二度捨てられた白魔女王女は、もうのんびりワンコと暮らすことにしました ~え? ワンコが王子とか聞いてません~

吉高 花

文字の大きさ
14 / 64

お気に入りの場所1

しおりを挟む

 クロはマルガレーテに撫でられるのが好きなようで、しょっちゅうマルガレーテに撫でろと言うように自分の頭をグイグイとマルガレーテの手に押しつけてくる。
 だからそのたびに、マルガレーテは撫でてやる。
 とにかくクロが可愛くて、ますます溺愛するマルガレーテ。
 純粋に自分を信頼して見つめてくるその目が嬉しかった。そして誰よりも一途に自分を愛してくれるその態度が嬉しかったのだ。

 今日もマルガレーテとクロは、一緒に離宮の庭を散歩していた。
 よく晴れた気持ちの良い日だったので、マルガレーテたちはちょっと遠くまで行くことにした。
 それは、離宮の庭の端。王宮を囲む高い塀を隠すように茂る森の中。

 すっかり雑草に覆われてはいたけれど、石で舗装された道のようなものを見つけたのでその道をたどってみることにしたのだ。

 クロが先導して、マルガレーテが着いていく。
 それはまるでクロがマルガレーテに危ないことには遭わせないぞと頑張っているような感じがして、マルガレーテは微笑ましく思いつつ嬉しかった。

「ワンワン!」

 クロが何かを見つけたらしい。クロの指し示す方向を見ると、森の中にどうやら古い建物があるようだ。

 近づいて見てみると、それは立派な石造りの東屋だった。
 半分森に埋もれていたその場所にマルガレーテが立ってみると、暗い森の中なのになんだか気持ちの良い風を感じてそこだけ爽やかである。

「ワオン」

 クロも、マルガレーテの足下に座って目を瞑りながら気持ちよさそうにしている。

「こんな所があったのね」

 その場所がすっかり気に入ったマルガレーテはその場にしばらくいた後に、離宮に帰って早速王妃様にも報告したのだった。

「ほう。そんなものがあったか。知らなかったな」

 王妃様が意外そうな顔をして言った。

「森の中で暗いのですが、とても気持ちの良いところでした」

 マルガレーテがそう言うと。

「へえ。マルガレーテが気に入ったのか。じゃあそこ、ちゃんと整備しようか。公爵家に連絡を」

 そう言って、すぐさまその場でハンナに指示した王妃様だった。

 早い。決断が早い。
 整備って、人を雇って木を切って、あれこれ大がかりなことになるのよね?
 でも今まで誰も行かなかったから放っておかれていたのよね?
 
 なのに? 私がまた行くだろうからという理由だけで!?

 などとマルガレーテが慌てているうちに、やっぱりあっというまに森に埋もれていた廃墟のような東屋は、綺麗な花に囲まれた素敵なレンガが敷き詰められた小道の先にある綺麗な東屋に生まれ変わったのだった。

 さすが王妃様……。
 そのありあまる財力と行動力にただ驚くマルガレーテ。

「なんだかすみません、私が好きだと言ったせいで……」
「ん? マルガレーテが好きなら、理由は十分ではないか? どうせならあの東屋ももっと立派なものに建て替えようかと思ったんだが、もしかしたら歴史的な意味があったら困るからそこは保留な。調査してからまた考えようね」
「いえいえ、保留じゃなくていいです……もう十分です……」

 だって、もう東屋はマルガレーテの想像を超える美しい姿になっていたのだから。
 苔は落とされ傷は補修され、すっかりぴかぴかな東屋よ?
 一体これ以上どこを改善する余地があるというの?

 贅沢を知っている人はすごいのだな、とマルガレーテはただただ感心するしかなかった。

 新しく整備された東屋の周りは広々とした広場になっていて、クロの遊び場にもちょうどいい広さになっている。
 クロも気に入ったようで、毎日もうそれは大喜びで走り回っていた。

 あまりにクロが喜ぶものだから、マルガレーテもそのすっかり居心地が良くなった東屋でのんびり過ごすことが多くなった。
 最近はクロと一緒に散歩に出ると、侍女のリズがすかさず東屋用のクッションやら毛布やら膝掛けやらを持って着いてくるくらいには毎日通うようになった。

 小さな広場の素敵な東屋で、美味しいお茶とお菓子をつまみつつのんびりする日々。

 こんなに豊かな上に幸せでいいのかしら。

 生き生きと広場を探検するクロを眺めながら、そんなことをつい考えてしまうマルガレーテだった。

 ここにはマルガレーテが魔女だから、魔力があるからといって非難する人は誰もいない。
 もう外国から来たお客様という感じでもなくなって、すっかりこの離宮の住人として使用人たちにも仲良くしてもらっていた。

 ラングリー公爵も、離宮を訪れるたびにマルガレーテにもお土産のお菓子やちょっとしたアクセサリーをくれたりして甘やかされ放題だし、優しい王妃様はまるで本当の母のようにいつもマルガレーテを気にかけ大切にしてくれて、ずっと家族のいなかったマルガレーテはここで本当に幸せだったのだ。

 なんだか、今までずっと欲しかったものを全て手に入れた気がする。
 しみじみそう思って幸せを噛みしめるマルガレーテ。

 だから。

 この命がもうそう長くはないとしても、それほど後悔はない――

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

処理中です...