同じ湯の中にいれば、一体何をされるかわからない。

 浴槽に背中をピタリとくっつけて困惑している六花に、宗吾はゆっくりと距離を詰めていく。

 ダメよ、もう限界ーー立ちあがろうとした六花だったが、宗吾に手を掴まれ湯の中に引き戻されてしまう。

 そして宗吾は真っ直ぐに六花の瞳を見つめると、彼女の顎に指をかけて自分の方に向かせ、そっとキスをした。
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